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東京幻怪録  作者: めくりの
一章

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18/71

第十八話「炎に沈む街」(後編)

 怪物はさらに凶暴さを増し、街を崩壊させるかのように暴れ回る。凛は影喰いに妖気を注ぎ込み、冷静な目つきで敵の動きを見定めながら、攻撃の機会を待っていた。そんな彼の横顔を見つめていた葵は、尊敬と共に少しばかりの不安も感じていた。


「凛、気をつけてね!」

葵の呼びかけに、凛は表情を変えずに軽く頷いた。無駄な言葉は交わさないが、その瞬間、凛の中には確かな信念が宿る。彼は過去の経験から、仲間たちとの間に一線を引いているが、心の奥では彼らを大切に思っている。それが彼の中で揺るぎない責任感となり、戦いに集中させていた。


隼人は前線に立ち、戦斧を振るい続けている。

彼は豪快な一撃で怪物の足元を狙い、攻撃の隙を作り出そうとしていた。その姿勢はまさに兄貴分としての風格を感じさせ、彼の背中が若いメンバーたちにとっての安心感となっていた。


「なんだ、こんなもんじゃねぇだろ!」

隼人が挑発するように怪物に叫ぶと、怪物は一瞬だけ彼に視線を向ける。その隙を見逃さず、斎藤が遠距離からの狙撃を決め、怪物の片腕を動きにくくすることに成功した。


「今だ、隼人!」

斎藤の声に応え、隼人は渾身の力で戦斧を振り下ろし、怪物の片足を削る。その瞬間、怪物はバランスを崩し、倒れ込むように地面にひざまずいた。


夏菜がすかさず動き、双短剣で怪物の関節部分を狙う。

彼女の動きは冷静そのものであり、無駄な動き一つなく、正確に攻撃を決める。そのクールな戦闘スタイルにより、怪物の動きはさらに鈍くなり、夏菜はわずかながら自信を感じる。


「これで少しは動きが鈍るはず……凛、次の一撃を!」

夏菜の冷静な指示に凛が応じ、影喰いに全ての妖気を注ぎ込んだ一撃を放つ。その鋭い一閃が怪物の胸部に深く突き刺さり、周囲に黒い霧が立ち上がる。怪物は一瞬大きく揺れたが、凛は気を緩めることなく冷徹に動きを追い続けていた。


しかし、戦闘はここで終わらなかった。

傷ついた怪物は不気味な呻き声を上げ、周囲の影を取り込み始める。すると、倒れかけていた怪物の体がさらに膨れ上がり、新たな力を得たかのように再び立ち上がった。


「まさか……こいつ、まだやるつもりか!」

風間が驚きの声を上げ、指輪を用いて突風を送り込むが、怪物の姿は一瞬も揺るがない。戦いはさらに苛烈さを増し、特務機関のメンバーたちも疲労の色が濃くなっていった。


「全員、これ以上は無理をするな。慎重に行動しろ」

凛が冷静に指示を出し、全員が再び陣形を整える。麗奈は数珠を握りしめ、癒しの力で仲間たちを支えながら祈りの言葉を紡いでいる。彼女の優しい声が、メンバーたちにわずかながら安らぎをもたらし、戦う力を取り戻させていた。


ついに、凛がとどめの一撃を放つ機会が訪れる。

影喰いに込めた妖気が刀身に渦巻き、凛は一気に敵の胸元へと突き刺した。その瞬間、怪物の体が震え、黒い霧が四散するようにして消えていく。


「終わったか……」

斎藤が安堵の息を漏らしたその時、怪物は最後の力を振り絞り、空に向かって大きく口を開けた。そして、そこから放たれたのは無数の炎の矢だった。


炎の矢が新宿の街全体に降り注ぎ、周囲は一瞬で火の海と化す。

逃げ場を失った特務機関のメンバーたちは、瓦礫と炎に囲まれた中で立ち尽くしていた。麗奈がすぐさま数珠を掲げ、全員を守るための結界を展開するが、炎の矢の猛威は凄まじく、結界さえも揺るがし始める。


「真琴、結界を強化して!」

麗奈の叫びに応え、真琴が護符を用いて結界をさらに厚く張り巡らせる。二人の尽力により、全員がかろうじて生き残り、火の海から逃れることができた。


戦いが終わり、周囲を見渡した凛は、焼け野原となった新宿の街に視線を落とした。

崩壊したビルや瓦礫が広がる光景を前に、彼は静かに影喰いを収める。心の中には、黒羽根の女への強い憎しみと、次の戦いに向けた決意が渦巻いていた。


「必ず居場所を見つけ……黒羽根の女を討つ」

凛が小さく呟き、メンバーたちはそれぞれ深い息を吐き出した。新宿の街は廃墟と化したが、特務機関の全員は生き残り、次なる戦いへの覚悟を胸に、荒れ果てた街を後にするのだった。

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