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東京幻怪録  作者: めくりの
一章

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第十六話「人面犬捕獲作戦」

 世田谷区のある住宅街。静かな夜の空気が漂う中、特務機関には奇妙な通報が入っていた。


「はい、こちら特務機関。どうされました?」


「…あの、ちょっと信じてもらえるかわからないんですが、犬が…えっと…人の顔してるんです」


「人の顔の犬…ですね?」


電話の向こうの通報者の声が怯えながらも必死に状況を説明し、冷静にそれを聞いていたのは深見夏菜だった。彼女は一通りの報告を聞くと、淡々と確認を取る。


「人面犬…目撃場所は?体の色や大きさはどのような感じでしょうか?」


「え、ええっと、夜だからちょっと暗いんですけど、白っぽい毛で、大きさは普通の柴犬くらいで…顔が…本当に、こう、人の…おじさんみたいな…」


「わかりました。すぐに確認に向かいますので、その場で待機をお願いします」


通報者が息を呑んでいるのがわかる中、夏菜は冷静に切電し、双短剣を腰に装着すると、現場へと向かった。


現場到着後


「こちら、深見夏菜。現場に到着しました。通報者の位置を確認中」


夜風に揺れる木々を抜け、通報者の位置に近づくと、明らかに挙動不審な男性が立っているのが見えた。顔は青ざめ、何度も周囲を見渡している様子から、かなり怖がっていることがわかる。


「お待たせしました、通報者の方ですね?」


「は、はい…それで、その、犬…まだいるんでしょうか?」


「状況はまだ確認しておりませんが、近くにいる可能性がありますので、落ち着いていてください」


クールで効率的な夏菜の言葉は、淡々としていてまるで事務的だったが、それでも彼女の落ち着いた態度が男性を少し落ち着かせたようだ。


「で、その人面犬というのは、今どちらの方向で…?」


「あ、あっちです!あの草むらに…たぶん…」


通報者が震えながら指差す方を見ると、確かに草むらが少し揺れている。夏菜は淡々とそちらに近づき、短剣に指をかけながら準備を整える。


「では、少し下がってください。こちらで確認します」


「お、お願いします…!」


人面犬との対峙


草むらに近づくと、何かがこちらをじっと見つめている気配を感じた。ゆっくりと覗き込むと、そこには通報通りの“人の顔”を持った犬が、こちらを興味深そうに見つめ返していた。


「なるほど…これは確かに人の顔」


夏菜は特に驚く様子もなく、淡々と人面犬を観察する。犬は少し困惑した表情で、夏菜に何かを訴えかけるような目をしている。


「あなた、どうしてここにいるの?」


「…ワン」


と一声鳴いた後、犬は何故か「いやー参った参った」という表情を見せた。


「…これはなかなかユニークね」


夏菜は犬に少しずつ近づき、毒短剣で軽く動きを封じる準備をした。しかし、犬の姿を見つめると、彼女の表情がわずかに緩む。


「本当に捕獲しても問題ないかしら…」


その時、通報者が遠くから叫んだ。「大丈夫ですか!?あの犬、大丈夫ですか!?」


夏菜は無表情のまま通報者の方を向き、「心配ありません。ただ少し、奇妙な表情をしていますね」


犬は一瞬の隙をついて逃げようとしたが、夏菜は素早くその動きを捉え、短剣を軽く振って犬の足元に打ち込んだ。犬はピタリと止まり、仕方ないとでも言いたげな顔でお座りをした。


「素直に捕まってくれるなら、もう少し優しくするけれど?」


犬はしょんぼりした顔をし、頭を垂れた。そんな犬の様子を見て、夏菜は「なんだかペットにしても面白そうね」と考え始めた。


通報者との会話と報告


捕獲が完了すると、通報者が恐る恐る近づいてきた。「そ、それが…人面犬…なんですね?」


「はい。ご覧の通り、捕獲は完了しました。特に危害を加える様子もありませんが、確かに見た目は人の顔ですね」


「なんだか…少し可哀そうな気もしますが…」


夏菜は淡々とした表情で、犬を見つめる。「確かに、見た目に反してとても大人しい性格のようです。どこかに連れて帰るより、このままペットとして飼ってみるのも悪くないかもしれません」


「えっ、ペットに…ですか?」


通報者が目を丸くして驚く中、夏菜は人面犬のリードをしっかりと持ち直し、決意を固めたようにうなずいた。


「人面犬の性格は、今のところ非常に穏やかで人懐っこいです。見た目だけで判断するのは良くないですね」


人面犬との新たな日常


その後、夏菜は人面犬を「ヤス」と名付け、特務機関での生活に連れて帰ることにした。ヤスは夏菜の後を大人しくついて回り、いつも彼女の横で不思議な表情を浮かべていた。仲間たちも驚きながらも、夏菜が人面犬を手懐けたことに少し関心を示していた。


「おいおい、夏菜、本当にそいつをペットにする気か?」


隼人が冗談混じりに言うと、夏菜はクールにうなずいた。「ええ、効率的な捕獲作戦の結果です。害はありませんし、彼の存在が任務に支障をきたすこともないはずです」


隼人は苦笑しながらも「ヤス」に近づき、手を振ってみた。するとヤスは「こんにちは」とでも言うように軽く頭を下げ、穏やかな表情で隼人を見つめた。


「なんか…意外と可愛いじゃねえか」


「でしょう?見た目がどうであれ、平和的な存在です」


その日から、夏菜と人面犬ヤスとの奇妙な生活が始まった。ヤスはどこか人間らしい反応を見せながらも、夏菜に忠実に付き従い、時には彼女の疲れた心を癒す存在として機関内でも知られるようになった。


クールな夏菜の表情が、ヤスと一緒にいる時だけは少し柔らかくなるのを見た仲間たちは、密かに微笑みを浮かべながらも、この新しいチームメイトとの生活を受け入れていくのだった。

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