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朝の会議3

「ええっと、オレは自分の白先の藍以外は今のところ信じていないけど、でも他を見ても誰も黒い人が居ないなあって思ったんだ。ただ、みんな言うように彩菜さんは怪しい。でも、人外なら皆に合わせて意見を言っておけば無難に過ぎて行くんだから、あんな風に違う意見を言うのは逆に白いかもって思ってる。でも、最後の克己と保は…やっぱり、黒いかなあ。だって色が見えてるように見えたから、それを指摘した大和が結構白くなったなって思ってたところ。」

丞が言った。

「占い師の内訳についてはどう思う?」

陽太は、素直に答えた。

「最初は、霊媒師に誰も出なかったことから占い師には白人外ばかりかと思ったんだ。霊媒はローラーされるのが普通だから、占い師に狂信者とか背徳者が出ちゃって、出るに出られないのかなって。でも、みんなの意見を聞いていたら、少なくとも狐陣営からは狐本体が出てるよね。だって、確かに背徳者だけが生き残っても仕方ないからさ。狐が呪殺されたらもろとも消えるだろ?そう考えると、背徳者は潜伏してて、狼陣営からは狂信者が出てるのかなって考えてたところ。分からないけどね。何しろ狼からは狂信者が分からないし、狂信者から狼に接触しないと指示できないだろ。黙って見ている狂信者が居る可能性とあるなあ。」

丞は、感心したように言った。

「よく見てるな。君の白先の藍も積極的に意見を出してて白いし、なんか陽太は真に見えて来るな。」

陽太は、ポッと赤くなった。

ちゃんと考えてると伝わるんだ。

丞は、次に菜々子を見た。

「菜々子さんは?」

菜々子は、言った。

「すごく陽太さんに共感するわ。私も霊媒師が確定した時同じことを思ったの。私の相方は陽太さんかもって今思う。まだ分からないけど、思考が同じだとそう感じるよね。グレーだけど、大和さんまでなら絶対彩菜さんが怪しいって思ったんだけど、律子さんが言うように軽く言ったのかもだし、吊るほどでもなかった。でも、保さんと克己さんは怪しいな。保さんの時にあれ?って思ったのに、克己さんがそれを指摘せずに同じ事を言ったから、私はどっちかと言うと保さんより克己さんが怪しい。直前の意見だし普通気付くんじゃないかって思っちゃう。」

丞は、ウンウンと頷いた。

「そうだなあ。確かに。ただ君の場合は陽太の後だから合わせて来た人外にも見えるし、まだそこまで信用できてないけどな。」

菜々子は、頬を膨らませた。

「そんなの発言順だから仕方ないじゃない。」

確かにそうだ。

丞は、苦笑しながら寛を見た。

「寛さんは?どう思います?」

寛は、それこそ論破するぞという気迫で立ち上がった。

誰も立ち上がって発言していないのに、目立つ行為だったが、そこに何やら威圧を感じた。

「オレは言葉尻を捉えて保と克己を陥れようとしている人外が居ると思っている。」自信満々な様子だ。「考えてみろ、おかしいだろう?皆が皆二人を怪しいと言い出してるんだぞ?まだ全員が生き残っている今、狼陣営が間違いなく五人いるここで、誰も庇わないのだ。いくら数が多い狼でも、初日に仲間を失うのはつらいはずだ。なのでオレは、二人は白でそれを言い出した大和の方が怪しいのではないかと思っている。もちろん、陽太と菜々子さんの二人もオレの相方ではないのではと思っている。それに気付かない村人達は浅はかなんじゃないかって思っているところだ。」

陽太は、確かに誰も庇わない、と少し眉を寄せた。

そう言われてみると、そうなんじゃないかと思えて来てしまうのだ。

丞が同じ思いなのか黙ったが、律子が怯むことなく言った。

「今、あなたが庇っているのではないですか?」皆が律子を見る。律子は特に力が入っている感じではなく、さらりと続けた。「あなたが言うように、誰も庇いませんでしたわ。でも、今あなたが庇っている。狼陣営は確かに5人ですけど、20人居る中の5人です。あなたに至るまで誰も庇わなかったということは、あなたまで狼が居なかった、と私は考えます。あなたが狼なら、悠斗さんを囲っていてグレーではないから発言機会がなくて庇えなかった、狼はあなたと悠斗さん、保さん克己さんと考えるとスッキリする盤面です。」

めっちゃ分かりやすい。

陽太は、感心した。

律子はとても頭がいいのだ。

寛は赤い顔をして言った。

「なんだ、君は!決め付けて言ってくるところを見ると、君は人外だな?!」

律子は、首を振った。

「いいえ。私はあくまでも自分の思考の流れを説明しただけですわ。これは仮説です。仮説を立てて眺めるのが一番分かりやすいのですわ。決め付けているのではなく、今の流れなら私はあなたを狼陣営だと見た方が分かりやすいと思っただけ。もちろん、思考の更新は入りますから、これからは分かりませんが、あなたのその感情的な様子は図星だったからですの?」

律子は上品で落ち着いているが、言葉がズバズバと相手に刺さる。

寛は、居心地悪そうにした。今の今まで村人を馬鹿にしていたような様子は、もうそこにはなかった。

「…オレは、自分が真占い師だと知っているから理不尽な意見に腹を立てただけだ。別に図星とかではない。」

律子は、頷いた。

「ならば、あなたはもう少し村に寄り添う言い方をした方がいいですわ。それでは敵を作ってしまうので、人外の思うツボですから。とりあえず、今のあなたの意見は分かりました。」

このどっしりとした感じはなんだろう。

歳月を感じさせるような、そう、もっと年上の人のような感じを受けるのだ。

若いのに苦労したのかもしれない。

陽太は、そんなことを思いながら聞いていた。

寛が黙ったので、丞は咳払いをして、言った。

「じゃあ…ええっと、香織さんは?」

香織は、今のやり取りですっかり萎縮した様子だったが、おずおずと答えた。

「ええっと…私は皆さんほど賢くもないので。保さんと克己さんのことにしても、意見を聞いてそうなのかって普通に納得して聞いてしまっていて。今の寛さんの意見も、確かにそうだって納得していたら、律子さんが意見を。それを聞いてまたそんな考え方もあるんだって納得して。自分が不甲斐なくて、申し訳ないです。ただ、芙美子さんは白です。それは見たので間違いないです。」

丞は、確かに人狼ゲームに慣れないとこんな風には考えられないかもしれないと、頷いた。

「分かるよ。オレだって納得しそうになってたからな。もっとよく考えないと…占い師の内訳はどう思った?」

香織は、顔をしかめた。

「そうですね…本当にまだ分からないの。陽太さんの正直な意見は白いなあと思いました。菜々子さんは便乗に見えました。寛さんは思わず信じてしまいそうになるけど、意見が強過ぎて逆に流されてそうで怖い。だから、相方は陽太さんかなって今は思っています。」

香織ちゃんの意見も素直で白く見えるなあ。

陽太は、思って聞いていた。

悠斗は、何やら心配そうにそれを見つめている。

でも、ここは皆まだフラットに見ておかないと、と、陽太は悠斗のためにも香織を信じたくなる気持ちをグッと抑えた。

丞は、フッと肩の力を抜いた。

「…まあ、この感じだとどうしても秩序立って考えていると感じる律子さんの意見を採用したくなるが、ここはまだ最初だしフラットに考えた方がいいだろうな。狼だったとしても、村人より色が見えてるからそれらしい意見は言えるものだし。」

藍は、心配そうに言った。

「律子さんはそんな感じには見えないけどね。だって、その時その時に思ったことを言ってるだけに見るし。そもそも、村にきちんと考える材料と、考え方を教えてるんだもんね。僕としては、律子さんが噛まれたりしないか心配だな。」

すると、律子がそれほど焦った様子もなく頷いた。

「それこそ、私が間違っていなかったという事だと思うわ。先では分からないけれど、今夜は特に。何しろ私は完全グレーで噛まれ位置では絶対にない。それでも噛んで来たという事は、私が邪魔だということで、私の言っていることが間違っていなかったという証明になると思うの。なので、今日に限っては私を噛んで来たら私が言った事を思い出して。私が疑った先を吊って行けば、勝てるのではない?」

そう、律子は噛まれ位置ではない。

狩人を探したのかと思われるかもしれないが、初日にここまで目立つ意見を出す狩人など居ないだろう。

噛まれたら、村に貢献できないからだ。

それに、今夜はどう考えても二人居る確定霊媒師を噛めたら噛みたい局面だろう。

できるだけ早く数を減らしておかなければ、霊媒師が居る限り狼は黒を打てないからだ。

忠司が、言った。

「普通に考えたらグレーを噛んでる場合じゃないしなあ。グレーが減ったら狼だって詰むのが早くなるし。そう考えても、オレ達霊媒師を噛んで来るのが普通だろ?狩人の腕の見せ所じゃないか?」

律子は、フフと笑った。

「狼は、そうでなくてもグレーは噛めないと思うわ。グレーに潜伏しているのは、何も狩人だけではないのよ。」

言われて、皆はハッとした。

そうだ、猫又が居る。

今日、お告げ先になっているとは限らないのだ。

まだグレーの中に残っている確率が、限りなく高かった。

「…猫又か。」健が言って、笑った。「確かに。律子さんは頭がいいな。君と深く話してみたくなったよ。他にも分かったことはないか?」

律子は、首を振った。

「いいえ。それは仮説ならたくさん最初に役職が出た時に立てましたけれど、全て仮説ですから。普通なら確信が持てるまで黙っているものですの。さっき、その仮説の一つを口にしたのは、寛さんがあまりに村人を馬鹿にしたような言い方をなさったから。少し腹が立ってしまって。意地悪でしたわ。申し訳ないと思います。」

あれで腹が立っていたのか。

表向き、落ち着いて見えたので、そんな風には全く思えなかった。

つまりは律子は、あれは数ある仮説のうちの一つでしかない、と今言った事になる。

寛が、少し控えめに言った。

「それは…オレも悪かったと思っている。つい熱くなってしまって。ただ、村が気付いていないことを自分が気付いている、と公にしたかっただけなのだ。馬鹿にしていると言われたらそうだったかもしれない。少し、考え直して議論を進めて行くつもりだ。」

律子は、頷いた。

「そうして戴けたら助かりますわ。私も、人間ですから。腹も立ちますし、だったらこの人が人外だって、思考ロックもしたくなるし、それに沿った仮説を採用して意見を出すようにしてしまいますから。皆さん、あくまでも議論は冷静に。皆に分かる形で話しましょう。あまり殺伐とすると精神的につらくなりますわ。」

健は、何度も頷いた。

「その通りだ。」と、立ち上がった。「とりあえず、朝はこのくらいでいいか。あまり最初から詰め過ぎると皆疲れて来るだろう。リフレッシュして、考えをまとめてまた午後からでも集まったらどうだろう。」

丞は、時計を見た。

あれから一時間半経っているが、まだ朝の時間だ。

それでも、最初はこんなものだろうと頷いた。

「…じゃあ、次は13時からにしよう。昼ご飯を済ませて、13時にここへ集まってくれ。それまでに、あちこちで議論を交わすのはいいと思う。その結果を発表してくれたら助かるし。いずれにしろ、夜には絶対に誰かに投票しなきゃならないから、みんなで頑張ろう。」

ってことは、あちこち情報を集めて来いってことだな。

陽太は、思った。人外たちが集まって何かコソコソ話すのも、皆の視線があって難しいという事になる。

完全防音の部屋の中なら会話を聞かれる事もないが、そこへ集まっているのを誰かに見られたら、それだけで怪しまれることになるだろう。

丞のそんな思惑が透けて見えて、陽太は何となく人外が気の毒に思え、自分が真占い師で良かった、と心底思っていた。

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