表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/36

第1話


 中立の島・サンクチ。


 その島の近くの海上に造られた5㎢の人工島。


 第28回ウァルスの会場である。


 ウァルス開始まで、後3分。


 その島の上には、24人だけがいた。各陣営の12人だ。


 その中に男性は1人もいない。


 24人全員が女性だ。それは、何故か?


 そこに人類が滅びかけた理由があった。


 第三次世界大戦が起こる少し前、人類には大きな変化が訪れていた。


 超能力。そう呼べる能力が発現する人類が現れたのだ。


 この超能力が発現するのは、女性のみ。


 故に、この超能力は「ワルキューレの奇跡」と呼ばれた。


 そんな超能力を持った24人の女性が今回の主役だ。


 主役達はそれぞれのフォーメーションを整えて向かい合う。


 その視線の先には、50mを越える高さの壁が(そび)え立っていた。


 壁は青く半透明な水晶のような物質でできていた。


 その壁の幅は相当に広く、島の最東端から最西端まで広がって、北陣営と南陣営を分断していた。


 そんな壁の上を飛ぶ1機のヘリコプター。


 その中にはマイクを持った女性がいた。


 彼女はアイ・スズキ。このゲームのゲームマスターだ。


『両チーム、準備はよろしいでしょうか?』


 スピーカーを通した彼女の声が島中に響き渡る。


『では、時間となりましたので、第28回ウァルスを開始いたします』


 彼女のその声と共に、島を分断している高い高い壁は、跡形もなく消え去った。


 それと共に、ヘリコプターも去って行った。


―――


 北陣営。


 島の最北端には、3人のチームが陣取(じんど)っていた。


 彼女達はチームβ。


 そんなチームβの彼女達の様子を見る限りでは、たった今10年に1度の戦争が始まったとは、とてもではないが思えないだろう。


 何故なら、島の北端の崖に建てられたテントの中で、1人は眠り、1人は眠っている彼女に対して膝枕をしているからだ。


 唯一テントの外に立っているカンナ・ウォークは、空に溶けるように消え去る水晶の壁を見て、口を開いた。


「マヤさん、始まったよ、ウァルスが」


「そうね。ハンナちゃんが前線に出るようなことにならなければ、良いんだけど」


 膝枕をしている女性、マヤ・キュチカは、カンナの言葉にそう返した。


 良く見てみれば、マヤに膝枕をされて眠っている女性はカンナに似ていた。


 それもそのはず。マヤの膝枕の上で眠っているハンナ・ウォークは、カンナの双子の姉なのだ。


「とりあえず、情報を集めないとね」


 カンナは眼前の森に向かって、と言うよりは、島の中央に向かって手を叩いた。


 カンナ・ウォーク、彼女の能力は、衝撃波の能力。名を「クラッピング&ビーティング」と言う。


 彼女は今、そのクラッピングの方を使ったのだ。


 クラッピングは衝撃波を放ち、索敵をする能力だ。


 この島程度の広さであれば、地形から敵の位置まで全て把握できる。


 とは言え、遠ければ遠いほど、精度は下がるのだが。


 さておき、カンナは目的を果たしていた。


 大まかではあるが、敵がどのような陣形で構えているのか把握できたのだ。


 彼女は、今掴んだ情報を携帯端末に入力していく。


 これで、能力で得た全ての情報を北陣営全員で共有できるようになった。


―――


 一方、南陣営。


 チームβと真逆の島の最南端にチームBはいた。


 チームBのBは、BrainのB。


 彼女達が南陣営の司令塔だ。


「じゃあ、作戦通り、情報収集するよ」


 フォーリー・ウィードはそう言った。


「フォーリーちゃん。私は準備できているよ」


「フォーリー!私もバッチリ!」


 先程のカンナとは違い、こちらはチームB全員での情報収集だ。


 彼女達の能力が分からなければ、おそらく何をしているかわからなくなることだろう。


 ここは焦らず、彼女達の説明から始めるとしよう。


 フォーリー・ウィードの能力は「神眼魔眼」。


 左眼に神眼、右眼に魔眼を宿(やど)す能力だ。


 神眼は全てを見通し、魔眼は全てを滅ぼす能力である。


 次に、フォーリーのことを「フォーリーちゃん」と呼んだ彼女。


 彼女は、メルノ・チェプロ。


 彼女の能力は「鳥獣(ちょうじゅう)一体」。


 およそ24時間以内に自分と触れ合った哺乳類(ほにゅうるい)および鳥類と言葉を(かい)さず意識や感覚を共有できる能力だ。


 最後に、ミク・ハチャ。


 彼女の能力は「オールマイティ」。


 彼女は全てができる。


 とは言え、それは人類が基本的な身体能力でできることに限られていて、「ワルキューレの奇跡」のような超能力でできることはできない。


 そんな能力だ。


 さて、この3人の能力を使ってどう索敵するのか?


 今挙げた情報だけで彼女達の索敵を想像するのは難しいだろう。


 故に、ここで答え合わせをしよう。


 フォーリーの神眼は全てを見通すことができる。


 しかし、これには2つ弱点がある。


 1つ目は、長時間能力を発動できないと言う点だ。


 神眼は1日あたり20秒程度しか発動できない。


 ちなみに、魔眼は1日あたり3秒だ。


 2つ目は、彼女の脳は特別製ではないと言うことだ。


 神眼の能力を持ってすれば、(まばた)きの間にこの島の全貌(ぜんぼう)を把握するのは容易(たやす)い。


 しかし、彼女の脳は流れ込む膨大な情報量を処理できないのだ。


 この2つの弱点を(おぎな)うためにメルノとミクの能力が必要なのだ。


 2つ目の弱点は、一瞬で流れ込む膨大な情報量を処理できるような特別な脳があれば解決する。


 そのため、メルノが、フォーリーの視覚をミクと共有する。


 そうすることで、フォーリーの神眼で得た情報をミクが受け取ることができるようになる。


 そして、そのミクは人類ができることならなんだってできる。


 故に、ミクは映像記憶のように見たものを一瞬で記憶することもできるのだ。


 つまり、彼女達3人の索敵は、メルノの能力でフォーリーの視覚をメルノ経由でミクと共有し、フォーリーの神眼で見た膨大な情報量をミクが記憶することで成り立つわけだ。


 などと、説明している間に3人の索敵は終わる。


 島の様子全てを記憶したミクはその記憶を紙に転記し始めた。


 北陣営のカンナの索敵とは比べ物にならないほどの情報量を持った索敵結果は南陣営全員に共有された。


―――


 では、ここで一度、各陣営の様子を記すとしよう。


 まず、北陣営。


 最北端にチームβが陣取り、島の中央、先程まで壁があったところの側にはチームαが配置されている。


 そして、チームαの右側(西側)にはチームεが、左側(東側)にはチームγが配置されており、そんな全てのチームが見通せる場所、チームαの後方にチームδがいた。


 各チームを繋ぐとT字になるような陣形だ。


 次に、南陣営。


 最南端にチームBが陣取り、島の中央、先程まで壁があったところの側の森に身を隠すようにチームAは潜んでいる。


 そして、壁を挟んで、チームεの反対側にチームEが、チームγの反対側にチームDが配置されていた。


 チームBを守るようにチームBの前方にはチームCがいる。


 こちらは、各チームを繋ぐとY字になるような陣形だ。


 本当は図のひとつでも載せればわかりやすいのだが。




【判明している情報】

[北陣営]

・チームα

・チームβ

 カンナ・ウォーク

  衝撃波の能力;クラッピング&ビーティング

 ハンナ・ウォーク

 マヤ・キュチカ

・チームγ

・チームδ

・チームε


[南陣営]

・チームA

・チームB(Brain)

 メルノ・チェプロ

  共有の能力;鳥獣一体

 フォーリー・ウィード

  眼の能力;神眼魔眼

 ミク・ハチャ

  万能の能力;オールマイティ

・チームC

・チームD

・チームE


[GM]

アイ・スズキ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ