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第2話


 島の中央よりの森に身を隠すチームA。


 彼女達は2人組のチームだった。


「クリア、行くよ」


 その片方、コウ・ゲイトは(冷たく)そう言った。


「あっ、ちょっと待って、メルノちゃん達から指示来たわ」


 サクラ・クリアは間の抜けた感じでそう返した。


「だから、その指示が来たから『行くよ』って言ったんだけど」


「あ、そう言うことか」


「はぁ」


 チームAのAは、AssassinのAだ。


 メルノ達チームBからチームAへの指示は、島の中央に陣取る5人組(チームα)への攻撃(暗殺)だった。


 両陣営共に、各チームの人数構成は、5人、3人、2人、1人、1人。


 この人数構成が過去27回のウァルスで(つちか)われた定石(じょうせき)だ。


 つまり、5人組のチームは、単純に考えて最も戦力が高いチームとなる。


 故に、暗殺チームである彼女達は、その戦力を少しでも()ぐことを命じられたのだ。


 さて、こう説明をしている間にも、彼女達は最小限の物音しか立てずに、慎重かつ迅速に物陰を進み、チームαを見下ろす位置に移動を終えていた。


 距離はなかなかに遠く、肉眼だと5人がいることが何とかわかる程度の距離だ。


 コウは、背中に背負っていたキャディバッグのようなものを下ろすと、そこからスナイパーライフルのパーツを取り出した。


 それと同時に、双眼鏡も取り出し、サクラの方へ放り投げる。


「おっとと」


 サクラはそんな声を漏らしながらも双眼鏡を受け取ると、そのままその双眼鏡を(のぞ)き、チームαの方を見た。


「どう?」


「なんか、すごいわ」


「はぁ」


 語彙(ごい)力のないサクラの説明では何も理解できず、思わずため息を漏らしたコウは、自分の目で確かめるために、組み立て終わったスナイパーライフルのスコープを覗き込んだ。


 チームα。


 サクラの説明も(あなが)ち間違っておらず、すごかった。


 何がすごいと言えば、協調性の無さがすごかった。


 チームαを見た時に、まず目に入るのがターコイズブルーの髪のパンキッシュな格好をした彼女だ。


 しかし、チームαはパンクな集団ではない。


 ゴスロリファッションに身を包んだ者、レインコートと長靴に傘と言う雨でも降っているかのような格好をした者、露出の多い軍服のような格好をした者と他にも特徴的な格好をした者達がいる。


「それで、誰狙うの、ゲイト?」


「小さい子、いるでしょ?その子を狙う」


 そんな個性的な4人を率いているのは、12歳の少女だった。


 仮にもここは戦場で、そんな戦場に少女は相応(ふさわ)しいとは言えないだろう。


 しかし、現に少女はそこにいる。


 であれば、少女は戦場に相応しい人間と言うことなのだろう。


 そうなって来ると、その幼さで12人の精鋭に選ばれたと言うのは、逆に警戒するしかなくなってくる。


 したがって、コウの判断は実に合理的な者なのだ。


「りょーかい」


 そう返事をしたサクラは、双眼鏡から左手を離すと、(てのひら)を少し丸めるようにして上に向けた。


 すると、サクラの手から毒々しい紫色の毒が(にじ)み出た。


 彼女の能力は、「フェイタルポイズン」。毒を生み出す能力だ。


 この能力は毒を生み出す時に、任意の対象を取る。


 そして、その毒は、対象に対して致命的な毒となるのだ。


 この対象の取り方は、「生物」と言った大きな取り方や、個人名のような(しぼ)った取り方ができる。


 対象の範囲が狭ければ、狭いほどの毒の致死量は下がり、侵食スピードは上がるのだ。


 そんな能力で毒を生み出したサクラは、右手に持った双眼鏡を左脇に挟むと、空いた右手をズボンのポケットに突っ込んで、何かを取り出した。


 スナイパーライフルの弾だ。


 とは言え、それは普通の形状とは違った。


 この弾は、液体を(まと)いやすくなるような形状なのだ。


 サクラは、右手で摘んだ弾を左掌の毒に浸した。


 そうして毒を吸収した弾をコウに渡した。


 コウは、その弾を装填する。


 コウ・ゲイト、彼女の能力は狙撃の能力「スナイプ」。


 彼女は目視した相手に人力以外で放った物体を命中させる能力を持っているのだ。


 彼女は狙撃の能力を持っているが、しかしながら、命中したからと言って、相手の命を奪えるわけではない。


 故に、弾にはサクラの毒が必要なのだ。


 そんな暗殺チームの毒牙は、チームαに迫っていた。


―――


 一方、標的(ターゲット)であるチームα。


「ソラさん、どうかしましたか?」


 消え入りそうな声で、モノクロのゴスロリファッションに身を包んだユー・エンビはそう言った。


「新たなお客人がいらしたようだからね。少し気になっていたのさ」


 露出の多い軍服を見に纏ったソラ・シロはそう答えた。


 彼女の能力は「艶奪(えんだつ)の瞳」。目があった者を魅了し、心を奪う能力だ。


 そして、その能力の副次的な効果で、彼女は視線に敏感だった。人、動物、機械問わず、彼女は自分が見られていることに気が付けるのだ。


 故に、暗殺チームの2人がソラ達チームαを見ていることにソラは気付いていた。


「えー、ほんとにー?どこー?」


 気怠(けだる)げにそう尋ねたのは、エミリー・ストトレ。ターコイズブルーの髪色にパンキッシュな格好の女性だ。服は全体的に薄着ではあるのだが、左腕の部分はゴテゴテしている。そのゴテゴテとした左腕からは蛇が覗いている。


「あの辺りなのだけれど、私にも正確な位置はわからないな。すまないね、エミリー」


 ソラが指差す方を4人が見る。


 けれども、森の中に(ひそ)むチームAの2人を(とら)えることはできない。


「こっちから仕掛けちゃう?あ、でも、あんな遠くにいるなら、私達が動いてる間に逃げられちゃうよね」


 雨天でもないのに、レインコート、長靴、傘を身に付けているユイ・ブラトはそう言った。


「ああ、それに、辺りを飛んでいる鳥達も私達を見ているようだ。さらに、開始直後にもどこかから視線を感じたし、南陣営は随分と索敵に富んでいるようだよ。そうなって来ると、私達は無闇に動くより、わざと後手に回ってみるのも良いかも知れないね」


「ソラの言ってること、全然わかんないー!さっきソラが言ってた敵も全然見えないしー!」


 そう言ったのは、リーア・ゲレーバ。12歳の少女だ。


「ええと…」


 リーアの言葉にソラが戸惑(とまど)っていると、パァン、と言う大きな音が鳴る。リーアのすぐ側の地面には弾痕(だんこん)が付いていた。


 それは、コウが放った銃弾だった。


「あそこかー。じゃあ、私、ちょっと行ってくるねー」


 発砲により、位置が分かったエミリーはそう言った。


―――


 コウ・ゲイトは焦っていた。


 自分の撃った弾が外れたからだ。


(なんで!?私の能力で絶対に当たる(はず)なのに!)


「ゲイト、外してんじゃん。ウケる」


 戦場の緊張感もなく、サクラはそう返した。


「馬鹿なこと言ってないで早く逃げるよ。あいつらに位置、バレたんだから」


「ほーい」


()()()()()()


 返事をするサクラとは違うもう1つの声。


「!?」


 コウは声の方を振り返る。


 先程までスコープの向こうにいた筈のエミリーがそこにいた。


 刹那(せつな)、コウの姿はカエルに変わる。


「はーい。ゴルゴーン、ご飯の時間ですよー」


 呼びかけに応じるようにエミリーの左腕から出てきた蛇は、カエルと化したコウを丸呑(まるの)みにした。


「仲間、死んじゃったねー。どうす…」


 そこまで言ったエミリーは、チームαの4人の所へと瞬間移動で戻った。


「おや、エミリー。随分と早いお帰りだね」


 エミリーの姿を見たソラはそう声をかける。


「敵、2人いてー、1人はやったんだけどー、もう1人はやれなかったー。なんなの、あいつー。仲間が殺されたって言うのに、全然動揺もしないしー、すぐに私に攻撃して来たんだけどー。私の方がびっくりして逃げちゃったんだけどー」


 そう、サクラはエミリーの姿を見て、瞬時に毒を生成し、攻撃を仕掛けてきたのだ。仲間のコウが訳の分からない方法で殺されたと言うのに。


 では、ここで、エミリーの能力でも説明しておこう。


 彼女の能力は「悪戯好きな神(ロキ)」。


 彼女の悪戯(いたずら)に驚いてしまった者は、次に日の出の光を浴びるまでカエルになってしまうと言う能力だ。


 ちなみに、瞬間移動に、透明化、変身など、悪戯のためのさまざまな能力が使えるが、それらを使って相手を傷付けることはできない。


 さて、そこまで説明した所で、先程の状況を改めて説明するとしよう。


 まず、チームAの居場所がわかったエミリーは、瞬間移動の能力でその場所まで瞬間移動した。


 そして、その瞬間移動によっていきなり現れたエミリーに驚いたコウは、エミリーの能力によってカエルに変わり、エミリーのペットであるゴルゴーンに食べられた。


 ここまではエミリーの想定内。


 むしろ、一瞬で味方がやられたことにサクラが驚いて、さらにカエルになってくれれば万々歳(ばんばんざい)と言った所だった。


 しかし、サクラは驚かなかった。


 それどころか、エミリーに攻撃を仕掛けて来たのだ。


 そんなサクラの突拍子(とっぴょうし)のない行動に逆に驚かされたエミリーは、瞬間移動で自陣に戻ったのだった。


―――


 そして、その頃、エミリーを追い返したサクラは。


「ゲイトがやられたか。まあ、とりあえず、メルノちゃん達に連絡しよ。『ごめん。敵の攻撃でゲイト、やられたわ』っと」


 ただただ冷静に現状を伝えるサクラ。


 そんなサクラの様子ははっきり言って異常だった。


 ここは戦場だ。人の命なんて塵芥(ちりあくた)のように消えてなくなる。


 けれども、彼女達は心を殺した軍人ではない。


 それなりの時間を共に過ごした仲間が殺されれば、少しくらい動揺してもおかしくはない。


 それどころか、サクラとコウは幼馴染(おさななじみ)だ。


 それを踏まえれば、サクラの様子がどれだけ異常であるかを理解するには充分であろう。


「おっ、返信来た。撤退かー。ま、『了解』と」


 サクラの姿は、木々の陰にスーっと消えた。




【判明している情報】

[北陣営]

・チームα

 リーア・ゲレーバ

 エミリー・ストトレ

  悪戯の能力;悪戯好きな神(ロキ)

 ソラ・シロ

  魅了の能力;艶奪の瞳

  副次的効果:他者の視線に敏感に気付ける。

 ユイ・ブラト

 ユー・エンビ

・チームβ

 カンナ・ウォーク

  衝撃波の能力;クラッピング&ビーティング

 ハンナ・ウォーク

 マヤ・キュチカ

・チームγ

・チームδ

・チームε


[南陣営]

・チームA(Assassin)

 サクラ・クリア

  毒の能力;フェイタルポイズン

 コウ・ゲイト〈DEAD〉

  狙撃の能力;スナイプ

・チームB(Brain)

 メルノ・チェプロ

  共有の能力;鳥獣一体

 フォーリー・ウィード

  眼の能力;神眼魔眼

 ミク・ハチャ

  万能の能力;オールマイティ

・チームC

・チームD

・チームE


[GM]

アイ・スズキ

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