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東京幻怪録  作者: めくりの
四章 東京・大阪交流会

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第五十五話 第二試合:深見夏菜 vs. 天王寺沙羅

 模擬戦第一試合が終わり、会場には興奮と熱気が残っていた。二人目の出場者として、東京本部からは深見夏菜、大阪本部からは天王寺沙羅が選ばれた。


「深見さん、よろしくお願いします」

沙羅が一礼すると、夏菜も静かに頭を下げる。


「こちらこそ。バリア専門だと聞いています。厄介そうですね」

冷静なトーンで応じる夏菜に、沙羅は小さく笑った。


「そういう短剣使いこそ、私からすると怖い相手ですけどね。でも、いい勝負しましょう」


「ええ、全力で。」

短いやり取りながらも、二人の視線は戦闘への集中を物語っていた。


一方、観客席では葵と亮がそれを見ながらひそひそと話している。


「ねえ、夏菜さんって、ああ見えて結構本気になると怖いよね」

「だよな。あの冷静さが余計に効くんだよ。沙羅さん、大丈夫かな」


「そもそも、沙羅さんも負けてないでしょ?だって、あの『影の結界事件』の人でしょ?」


「まあ、どっちが勝つかはわかんないけど……こりゃ見ものだな」


試合開始の合図が響くと、夏菜が一瞬で距離を詰める。足音さえ聞こえないほど静かな動きで沙羅に迫る彼女の双短剣は、まるで影が形を持ったかのように鋭い。


沙羅は瞬時に「月映の楯」を掲げ、透明なバリアを展開した。短剣がバリアに触れると、金属が弾かれる音が響く。


「さすがに簡単には破れないか」

夏菜が冷静に後退し、次の攻撃のタイミングを伺う。一方、沙羅は自信を持って笑みを浮かべた。


「このバリアを破るのは難しいわよ。どう対処する?」


夏菜は短剣を回転させながら、バリアの周囲を素早く移動する。その動きは迷いがなく、沙羅の隙を探していることが明白だった。


「そこ!」


夏菜がバリアの死角を突き、双短剣を交差させて一撃を放つ。しかし、沙羅はすぐに楯を動かし、バリアを補強してそれを防いだ。


「いい動きね。でも、これじゃ足りないわ」

沙羅がバリアにさらに妖気を注ぎ込み、透明だったそれが微かに輝き始めた。


「なるほど、防御専門の実力者ってわけね」

夏菜は冷静な表情のまま、短剣に麻痺毒を纏わせる。その刃がバリアの表面に触れると、毒がじわじわと広がり、バリアが一瞬だけ揺らめく。


「へえ、そういう手も使うのね」

沙羅はバリアの動揺を抑えつつ、瞬時に動きを封じるための結界を広げた。


「動きを止めるつもり?」


夏菜は跳躍して沙羅の背後に回り込むが、そこにもバリアが展開されている。


「どこに回り込んでも防げるようにしてるわ」


「けど、守ってばかりじゃ勝てないわ」

夏菜は低く構え、短剣を逆手に持つと再び高速で接近した。


「そろそろ終わらせるわよ」


短剣がバリアの隙間を探り、毒がさらに浸透し始める。その瞬間、沙羅はバリアを一気に解放し、反射能力を活かして夏菜の攻撃を跳ね返した。


_______________________________________________


二人の攻防は数分間に及び、観客たちは息を飲んで見守っていた。夏菜の短剣がバリアの隙間を捉えた瞬間、沙羅は最後の妖気を込めて結界を強化。短剣はバリアを突き破ったが、沙羅の冷静な反射で毒が拡散する前に防がれた。


「ここまでか……」

夏菜は短剣を下ろし、僅かに息を整える。一方、沙羅も額に汗を浮かべながら「ふう……すごい動きだったわ」と笑みを見せる。


「あなたもね。防御に関しては文句なしよ」

夏菜が静かに感想を述べると、沙羅は「ありがとう。あなたみたいな相手と戦えたのは勉強になったわ」と礼を言った。


______________________________________________


観戦していた隼人が「おいおい、すごいレベルだな」と感心する一方、葵は「どっちが勝ったとかじゃなくて、もう演舞だよね!」と大げさに言う。


「確かに。攻撃と防御の美しさが噛み合った試合だった」

麗奈も静かに微笑みながら同意する。


「でも、次の試合もすごいことになりそうだな」

亮がわくわくした様子で次のカードを見つめていた。

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