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補遺 5-1


 ヒナタ・クロサワ。


 15歳。南陣営、(とら)の代理者。


 能力、デッドエンド・ダンスホール。


 彼女は24人の中で最も幸せなのかも知れない。


 他の代理者の参加理由が、国のため、家のため、仕方なく、何となく、などなど、様々な理由がある中で、ヒナタだけは他と一線を(かく)す理由で参加していた。


 殺し合いがしたかったから。


 彼女は生まれた時から、生命のやり取り以外に強く()かれるものがなかった。


 もし、世界にウァルスが存在しなければ、適当な殺人犯にでもなっていたような、そんな人間だ。


 しかし、幸運にも世界にウァルスは存在した。


 故に、彼女は幸せだった。


 望んで代理者になった者も多くいるが、代理者になってここまで多幸感に満ち溢れさせたのはヒナタだけであろう。


 殺したい。


 人を殺したい。


 一方的な狩りではなく、自分の生命をも()した殺し合いがしたい。


 こんな異常な彼女が代理者の中で1番幸せになれているこの世界はやはり異常だ。


 彼女に心残りがあるとするならば、それは1人としか殺し合えなかったことだろう。


 ヒナタが正々堂々の正面戦闘を望もうとも、相手が必ずしもそれに乗ってくれるとは限らない。


 これは戦争だからだ。


 なんと悲しいことだろう。彼女は10年間ずっと殺し合いを望んでいたと言うのに。


 ヒナタの能力は誰にも制御できない能力だ。


 1度能力が発動すれば、勝敗が決するまで誰にも止めることはできない。


 だから、彼女の能力の解析や練習の際には、死刑囚など、死んでも良いと判断された人間が相手に選ばれた。


 勿論(もちろん)、それが熱い殺し合いであったならば、ヒナタの殺し合い欲求も多少は満たされたことだろう。


 しかし、そんな骨のある相手はいなかった。


 誰もが、ヒナタの相手になったことが死刑の執行であるかのように、絶望し、混乱し、狂乱し、発狂し、号泣した。


 無論、抵抗する者もいたが、ラストチャンスに賭けたようなそんな抵抗にヒナタが満足する(はず)がなかった。


 だから、ヒナタはフラストレーションを溜め続けた。


 殺したい。殺されたい。殺し合いたい。


 そんな欲に(おぼ)れて参加した2度目のウァルス。


 初めてのウァルスは気が付いたら、終わってしまったから、今度こそは殺し合いを楽しみたい。


 そう思って参加した。


 彼女は死んでしまったが、ほんの(わず)かでもその欲求を満たせたことが何よりの幸せであろう。

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