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東京幻怪録  作者: めくりの
一章

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第十話「温泉街に宿る神秘」

 夜の帳が降りると、湯けむりが舞う温泉街の雰囲気は一層神秘的なものとなる。旅館の外にある石畳の道を歩く二人、風間亮と本庄麗奈。彼らは有給休暇を利用し、温泉街へと旅行に来ていた。普段の忙しい任務から解放され、心休まるひとときを過ごすのが目的だった。


「やっぱり温泉はいいね、心も体もリフレッシュできる」風間が満足げに伸びをしながら言うと、麗奈も笑顔で頷いた。


「そうね、久しぶりに仕事を忘れてリラックスできる場所だわ。温泉街って、少し懐かしい雰囲気もあって素敵ね」麗奈は、静かに湯けむりの中を眺めていた。落ち着いたその表情は、普段の戦闘中の彼女とはまるで別人のようだ。


「それにしても、ここって伝説がたくさんある場所らしいね。土地神が守っているとかなんとか…」風間が興味深げに話を切り出す。


「ええ、ここの温泉は昔から土地神に守られているとされているわ。この辺りの神社も、土地神を祀っているものが多いみたい。村の人たちが代々守ってきたものだから、大切にされているんでしょうね」


風間は周囲を見回しながら、「本当に静かで平和な場所だよな。でも、俺たちがいると何か起きちゃうんじゃないかって、ちょっと心配になるよ」と冗談交じりに言った。


「そうね…でも今日はきっと何も起きないわよ」と麗奈が微笑む。彼女は風間がいると自然と場が和むことを感じ、久しぶりに心の底からリラックスしている自分を感じ取っていた。


その夜、二人はそれぞれの部屋で温泉街の静寂を楽しんでいたが、夜も更けた頃、外から聞こえてきた低い響きが彼らの安らかな眠りを遮った。


「なんだ?」風間は急いで部屋を出て、音のする方向を確認する。薄暗い温泉街に目をやると、そこにはかすかに青白い光が漂っているのが見えた。青白い霧の中から、風がざわざわと動き、霧が重なり合うようにして怪しげな気配が漂っている。


麗奈も驚きながら外に出て、風間の隣に立つ。「あれは…霊的な存在のようね。しかも、この温泉街の土地神の気配が混ざっている気がする」


風間は腕を組んで、「やっぱり、こういうことが起きる運命なんだな」と苦笑を浮かべた。


「休暇中だけど、こうしていると守らないといけない気がしてくるわね」麗奈も神妙な表情で周囲を見回す。温泉街の端にある小さな神社に、青白い光が集まり始めていた。


______________________________________________


風間と麗奈は急いで光の集まる神社へ向かう。そこに着いた時、神社の鳥居が青白い霧に包まれ、まるで異世界への入り口のような不気味な姿を見せていた。神社の境内には巨大な影が立ちはだかっており、古来からこの地を守ってきたとされる土地神が姿を現していた。


その姿は人のような形をしているが、体中が木の根のようなもので覆われており、眼は深い森の奥底を思わせる暗い輝きを放っていた。その威圧的な存在感に、風間と麗奈は一瞬、息を呑む。


「これは…ただの妖怪じゃない。土地神そのもののエネルギーを感じるわ」と麗奈が低い声で呟いた。


風間は冷静に風を操り、青白い霧を吹き飛ばそうとする。しかし、霧は再び彼らの周りに巻きつき、まるで土地神の意思で動いているかのように、二人を包み込もうとした。


「ここで引くわけにはいかないな」と風間は気合いを入れ、指輪に妖気を注ぎ込み、強力な風の刃を土地神に向かって放つ。その風の刃は土地神の体に当たり、一瞬だけ影が揺らぐように見えたが、土地神は微動だにせず、青白い光をさらに強めて立ちはだかっていた。


「私も浄化を試みるわ」麗奈が数珠を握りしめ、土地神に向かって静かに祈りを捧げる。その祈りの力が光となって土地神に届くと、土地神の周りの霧が一瞬だけ薄れた。だが、土地神は揺らぐことなく、再び霧を巻き上げて二人に向かって歩み寄ってくる。


______________________________________________


突然、土地神の腕が伸び、その根のような体が彼らに向かって襲いかかる。風間は咄嗟に風の刃でそれを防ぎ、麗奈は結界を張って彼を守る。しかし、土地神の攻撃は強力で、結界は瞬く間にヒビが入り始める。


「風間、彼の力は霊的なものだけじゃなく、この土地のエネルギーを吸い取っているのかもしれないわ」


麗奈の言葉に、風間は再び風の力を集め、霧を払いのけようとするが、土地神の霧がますます濃くなるばかりだ。「なら、俺も全力で風を操るしかないか」


風間は指輪にさらに妖気を注ぎ込み、突風を土地神に向けて放つ。その突風が土地神の体をかすめ、一瞬だけ青白い光が揺らぐ。


「いいわ、風間。そのまま霧を吹き飛ばして!その隙に私が祈りを注ぐ!」


麗奈が強く数珠を握りしめ、再び土地神に祈りを捧げると、数珠から淡い光が広がり、土地神の青白い霧に浸透していく。その浄化の光が土地神の霧を浄め、土地神の体がわずかに弱まったかのように見えた。


「麗奈さん、もう少しでいけるかもしれない!」風間が叫び、最後の一撃を放つべく妖気を集中させる。


麗奈は数珠をしっかり握り、土地神に向かって祈りの言葉を唱え続ける。「土地神よ、この土地を守るためにその力を沈め、静かなる眠りに戻りなさい…」


その瞬間、麗奈の数珠が輝き、彼女の祈りが土地神に届いた。土地神の体が徐々に崩れ、霧が晴れていく。風間が放った風の刃も土地神の中心を貫き、ついにその巨大な影が霧と共に消え去った。


温泉街の夜空には星が再び瞬き始め、霧も完全に晴れて静寂が戻った。風間と麗奈は互いに視線を交わし、安堵の表情を浮かべた。


「やれやれ、結局休暇中に仕事になっちゃったな」風間が肩をすくめて微笑を浮かべる。麗奈も肩をすくめる。「しょうがないわ、早くお部屋に戻りましょ」



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