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東京幻怪録  作者: めくりの
四章 東京・大阪交流会

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第五十八話 「交差する刃と神-後編」

 「あんなこと言った手前だがありがたい!」

堂島が嬉しそうに叫ぶが、その顔には少しの驚きも混じっていた。東京本部のメンバーたちは、交流会の時には見せなかった鋭い表情を浮かべ、霧の中で構えを取る。


「全員、準備はいいな?」

凛が静かに仲間たちを見渡す。その声に答えるように、それぞれが武器を手にし、神に向けて前進を開始する。


「大丈夫。データは揃ってる!」

葵がタブレットを操作し、敵の妖気のパターンを解析しながら叫ぶ。「あの硬い外殻、振動周波数を操作すれば一部を破壊できるはず!」


「よし、まずは隙を作る」

凛が影喰いを構え直し、静かに前方へ進み出る。


「でかい割に動きが俊敏だな。力比べなら、俺の出番だ!」

隼人が笑いながら戦斧を振り上げ、神の足元に突進する。巨大な斧が振り下ろされると、その衝撃で地面が裂け、神の足を一瞬揺らした。


「おら、動けなくしてやるぜ!」

隼人は何度も斧を叩きつけ、その重みで神の動きを制限していく。


その隙を突いて、亮が指輪を輝かせ風を操る。「隼人さん、後ろだ!」

亮の突風が神の攻撃を弾き、隼人を援護する形で敵のバランスを崩した。


「いいぞ亮、そのままやれ!」

隼人が笑いながら声を上げると、亮も笑いながら「任せてください!」と答えた。


「真琴、バリアを張って後衛を守れ。葵は引き続き分析だ」

凛の冷静な指示が飛ぶ中、真琴が護符を空中に掲げ、光り輝く結界を広げる。


「この範囲なら、後衛の安全は保証できる」

真琴が短くそう告げると、葵がその中でさらに細かく妖気の動きをスキャンしていく。「もう少し……もう少しで、外殻の弱点が見える!」


前衛では夏菜が神の背後に回り込み、双剣を一閃させる。その刃には麻痺毒が仕込まれており、敵の動きを徐々に鈍らせていく。


「毒が効き始めた。動きが遅くなる」

夏菜が冷静に状況を報告すると、凛がその一瞬の隙を突いた。


「影喰い、行くぞ!」

凛の刀が黒い影を纏い、神の腕に向かって鋭い一撃を繰り出す。その一撃は、神の黒い鎧に深い傷を残し、周囲に暗い光の残滓を撒き散らした。


______________________________________________


「おいおい、あいつら……何なんや?」

浪速翔太が双剣を持ちながら立ち尽くしていた。その目は東京本部の戦闘スタイルに釘付けだった。


「さっきまでの連中と、まるで別人みたいや……」

沙羅が呆然と呟く。


「それだけやない。あいつら、これが通常運転なんか?」

堂島が眉をひそめながら雷鳴号を構え直す。「さすがに格が違いすぎるやろ……!」


______________________________________________


神の三つの目が輝きを増し、一気に強烈な光線を放つ。しかし、その攻撃は真琴の結界に弾かれた。


「……結界、まだ持つぞ」

真琴が冷静に状況を確認し、後衛を守る。


「そのまま支えてくれ!」

凛が再び影喰いを振るい、神の足元に斬撃を加える。そこに隼人が戦斧を叩き込む形で追撃し、徐々に神の巨体がぐらつき始めた。


「いける……いけるぞ!」

亮が風の刃を放ち、神の攻撃をさらに分散させた。


「全員、もう少しだ!」

凛が仲間たちに声をかける中、神の動きがわずかに鈍る。だが、完全には倒れない。


「こいつの防御力、本当に化け物だ……!」

葵がデータを見ながら唇を噛む。


神はぐらついた体勢を立て直し、その長い腕を振り上げた。一振りするだけで猛烈な衝撃波が周囲を襲い、地面がさらに大きく裂ける。沙羅のバリアがその衝撃波を防ぎきるが、結界には無数のひびが入る。


「結界がもう限界よ!」

沙羅が苦悶の声を上げる中、真琴が駆け寄り、即座に新たな結界を重ねた。「時間を稼ぐ。後衛はその間に態勢を整えてくれ」


神の攻撃を耐えるだけでも厳しい状況の中、東京本部のメンバーたちはなおも前線で戦い続けていた。


「これだけ攻撃してもまだ立ってるとはな……!」

隼人が汗を拭いながら戦斧を握り直し、息を荒げる。彼の目には焦りは見えないが、その表情には限界が近いことが伺えた。


「やはり、この外殻が原因だ。何とかしてここを崩さなければ……!」

葵がデータを確認しながら叫ぶ。


「外殻を崩す、ね」

夏菜が静かに呟き、双剣を握り直した。彼女の目には冷静な光が宿っているが、その奥には強い決意が見え隠れする。


「夏菜さん、どうする気?」

葵が問いかけると、夏菜は冷静に答えた。「私がやる。みんなで作った隙を無駄にはしない」


「待て、夏菜。お前一人で無茶をするな」

凛が即座に制止するが、夏菜は短く首を振る。


「無茶なんてしないわ。ただ、私の力を引き出す時が来ただけ」


その言葉に凛は何かを感じ取ったのか、一瞬だけ目を細める。しかし、次の瞬間には短く頷き、「お前に任せる」と言葉を返した。


夏菜は双剣を胸の前で交差させ、深く息を吸い込んだ。彼女の周囲に淡い光が立ち上り、双剣の刃が不気味に輝き始める。


「これは……!」

浪速翔太が驚きの声を上げる。


「東京本部のべっぴんさん、まだ力隠してやがったのか」

堂島が雷鳴号を握りながら呟く。


その時、夏菜の全身が輝き、彼女の双剣が完全に妖気を纏った。まるで刃そのものが命を持ったかのように揺らめき、彼女の体から放たれる気迫は周囲の空気を変えるほどだった。


「刃心解放――」

夏菜の声が静かに響く。


「これで終わりにする」

夏菜が低く呟き、神に向かって突進した。その動きはこれまで以上に鋭く、一瞬で神の間合いに入り込む。


神は長い腕を振り下ろすが、夏菜はそれを避けるどころか、逆にその腕に向かって双剣を突き刺した。その一撃で、神の黒い鎧にひびが入り、内部から黒い霧が漏れ出す。


「効いてる……!」

葵が叫ぶ。


夏菜はさらに動きを止めることなく、双剣を高速で振るい、神の胸部に斬撃を叩き込む。そのたびに外殻が崩れ、堅牢だった守りが徐々にほころびを見せ始める。


神が苦しげに唸り声を上げ、その場に膝をつきかけた。


「夏菜が作ったこの隙、逃すな!」

凛が叫び、全員が一斉に動き出す。


隼人が戦斧を振り下ろし、邪神の足をさらに叩きつける。亮が風の刃で敵の動きを封じ、斎藤がライフルを構え、神の目に向かって妖気弾を撃ち込む。


「次は俺が決める」

凛が影喰いを構え、神の中心部へ向けて前進を始めた。


夏菜の刃心解放によって、神の外殻はついにほころびを見せ始めた。しかし、その隙を埋めるように神の力が暴走し、全身から黒い霧と衝撃波が迸る。


「全員、下がれ!」

凛の冷静な指示に全員が一時撤退し、距離を取る。沙羅がバリアを展開し、霧を食い止めるが、力の消耗が激しいのか、膝が震えていた。


「まだ持ちます……!凛さん、次の一手を!」

沙羅の必死の声が響く。


凛は静かに影喰いを構え直した。その目には迷いも焦りもなく、ただ目の前の敵を仕留めるという確固たる決意が宿っている。


「凛さんがやるなら、私たちも手を貸します!」

葵がタブレットを操作しながら、神の動きを解析する。「目が弱点!あそこに集中すれば、動きを完全に止められる!」


「了解だ。狙いを定める。」

斎藤が冷静にライフルを構え、神の目をロックオンする。「撃てるタイミングで知らせろ」


「俺たちで神の動きをさらに制限する!」

隼人が戦斧を担ぎ直し、亮が風の刃を練り上げる。「この隙間を凛さんに繋ぐんだ!」


「夏菜、今の状態でさらに動けるか?」

凛が短く問うと、夏菜は肩で息をしながらも小さく頷く。「少しだけなら、まだ動ける」


「全員、援護しろ。次で決める」

凛がそう告げると同時に、全員が神の動きを封じるべく、それぞれの技を繰り出した。


隼人が全力で戦斧を振り上げ、神の足元を叩きつける。亮の風が神の腕を縛るように巻きつき、動きを制限する。斎藤が神の目を撃ち抜き、一瞬の怯みを誘った。


その隙に夏菜が最後の力を振り絞り、再び神の胸部に突撃。刃心解放の力で、外殻にさらに大きな亀裂を刻み込む。


「凛さん、今です!」

葵の叫びに応え、凛が疾風のように前進する。


邪神が最後の力を振り絞って凛を迎え撃とうとするが、凛の動きは速すぎた。影喰いが暗い光を纏い、妖気を極限まで収束させていく。その姿はまるで一筋の影そのものだった。


「これで終わりだ――!」


凛が全力で影喰いを振り下ろす。その一撃は神の外殻を貫き、内部の核を切り裂いた。神の体が大きく揺らぎ、三つの目が赤黒い光を失う。


「やった……!」

葵がタブレットを握りしめながら呟く。


神は崩れ落ちるかと思われたが、最後の力を振り絞り、黒い霧に包まれながら空へと浮かび上がる。その姿は徐々に薄れ、完全に霧の中へと消え去った。


「……逃げたか」

凛が刀を鞘に収め、静かに息を吐いた。


「まじか……あれをやっつけたんか」

浪速翔太が双剣を握りながら呆然と呟く。


「東京本部……本当にとんでもない連中やな」

堂島が雷鳴号を肩に担ぎ、苦笑混じりにそう言った。その目には感嘆の色が浮かんでいる。


「ただの交流会やと思ってたけど……次元が違いすぎるわ」

沙羅が倒れかけながらも、東京本部のメンバーに視線を向けた。


凛は振り返り、大阪本部のメンバーたちに一礼した。「こちらも全力を尽くした。助力に感謝する」


「いや、感謝すんのはこっちの方や」

堂島が手を差し出し、凛と力強く握手を交わした。






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