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プロローグ

「うるさい! 泣くんじゃねぇ!」 

 

 彼はいつも父親からこの言葉を聞かされていた。生まれたときから。


「うるせぇって言っているのが分からねぇのかよ!」


 いつも殴られた。いつも蹴られた。これも、生まれたときから。この世に誕生した理由、それは父親のサンドバックとなるためだったのではないかと思えるくらいに。

 父親は大手企業の代表まで昇り詰めた人物だ。大きな仕事を担っている分、ストレスも溜まっていたのだろう。更に母親は彼らを残して旅立ってしまったことにより、『子どもを育てる』という何とも厄介な義務が生じてしまった。家政婦などを雇うのもプライドが許さず、適当に見張って適当に食べさせ、そして存分に暴力を振るった。

 父親は殴る時に必ず「うるさい」と言う。疲れた体に子どもの泣き声は中々の毒に感じていたのだ。解毒剤は暴力しかない。




 いつものように殴られていたあるとき、彼は父親に言われた。

「もうお前は泣くな! 笑うな! 怒るな! お前の感情全てがうるさい!」

 殴られながら、何度も人格を否定された。家庭という世界の中では、自己表現する権利すら持たせて貰えないらしい。暴力しかない世界。感情さえも否定されてしまった世界。それは彼、橘冬斗という人間を壊すには十分過ぎるものだった。

 いつの日か、彼の顔から色が消えた。


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