第五十三話 「東京・大阪交流会開催」
朝日に照らされた窓には霜が付き、外から聞こえる風の音が一層その寒さを際立たせる。特務機関のメンバーたちは、いつも通り訓練や情報整理に勤しんでいたが、空気はどこか引き締まっていた。そんな中、事務室にいた葵が突然声を上げた。
「えっ、大阪本部との交流会!?」
葵の声は広い室内に響き渡り、他のメンバーが次々と集まってきた。彼女が手にしていたのは、机上に置かれていた通信文だった。それには「大阪本部との合同交流会を冬季中に実施したい」と明記されている。
「本当なのか、それ」
大柄な隼人が身を乗り出し、通信文を覗き込む。
「うん、間違いない。大阪本部からの正式な提案みたい!」葵は興奮気味に答える。
「大阪本部か……珍しいな」
リーダーの凛が静かに口を開く。彼は通信文を手に取り、目を通しながら考え込む様子を見せた。
「たしかに、他の本部と直接交流する機会なんてほとんどないな」
冷静に補足するのは真琴だ。彼は眼鏡を押し上げながら、慎重に書かれた文面を読み解いていた。
特務機関東京本部は、長い間、独立した運営を続けてきた。
それぞれの本部が独自の対応をしているため、他拠点との連携は必要最低限に留められている。それでも、全国で発生する妖怪事件の増加に伴い、連携の強化が求められるようになっていた。
「交流会って、具体的には何するんだろう?戦闘訓練とか?」
亮が手を挙げて意見を述べると、葵も「食い倒れツアーとかあったら最高なんだけどな~!」と明るく続けた。
「……観光じゃないぞ、葵」
真琴が呆れたように答えるが、その場の雰囲気は少しだけ和らいだ。
「真面目な話、他の本部と顔を合わせるのはいいことだろう。大阪本部は独特の戦術を持ってるって聞くし、学べることも多そうだ」
隼人が腕を組みながら、提案に前向きな意見を述べる。
「たこ焼き、食べられるかな」
葵がぼそっと呟くと、亮も「俺もそれ思った!」と笑う。
「まあ、行ってみればわかる」
凛がその場を締めるように言い、全員が交流会に向けた準備を進めることとなった。
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冬の寒さを感じながら新幹線に揺られる東京本部のメンバーたち。
窓の外には白く染まる山々が広がり、冬の澄んだ空気を象徴するように遠くの景色がはっきりと見える。葵と亮は車窓に顔を寄せて外の景色を楽しみ、隼人は一人で雑誌を読んでいた。
「東京の冬も寒いけど、大阪も負けず劣らず寒そうだな」
隼人が雑誌を閉じて呟くと、麗奈が微笑みながら答えた。
「でも、きっと温かい人たちが迎えてくれるわよ。大阪の人は情が深いって言うもの」
「確かに。楽しみだな。」隼人の顔にも自然と笑みが浮かんだ。
「ねえ、亮、着いたらどこに行く?」
「もちろん、道頓堀!絶対たこ焼きだよ!」
葵と亮の明るい声に、凛は小さくため息をつきながらも、どこか微笑ましそうだった。
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夕方、大阪本部に到着した東京本部のメンバーたち。
彼らを待っていたのは、大きな門構えの建物と、それを取り囲むように広がる庭園だった。冬の冷たい風が吹く中でも、どこか温かみを感じさせる雰囲気があった。
「おおきに!よう来てくれはりましたな!」
明るい声で迎えたのは、堂島蓮司だった。彼の豪快な笑顔と関西弁のアクセントに、場の空気が一気に和らぐ。
「これが大阪本部か……東京とはずいぶん雰囲気が違うな」
凛が静かに感想を述べると、蓮司は大きく頷いた。
「そらそうですわ!大阪本部は地域密着型ですさかい、ちょっとした親しみやすさも大事なんですわ」
「なるほど」
凛の短い返事に、葵が小声で「ねえ、凛さんもたまには関西弁で話してみたら?」と冗談を飛ばし、亮が吹き出す。
「ここがうちの訓練場ですわ。今日はここでお互いの腕を確かめ合いましょか」
堂島が誇らしげに場を指し示す。
「広いですね……東京本部の訓練場とは違った趣があります」
麗奈が感心したように辺りを見回す。
「そうでしょう。ほな立ち話もほどほどに」
堂島の提案に全員が頷く。
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訓練場の準備が整い、両本部のメンバーたちが一堂に会した。冬の冷たい風が吹き抜ける広場に、東京と大阪、それぞれのチームの個性がはっきりと分かれる雰囲気が漂っている。
「せっかくの交流会やし、まずは自己紹介から始めまひょか!」
堂島蓮司が豪快な声で宣言し、大きく手を叩いた。
「おっ、いいですね!関西の皆さんのこと、もっと知りたいです!」
葵が興奮気味に声を上げ、亮も「確かに、ここにいる人たち全員すごそうだし!」と頷く。
「そしたら、うちのメンバーからいきましょか!」
堂島が前に進み出て、自信満々の表情で挨拶を始めた。
1. 堂島 蓮司
年齢: 42歳
役割: 隊長 / 重火器専門
武器: ショットガン「雷鳴号」
「まずはわてが大阪本部の隊長、堂島蓮司や! 見ての通りのゴツイおっさんやけど、妖怪相手には負けたことあらへん! 皆さん、どうぞよろしゅう!」
彼は大きな笑みを浮かべながら、ショットガン「雷鳴号」を肩に担ぎ、豪快に片手を振り上げた。
「すごい迫力ですね……!」
麗奈が微笑みながら感想を漏らすと、隼人が「でけえ武器だな……俺と相性良さそうだ」と興味深げに呟いた。
2. 天王寺 沙羅
年齢: 29歳
役割: 妖気防御 / バリア専門
武器: 鏡型妖具「月映の楯」
「天王寺沙羅です。防御専門なので、仲間を守るのが主な役目です。今日は皆さんとお手合わせできるのを楽しみにしています。」
彼女は軽く一礼しながら、鏡型の妖具を見せる。その丁寧で落ち着いた振る舞いは、東京本部のメンバーたちにも好印象を与えた。
「冷静で頼りになりそうな人だな」
凛が短く感想を漏らすと、真琴も「バリア技術を学べる機会があれば嬉しいですね」と興味を示した。
3. 浪速 翔太
年齢: 24歳
役割: 情報収集 / 妖気分析
武器: 双剣「雷刃」と「風刃」
「浪速翔太や!情報収集と分析は任せとき! けど、今日はこの双剣で、ええとこ見せたるわ!」
翔太は双剣をくるくると回し、明るい笑顔を見せながら挨拶する。彼のフレンドリーな態度に、葵が「私と同じムードメーカー枠ですね!」と嬉しそうに言った。
「亮とも合いそうだな。」
隼人がにやりと笑うと、亮は「おれあんなチャラくないですよ」と返した。
4. 此花 鈴
年齢: 33歳
役割: 戦闘医療 / サポート
武器: 妖気を浄化する注射器型武器「癒光」
「此花鈴と申します。戦場では治療と浄化を担当しています。皆さんの力になれるよう頑張りますので、よろしくお願いしますね」
柔らかな笑顔で挨拶する彼女に、葵が「わぁ、優しそうな人ですね!麗奈さんと同じ癒し系かな?」と目を輝かせた。
「私たち、きっと話が合いそうですね。」
麗奈も穏やかな笑みを浮かべながら応じた。
5. 道頓堀 照
年齢: 38歳
役割: 妖怪との交渉 / 対話担当
武器: 折り紙式神「千影」
「道頓堀照でっせ。交渉担当やけど、たまには力も見せますわ。どんな状況でも落ち着いてやりますんで、よろしゅう頼みます」
彼は扇を軽く広げて一礼した。その風格のある振る舞いに、凛が「交渉役か……興味深いな」と感心していた。
「うちのメンバーはこんな感じですわ! ほな、東京の皆さんも一言どないですか?」
堂島が促すと、凛をはじめとした東京本部のメンバーが簡単な自己紹介を行った。
「お互い、腕を磨き合う良い機会にしたいですね」
凛が締めくくると、堂島は大きく頷いて笑顔を浮かべた。「ええ!ほな、早速試合を始めましょか!」




