一日目の朝の会議
そうやって時間を過ごして、8時が近くなって来て、あの部屋にはトイレが無かったので先にこちらのトイレで用を済ませて、三人は投票ルームへと向かった。
すると、そこにはもう数人が来て座っていて、居心地悪そうにしていた。
何しろ、椅子がどこまでも遊園地のフリーフォールにでも乗っているような、そんな硬い大きなすっぽりとしているものなのだ。
もちろん背面は垂直に近く、長く座っているのはつらそうだ。
それを見た陽太が、顔をしかめた。
「ここは投票前にして、あっちの船首のラウンジに方で会議をしたらいいんじゃないか?」
レストランとはここを挟んで逆方向にあるそこは、とても広くて海が見渡せるそれは良い部屋だったのだ。
芙美子が、言った。
「そうね。確かに。投票時間前の時だけここに来たらいいわよね。座り心地が良くないから、長引いたら疲れるしお尻が痛くなるわ。」
それを聞いた、丞が頷いた。
「だな。じゃあ居間へ移ろうか。」と、立ち上がった。「みんな、居間へ。」
ぞろぞろと、皆で一旦外へと出て、船首の方へと歩いて行く。
すると、海風に吹かれて見えた海の向こうに、何やら小さな島が見えた。
「あれ、島がある!」
陽太が言うと、皆が足を止めた。
確かに、遠く小さな島が見えた。
それは、どんどんと大きくなって来ているが、どうも本当に小さいようで、見えるのはその島にある、大きな洋館のようなもの一つだけだった。
その洋館で島のほとんどの面積を使っているのような感じなので、かなり小さいと思えた。
「あの島に向かってるのかしら。」
律子が言う。
芙美子が、首を傾げた。
「でも、多分船からは降りないんじゃない?だって、船から下せないって言ってたでしょ?海の真ん中に浮いてるわけにも行かないから、係留でもするんじゃない?」
そんな話をしている間に、どんどんとその島が近付いて、芙美子が言った通り、船はその近くに止まった。
これ以上は近づけないのは、この船が大きいので船底がついて座礁してしまうからだろう。
「泳いで行けそうだけどね。」
睦が言う。
だが、藍が首を振った。
「止めた方がいいよ。だって、この辺りって多分サメとか居るよ?なんか小さいし誰かの持ち島なんじゃない?あの上にある大きな洋館しかなさそうだしね。」
太平洋だからサメも居るだろう。オレなら泳いだりしないけど。
陽太はそう思って、居間へと入った。
それを見て皆がそれに続き、その居間の座り心地の良さそうなソファにそれぞれに座り、皆は向き合って会議を始めることにした。
皆が座ったのを見て、藍が言った。
「ねえ、誰か引っ張って行く人が必要だよね?共有者ってもう話し合いついてるの?どっちか司会してくれないかなあ。」
芙美子が、言った。
「共有者もだけど、占い師とかも出て欲しいわよね。初日のお告げを持ってるわけでしょ?」
ここは様子を見ようかとも思ったが、どうせ出るから早く出ておこうと陽太が手を上げた。
「はい。オレ占い師。4番藍が白。」
すると、慌てたように菜々子が言った。
「はいはい!私も占い師!永人さんが白!」
すると、落ち着いた様子で寛が手を上げた。
「私も占い師だ。2番悠斗が白。」
香織が、躊躇うように言った。
「え…占い師って二人よね?私が占い師。芙美子さん白よ。」
げ、四人かよー。
陽太は思ったが、この中に真占い師が二人。
自分と、あと一人は誰だろう。
それを聞いた、丞が言った。
「よし。じゃあオレが出るよ。共有者だ。相方には潜伏してもらうから、オレが村をまとめて行くな。じゃあ占い師がいっぱい出たから整理しとこう。1番陽太が4番藍に白、10番菜々子さんが5番永人に白、14番寛さんが2番悠斗に白、13番香織さんが9番芙美子さんに白だ。で、どうする?ここに人外が二人出た。霊媒師は出すか?」
「まあ、盤面が見やすくなるよね。」藍が言う。「全部出しておいた方が、整理しやすいとは思うよ。霊媒師が多かったらそこからローラー掛けたらいいし、占い師は初日は様子見かな。みんなはどう思う?」
寛が言った。
「そりゃ、占ってしまっても困るから出ておいてくれた方が助かるけどな。霊媒師も二人居たんだっけ?」
丞は頷いた。
「そう。占い師二人、霊媒師二人。」と、皆を見回した。「霊媒師は?もう狩人と猫又以外はフルオープンで行こう。」
狩人が守り先に困らないか。
陽太は思ったが、共有者が言うのだし黙って見ていた。
すると、二人が手を上げた。
「「はい!」」
同時だったので、声を上げた二人は顔を見合わせる。
愛美と、忠司の二人だった。
「他には?潜伏しててもいいことないよ。明日以降出て来たら、偽物だって思うからね?」
皆、お互いに顔を見合わせている。
結局、誰も声を上げる事は無かった。
「やったあ!確定だ!」と、愛美が、嬉しそうに忠司を見た。「忠司さん、よろしく。一緒に霊媒師がんばろうね!」
忠司は、確定したのかと明るい顔をした。
「おう!てっきりローラーされると思ってたよ。ラッキーだな。」
人外が、霊媒には出なかった。
陽太は、眉を寄せた。
という事は、占い師の人外二人の内訳はどうなるんだろう。二人とも、もしかしたら狂信者と背徳者なのか。
なぜなら、今忠司が言った通り、霊媒師は複数出るとローラー対象になってしまい、狼や狐が出るとまずい事になるため、出られないからだ。
占い師に白人外が出て居たら、なので霊媒師には誰も出られないという事になる。
丞は、顔をしかめた。
「霊媒師だけでも確定してくれて良かったけど、こうなって来ると占い師が大事になって来るぞ。人外の露出が少ないってことだから、占い師に探し出してもらわないと。」
「占い師は呪殺ができるわ。」律子が言った。「占い先を今夜から二人指定して、その中から占ってもらって真占い師を確定させられるようにしましょう。つまり、狐探しを優先して占い先を指定するの。もし占い師に狐が居ると皆が思うなら、相互占いをさせたりね。とにかく、真占い師を一人でも確定させるのが先決よ。それによって色が透けて来るから。」
律子は、淡々と言った。
落ち着いていて、29歳だと言っていたが、もっと穏やかで年上の印象を受ける。
だが、見た目は間違いなく若かった。
丞は、頷いた。
「確かにそうだな。呪殺ができるのは真占い師だけだ。少しでも早く真占い師が一人でも確定したら、村有利に事が進むしな。それに霊媒師が確定したのも強い。黒が出ても吊ったら次の日、どっちか一人だけでも生き残るから絶対に色が分かるんだ。」
人外は、どういうつもりで出て来なかったんだろう。
陽太は、思った。
騙りに占い師だけでは弱い。何しろ、黒がなかなか打てなくなるからだ。霊媒師が二人も居るこの村では、一人を噛んでももう一人が残ってしまう。
つまり、人外には黒が出しにくくなるだろう。
「今日はグレー吊りにする?」芙美子が言う。「白が四人居るけど、狼だって初日に全員囲えるわけじゃないし、まだ人外が残ってるはずよ。丞さん、整理してくれない?」
丞は、頷いた。
「よし。じゃあ只今のグレーは…」と、手に持っているノートに、せっせと書いた。「ええっと、太成、郷さん、彩菜さん、睦、律子さん、健さん、大和、保、克己の9人だ。もちろん、この中に狩人と共有の相方も居るかもしれないし、その人たちにはできるだけ白くなって欲しいと言っておく。今日はこの中から吊って、残った中から占い先指定もどうするか考えようか。狐だが…最初に処理しないと安心して狼が吊れないからなあ。」
それにも、律子が言った。
「狐は占われたら消えるから、きっと囲われているか占い師に出ているかどちらかだと思うわ。完全潜伏はリスクが高いからあり得ないと思うの。でも、真占い師は確定したら次の日ぐらいまでしか生きられないと思うから、いつのタイミングで相互占いをするのかは村が決めて行ったらいいと思う。」
若いが、サクサクと意見を言う。
丞は、頷く。
「そうだな。占い先は、投票の後に誰が吊られたかで決めよう。じゃあ、とにかく今日はグレー吊りで考えるから、グレーの人達には話してもらおうか。ええっと、じゃあ番号順だから太成から。」
太成は、緊張気味にしていたが、頷いて顔を上げた。