補遺 3-1
メイ・リーフ。
19歳。南陣営、丑の代理者。
能力、ベターコピー。
彼女の不幸は10年前から始まっていた。
彼女には、姉がいた。
姉の名は、マイ・リーフ。
メイはたった1人の肉親を10年前の第27回ウァルスで失った。
彼女は天涯孤独になった。
それが彼女の始まりの不幸。
けれども、そんな不幸を、理不尽を、人生ではよくあることだと飲み込めていたのなら、彼女は死ぬことはなかったのだろう。
彼女は恨んだ、憎んだ。北陣営を。
そして、誓った。第28回ウァルスへの参加を。
けれども、ウァルスへの参加は簡単なことではない。
まずは、超能力、「ワルキューレの奇跡」の発現。
それが最低限必要な条件だ。
しかし、能力の発現には、ある周知の法則が存在する。
それは、発現できる年齢は16歳未満であること。
つまり、16歳を迎えたその瞬間に、能力が発現していなければ、ウァルスへの参加は絶望的、昨今の能力者だけで構成されている代理者の状況を鑑みれば、参加は不可能と言っても過言ではない。
しかしながら、それでもやはり戦場に立って死ぬことを考えれば、メイは能力が発現しない方がやはり幸せだったのだろう。
彼女が幸せになることを天は許さなかった。
15歳と11ヶ月。
それが彼女が能力を発現させた年齢だった。
能力にはもう1つの法則がある。
それは、発現させた年齢が高ければ高いほど、能力のポテンシャルが高いと言うことだ。
つまり、15歳と11ヶ月で発現した能力は、理論上最強の能力なのだ。
確かに、その法則には則っていた。
彼女は如何なる能力者が相手でも能力で劣ることはない。
何故なら、彼女は他者の能力をより良く扱えるからだ。
それだけじゃない。
目視すれば、複製できる。
それが驚異的だ。
能力者共通の弱点は能力を知られることだからだ。
メイは目視するだけで、コピーのついでに、能力を知ることができる。
正に最強の能力だ。
けれども、現実は無情。
どんなに復讐の業火に身を焼かれようとも、最強の能力を目覚めさせようとも、復讐の舞台に上がれようとも、復讐が成功するとは限らない。
現に、彼女は夢半ばにして、命尽きてしまった。