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東京幻怪録  作者: めくりの
二章 冥府機関の系譜

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第二十二話 第一章 第四節:影喰いと闇の始動

 洞窟を抜け出た若者たちは、手に入れた影喰いの重みを感じながらも、新たな希望を抱いて歩みを進めていた。

「これで、戦える……」

葉月は漆黒の刃を見つめ、小さく呟いた。だが、その表情にはまだ戸惑いが残っていた。影喰いはただの武器ではない。その力を制御できなければ、逆に自身を滅ぼす危険があることを彼女は感じ取っていた。


大輔がその横顔を見て、口を開く。

「おい、大丈夫かよ。そんな顔してたら、この刀に食われちまうぞ」


「分かってる。でも……この刀が本当に役に立つのか、試す時が来る」

葉月は覚悟を決めたように頷き、再び歩き始めた。


______________________________________________


三人が進む先、空からまたも黒い羽根が舞い降りてきた。それは風に乗りながら静かに地面へと降り、まるで彼らを導くかのように道を示していた。


「まただ……」

俊介が短剣を握りしめ、羽根が指し示す方向を睨む。


「これが試されてるってことだろうな」

大輔が斧を肩に担ぎ、葉月に視線を向けた。


「行きましょう。この羽根の向こうにはきっと、次の戦いが待っている」

葉月が影喰いを握り直し、進む先を見据える。彼女の言葉に二人も頷き、足を速めた。


_____________________________________________


黒羽根が示した先には、一匹の巨大な妖怪が待ち構えていた。それは「霧喰らい」と呼ばれる異形で、影の谷で噂される恐怖そのものだった。妖怪の体は霧でできており、その輪郭は不明瞭だが、無数の触手が空中を揺らめき、異様な音を立てていた。


「どうする?この刀で本当に戦えるのか?」

俊介が焦りの表情を見せながら葉月に問いかける。


「やるしかない。この刀の力を使いこなせなければ、私たちに道はないわ」

葉月が影喰いを引き抜くと、その刃が低くうなるような音を立てた。刀の黒い光が霧を貫くように伸び、妖怪を挑発するかのようだった。


霧喰らいが触手を振り上げ、一行に向かって襲いかかる。大輔が斧でそれを受け止め、俊介が素早く横へ回り込む。


「行け、葉月!」

大輔が触手を押さえつけた隙を狙い、葉月は影喰いを振りかざした。刀が妖怪の霧状の体を貫いた瞬間、異様な音が響き渡り、霧喰らいの体が一部消滅した。


「効いてる……この刀なら!」

葉月が喜びの声を上げるが、妖怪の体はすぐに再生を始めた。その動きを見た俊介が叫ぶ。

「一撃で倒せるわけじゃない!何度も叩き込め!」


葉月は再び影喰いを構え、全身に力を込めた。刀が妖怪の核を探るかのように動き、やがてその中心を捉える。


「これで終わりよ!」

葉月が全力で影喰いを振り下ろすと、刃から黒い閃光が放たれた。その光が妖怪の核を貫き、霧喰らいの体が完全に崩れ去った。周囲の霧が晴れ、空気が澄んでいく。


_____________________________________________


戦闘が終わった後、葉月はその場に膝をついた。影喰いを使った後の疲労感は想像以上で、全身が鉛のように重く感じられる。


「おい、大丈夫か?」

大輔が彼女に駆け寄るが、葉月は弱々しく笑った。

「平気よ……でも、この刀を使う度に、何かが削られていくような気がする」


「削られる……?」

俊介が不安げに聞き返す。葉月は影喰いを見つめながら答えた。


「きっと、この刀は力を使うたびに、私の命や精神を代償にしているのよ。それでも、この力が必要なら、私は使う」


彼女の言葉に、俊介と大輔は沈黙した。だが、彼らもまた、この刀が唯一の希望であることを理解していた。


____________________________________________


三人が休息を取っていると、遠くから再び黒い羽根が舞い降りてきた。その羽根は地面に落ちると、何かを指し示すかのように動きを止めた。


「またか……これが終わりじゃないってことだな」

大輔が苦笑しながら立ち上がる。


「でも、この戦いを続けるには、私たちだけじゃ足りない。もっと多くの力が必要だわ」

葉月は影喰いを鞘に収め、次の戦いに向けて歩き出した。


その時、彼らの中に一つの考えが浮かんでいた。それは、自分たちだけではなく、この闇に立ち向かう「組織」を作るということ。葉月、大輔、俊介――この三人が、後に「冥府機関」と呼ばれる存在の最初の一歩を踏み出したのだった。

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