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第3話


 コウがカエルとなって蛇に捕食されたちょうどその頃、所変わって、中立の島・サンクチにある大会本部の中枢では。


 監視カメラの映像が映し出されたモニターが所狭(ところせま)しと並ぶ広過ぎるほど広いその部屋に、ゲームマスターのアイ・スズキは立っていた。


「ついに始まりましたね」


 そんなアイに向かって、審判団の1人が声をかける。


 南陣営のメンバーが1人欠けての発言だ。


「ああ。ここから先10年の行く末を決める代理者戦争だ。誤審は許されない。気を引き締めていくぞ」


「は、はい!」


 そう返事をする彼を横目に、アイは身体を(ひるがえ)して、部屋の扉へと歩みを進めた。


「ゲームマスター!一体どこに?」


「なに、野暮用(やぼよう)だ。私が席を外している間、ウァルスの進行は任せる」


「はい!」


―――


 さて、ウァルスの会場の島に視点を戻そう。


 島の中央で静かに初戦が終わって間もなく、2戦目が始まろうとしていた。


 場所は島の中央西側。


 開戦時に向かい合っていたチームEとチームεが順当に接敵した形だ。


「あなたも1人ですか?」


 南陣営、チームEのメイ・リーフは、一触即発の雰囲気を斬り裂くようにそう言った。


「…」


 北陣営、チームεのミサ・スカーレットは、答えない。


「まあ、良いですよ。あなたも当然能力者ですよね?能力者なら私には勝てませんよ」


 チームEは1人のチームだ。


 ウァルスでの単独行動をする者には何かしらの理由がある。


 そもそも、何故チームを組むのか、そこから考えてみよう。


 チームを組むのは、複数人で行動するメリットがあるからだ。


 複数人のメリット、例えば、自分1人では対応できない問題に対処できる、人数不利の形になりにくくなる、など、挙げられるのはそんな所だろうか?


 一方でデメリットは?


 メリットしかないのであれば、12人全員で固まって行動していれば良い筈だ。


 しかし、そうならないと言うことは、デメリットがあると言うことだ。


 複数人で行動するデメリット、それは一網打尽(いちもうだじん)にされることだ。


 不意に、一撃必殺のような技を食らってしまったら、太刀打ちができなくなる。


 つまり、チームの人数が増えれば増えるほど、リスクが増えるわけだ。


 さて、本題に戻そう。


 単独行動をする者は、多人数のメリットを捨ててでも単独行動をする理由がある。


 メイ・リーフの場合、それは例外的な能力の強さだった。


 チームEのEは、例外、ExceptionのEだ。


 そんなメイ・リーフの能力は、「ベターコピー」。目視した能力者の能力をコピーする。コピーした能力は、元の能力よりもより良いものとなる。


「えっ!弱っ!なんですか、あなたの能力…。こんな能力でよく代理者になれましたね。亥の代理者ですか?」


 メイはその能力の都合上、コピーした能力の改善前、改善後の能力を把握できる。


 それによってミサの能力は、既にメイに把握されていた。


「…」


 けれども、ミサは何も言わない。


 無言のミサはただただメイを見つめていた。


 ミサのその冷めた眼差しは、まるで監視カメラのレンズのようだった。


「よ、余裕でいられるのも今のうちですからね!」


 ミサのそんな雰囲気にメイは飲まれて、気圧(けお)されていた。


 メイの心中は変化しつつあるが、しかしながら、一触即発の雰囲気は変わっていない。


 となれば、戦闘が始まるこのタイミングで、隠されたミサの能力を明かしておいた方が良いだろう。


 ミサ・スカーレットの能力は、「暗闇」。能力を使用している間、自分を中心に一定の範囲内にいる全ての者は五感を失うと言う能力だ。


 そして、それをコピーしたメイの方は、能力を使用している間、自分を中心に一定の範囲内にいる()()()()()全ての者は五感を失うと言う能力だ。


 暗闇が2人を覆った。


「じゃあ、行きますよ。って、言っても聞こえてないと思いますけど」


 メイは、不用心にも真っ直ぐミサに近付いた。


 1歩、2歩、3歩。


 確実に距離は詰まっていく。


 メイの腕がミサに届くほんの(わず)かに手前で、ミサの拳がメイの鳩尾(みぞおち)に向かっていく。


 バッ。メイは(かわ)す。


 軽口を叩いてはいるが、メイも選ばれし精鋭。


 能力が相手によって変わる都合上、格闘などの基本戦闘能力や判断力、観察力などの力は充分に磨かれたものであった。


「…」


「あっぶなぁ!見えてるんじゃないです?…ッ!」


 ミサの後方回し蹴りがメイの(あご)に入る。


 メイの脳は揺れ、そして、倒れる。


 脳震盪(のうしんとう)だ。


 メイの意識と共にメイが発動していた暗闇(改)の能力は途切れる。


「ごめんね」


 ミサはナイフを取り出し、そっとメイの首にあてがう。


 ビッ!


 倒れたメイの首筋から大量の血が噴き出した。




【判明している情報】

[北陣営]

・チームα

 リーア・ゲレーバ

 エミリー・ストトレ

  悪戯の能力;悪戯好きなロキ

 ソラ・シロ

  魅了の能力;艶奪の瞳

  副次的効果:他者の視線に敏感に気付ける。

 ユイ・ブラト

 ユー・エンビ

・チームβ

 カンナ・ウォーク

  衝撃波の能力;クラッピング&ビーティング

 ハンナ・ウォーク

 マヤ・キュチカ

・チームγ

・チームδ

・チームε

 ミサ・スカーレット

  虚無の能力;暗闇


[南陣営]

・チームA(Assassin)

 サクラ・クリア

  毒の能力;フェイタルポイズン

 コウ・ゲイト〈DEAD〉

  狙撃の能力;スナイプ

・チームB(Brain)

 メルノ・チェプロ

  共有の能力;鳥獣一体

 フォーリー・ウィード

  眼の能力;神眼魔眼

 ミク・ハチャ

  万能の能力;オールマイティ

・チームC

・チームD

・チームE(Exception)

 メイ・リーフ〈DEAD〉

  複製の能力; ベターコピー


[GM]

アイ・スズキ

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