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東京幻怪録  作者: めくりの
一章
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第五話「影を視る者、斧を振るう者」

 相馬葵そうま あおいは、特務機関の中で唯一、妖気探知と分析を担当するエージェントである。

彼女の軽やかな笑顔や明るい茶髪のショートヘアは、仲間たちに安心感を与え、どこかボーイッシュで人懐っこい印象を与えている。明るく活発な性格と無邪気な言動で、彼女は常にチームのムードメーカーとしての役割を果たしていた。しかし、その軽やかな振る舞いとは裏腹に、妖気探知と分析の責任を一手に担う葵には、誰にも見せない深い想いが隠されている。


葵は幼い頃から、普通の人間には見えないものを「感じ取る」能力があった。それは正確に視えるというわけではなかったが、妖気や霊的な波動がある場所に近づくと、独特の圧迫感や寒気を感じ取り、それが彼女を独特の方向へ導いた。そのせいか、子供時代は周囲の人たちとどこか距離を感じ、何かしら疎外感を抱えていたが、彼女はその孤独を軽い性格で上手く隠し、周りと溶け込む術を早くから身につけていた。


特務機関に入った葵は、自身の能力を活かすために特別なタブレット装置の使い方を習得した。

この装置は妖気の流れを解析し、霊的な存在の位置やその強さを視覚化するためのものであり、葵はこのタブレットを用いて仲間たちをサポートする役割を担っている。彼女が即座にデータを読み解き、的確に情報を伝えることで、幾度となく仲間たちを危機から救ってきた。戦闘中にも明るく冗談を交え、特に緊張が高まる局面では彼女の言葉が皆の心を和らげる存在となっている。


その一方で、彼女がその明るい性格を通じて仲間たちを支える一方で、自身の能力に対する負担も大きかった。分析と探知という目に見えない責任は、仲間の命を左右する重大なものだということを彼女は常に意識している。特にリーダーの凛には強い信頼を寄せ、時に甘えるような態度を見せることもあるが、心の奥では彼に認められることを強く望んでいる。


ある日の任務で、葵は深刻な葛藤に直面することになる。

彼女が探知した妖気の反応により、チームが待ち伏せの危機から逃れることができたが、その直後、同じ場所に新たな妖気の波動を感じ取ることができなかった。結果、別の敵の襲撃を受け、仲間が傷を負ってしまったのだ。その時、彼女は一瞬の判断ミスが自分の責任であると感じ、笑顔の裏に焦りと自己嫌悪を抱え込むことになった。


その後、凛が葵に声をかけ、「ミスは誰にでもある。大事なのは、次の瞬間にどう動くかだ」と告げた。その言葉に葵は涙をこらえながらも頷き、彼女の無邪気な笑顔の中に新たな決意が生まれた。


葵は心の中で、「私はもっと強くなる」と誓った。それは、仲間たちを笑顔で支えるだけでなく、自分自身も仲間の力として認められるための決意だった。

_______________________________________________

結城隼人ゆうき はやとは、特務機関の中でも近接戦闘のエキスパートであり、重戦斧を用いた力強い戦闘スタイルで仲間たちを守る頼もしい存在だ。

190cm近い屈強な体躯はひと目で相手に威圧感を与え、肌に刻まれた傷跡は、数々の戦いを乗り越えてきた証である。隼人はどんな戦闘でも真っ先に前線に立ち、妖気を込めた戦斧を振りかざして敵を叩き潰す。その戦闘スタイルは豪快で、周囲を気にせずに突き進む様子から、チームメンバーは彼の後ろ姿に絶対的な信頼を寄せている。


しかし、その堂々たる姿の裏には、幼少期のある出来事が隼人の心に深く影響を与えていた。


隼人は山間の小さな村で育ち、幼い頃から村人たちに頼りにされる存在だった。

力が強く、体格にも恵まれていた彼は、村の「守り手」として自然と尊敬を集めていた。隼人自身もその期待に応えたいと思い、周囲に頼られることに喜びを感じていた。しかし、ある日、村を襲った「悪霊」によって、彼の人生は大きく変わってしまう。


村を襲った悪霊は、隼人の目の前で村人たちを襲い、何もできずに見ているしかなかった彼は、自分の無力さを痛感する。自分には「力」があるはずなのに、その力で守れなかったという事実が、隼人の心に深い後悔と決意を刻み込んだ。この出来事が彼にとって大きな転機となり、隼人は「自分の力で誰かを守るために強くなりたい」という強い意志を抱くようになった。


成長した隼人は、村を出て様々な武道や戦闘技術を学ぶ旅に出た。

力だけでは人は守れないことを学び、彼は精神も鍛え、技術も身につけた。やがて重戦斧にたどり着いた時、その武器の重さと力強さが、隼人の信念にしっくりと馴染むのを感じた。戦斧を手にするたびに、彼は自分の手で村を守れなかった過去を思い出し、それを乗り越えるために努力し続けた。


特務機関に入ってからは、葵や風間といった若いメンバーたちに対して、まるで兄のように接するようになった。彼らには自分と同じ思いをさせたくない、という一心で面倒を見ており、戦闘以外でも相談に乗ったり、冗談を交えたりして、年長者としての役割を果たしている。特に葵に対しては「お前の視線は、俺の戦斧と同じように仲間を守ってくれる」と励ましの言葉をかけることもある。


隼人には少しせっかちな一面があり、戦闘が始まると真っ先に飛び込んでいくことが多いが、それは彼の「誰よりも前に立ち、仲間に危険が及ぶ前に敵を倒す」という強い思いからくるものである。その豪快な戦いぶりはチーム内でもよく話題になるが、仲間たちは彼のその勢いに頼り、隼人がいることが戦闘の心強さに繋がっていることを実感している。


隼人は戦斧を握るたびに、決して消えない過去の傷を思い出しながらも、今は仲間と共に前進する力を得ている。


その目には昔とは違った強い決意と、支え合う仲間への信頼が宿っている。

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