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東京幻怪録  作者: めくりの
二章 冥府機関の系譜

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第三十五話 第一章 第十七節:闇の記録

 冥府機関の資料室。ここには、歴代のエージェントたちが黒羽根の女との戦いを経て遺した膨大な記録が保管されている。その中には、勝利と敗北の記録、彼女の力の詳細、そして今に至るまで明かされていない謎も数多く含まれていた。


________________________________________


「全員、この場で記録を整理して、黒羽根の女に関する手掛かりをまとめる。次の戦いの準備として必要なことを明確にしろ。」

灰島凛は影喰いを側に置きながら、静かにメンバーたちに指示を出した。


「手分けして調べましょう。私、妖気の動きや黒羽根の女の痕跡に関する記録を解析するわ。」

相馬葵が明るい声で応じ、タブレットを操作し始める。


「俺は過去の戦闘データを確認する。あいつとどうやって戦ったか、何が通用して何が駄目だったのかを洗い出す。」

結城隼人は古びた報告書の束を手に取り、読み始めた。


「じゃあ私は奴の力の特徴について見てみるわ。これだけの歴史があるなら、何かしらパターンがあるはずよ。」

深見夏菜が落ち着いた声で記録の山から霊術関連の資料を選び取った。


「私が結界に関する記録をまとめます。防御が崩れた原因と、それをどう強化すべきかを検討します。」

椎名真琴が知的な表情で眼鏡を押し上げる。


「遠距離戦のデータは俺に任せてくれ。ライフルでどう動きを抑えられるか、過去の記録から学べるだろう。」

斎藤義明が冷静に言いながら、自分の専門分野を調べ始めた。


「私は過去の浄化術について探ってみます。あの闇の影響を少しでも軽減できる方法があるかもしれません。」

本庄麗奈は静かに資料を手に取り、丁寧に目を通していく。


「俺は補助戦闘に役立つデータを探すよ。風を使った牽制や動きの封じ方とか、今の自分に足りないものを見つけたいんだ。」

風間亮が明るい声で、積み上がった記録の中から軽い冊子を選び出した。


________________________________________


まず、葵が妖気の解析を基に報告を始める。

「黒羽根の女の力って、直接的な破壊じゃなくて、妖気を介して周囲を支配するのが特徴みたい。ほら、この記録……『周囲の空間を彼女の影響下に置くことで、敵の精神を徐々に崩壊させる』ってあるわ。」


「つまり、長時間戦うほど不利になるってことか。」

凛が言葉を返す。


「そう。短期決戦が必要ね。ただ、完全な無力化はどの時代でも成功していないみたい。」

葵の表情はやや曇る。


隼人が報告を引き継ぐ。

「過去に黒羽根の女とまともに戦ったのは、平安時代、戦国時代、そして昭和中期だ。この報告書によると、どの時代でも影喰いが使われているが、結局は撃退止まりだった。」


「影喰いは奴の力を削るための武器じゃなく、封じるためのものだからかもしれないわね。」

夏菜が資料をめくりながら言葉を添える。


「それでも戦闘中に影喰いを使うと、明らかに戦局が有利に傾いている記録もある。問題は、それと引き換えに影喰いの使用者が消耗しきってしまうことだ。」

隼人が険しい顔で続ける。


夏菜が分析を発表する。

「黒羽根の女が現れるタイミングは、戦乱や災害、人間同士の争いがピークに達した時期が多いわ。つまり、彼女は人間の負の感情を力にしている可能性が高い。」


「ならば、次に狙われる場所も特定できそうだな。」

斎藤が冷静に応じる。


「ええ。ただ、その出現範囲が広すぎるのが問題ね。東京全体が彼女にとっては格好の狩場になっている。」

夏菜は腕を組み、眉間に皺を寄せた。


「結界が破られる原因は、単純に力不足だけではありません。彼女の妖気が結界そのものに干渉して、不安定にさせているのです。」

真琴が穏やかながらも鋭い口調で述べる。


「つまり、より強力な術式が必要ってことか?」

凛が尋ねる。


「それだけではありません。結界を常に安定させるために、外部からの支援も必要です。つまり、浄化術との連携が鍵になるでしょう。」

真琴は麗奈を見つめた。


麗奈が記録を基に発言する。

「過去に浄化術が完全に成功した例はないけれど、一時的に彼女の力を抑えることはできているわ。問題は、その間に決定打を与えられなかったこと。」


「ならば、浄化術を補助として使い、その間に影喰いでとどめを刺すのが最善かもしれない。」

斎藤が提案した。


「仮に奴と遭遇した際の戦術はこうだ。浄化術と結界で奴の力を封じ、短期決戦で一気に勝負をつける。その間に影喰いを使うが、使用には慎重を期す。」

凛が全員の意見をまとめ、宣言した。


「……でも、それでも勝てなかったら?」

葵が不安げに尋ねる。


「その時は……全員で奴を道連れにする。それが俺たちの覚悟だ。」

凛の言葉に全員が静かに頷いた。

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