コピーロボット
「えっと、これでいいんだよね……と。へへ、いや、可愛いっ!
そっくり! すごー! これ本物の皮膚? な、わけないか。
ゴムだよね。と、静かにしなきゃね。……でもあんた、本当に大丈夫?
ママのカードをこっそり借りて注文したんだからね。
不良品だったらホント困るんだけど……お、動いた。大丈夫そうね。
じゃ、留守番よろしくね。夕飯終わったらすぐに部屋に戻ってね。
ボロが出ないようにさ。ん? 食べられるんだっけ?
あ、大丈夫なのね。へー、よしよし。てか、私ってそんな声なんだね。
声登録したけどんー、まあいいでしょう。
ああ、大丈夫よ。二人には風邪引いたって言ってあるから
うんとか、はいとか言ってればいいから。自分からは話を振らないでね。
簡単な受け答えしかできないんでしょ?
でも、ま、バレないでしょう。そもそも二人ともフツーに会話するタイプじゃないしね。
偉そうだしバカだし鈍感だしヒステリックだし
そのくせ、古風ぶって外泊禁止とかホント意味わかんない。
あ、時間が。愚痴はまた今度ね。じゃ、よろしくねっとへへへ、窓から出なきゃね。
ま、一泊だし明日の昼ぐらいには帰って来れると思うからよろしくね。
ふふふ、楽しみだなぁ。じゃ、いってきますっ」
「……」
「……」
「……」
テーブルの上に並ぶ出来合いの料理を黙って口に運ぶ三人。
この家の娘が心配していたような会話はない。
それどころか一言もない。
そうしないように言われているからだ。
ここに人間はいない。
娘は彼氏の家へ外泊。母親は不倫旅行。父親も愛人の家にいる。
ただ、この日。いつ以来かの静かで平和な一家であった。