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前夜も更け

1陽太

2悠斗

3太成

4藍

5永人

6丞

7郷

8彩菜

9芙美子

10菜々子

11睦

12律子

13香織

14寛

15健

16愛美

17大和

18保

19忠司

20克己

しおりには、こういう風に名簿が書かれてあった。

どうやら最初から番号は決まっていたようで、皆のしおりは全部同じように印刷されてあった。

つまりは、腕輪もしっかり番号通りに渡されていたということで、ここへ案内してくれた男は、全員をきちんと見分けていたのだろうと思われた。

…確かに申込書には、顔写真も添付しなきゃならなかったなあ。

陽太は、思って缶ビールを手にしおりをパラパラと見ていた。

視界の端では、悠斗がやはり香織と隣り合わせた席に移って、彩菜と楽し気に話していた。

みんな食べ終わって、ソファや別の椅子へと移って、それぞれに気の合いそうな人達と集まって話しているようだった。

陽太は太成と、なぜか藍、睦と大和と保が側に来たので、その六人で一緒に居た。

誰がどの陣営なのか、今は全く分からなかったが、自分の占い師の仲間はいったい誰なのだろう。

陽太は、そんな風に思って皆の会話を聞いていた。

藍が、あちらで二人で何やら話している、寛と健を見て小声で言った。

「…なんかさ、あの二人感じ悪い。ステータス持ってる、みんなとは違うって感じで。お金のためじゃないって強調してるみたいで、僕、あんまり馴染めそうにないんだ。」

陽太は、チラとそちらを見た。

確かにみんなの印象は藍と一緒なのか、他の人達の輪からは外れているようだ。

あの郷でさえ、何やら芙美子に言われながらも輪に入っているようなのだ。

芙美子はあれで、面倒見のいい性格のようで、ダメな男に引っ掛かると言っていたがああいうタイプが放って置けなくて好きなのかもしれない。

大和が、同じように声を落として言う。

「…オレ達だって、ほんとは会社員だって言うだけのつもりだったんだ。でも、なんか感じ悪いからあなた達だけじゃないぞって意味も込めて、会計士って言ったんだ。会計士だってそれなりに大変なんだよ?なるの。まあお金に困ってないのはほんとだけど、あそこまで言うつもりじゃなかったんだ。あの、お前達とは違う感が腹立って思わず言ったけど。」

保も、何度も頷いた。

「だよね。まあ、ゲームが始まったら吊り先に迷わなくていいんじゃない?ほら、みんなここで吊ったらお金がなあ、って遠慮しがちだけど、あの人達ならいいじゃないか。自分から進んで言ってくれたんだし、ラッキーだと思おう。」

陽太は頷きながら、初日のお告げ先があの二人じゃないように、と祈っていた。

皆に恨まれるからだ。

藍が、ため息をついた。

「まあ、いいんじゃない?浮いてるのは確かだし、初日って怪しい所も分からないことが多いでしょ?遠慮なく使わせてもらおうよ。」

皆が、頷く。

すると、芙美子がこちらへ歩いて来て、言った。

「ねえ、そろそろ片付けたほうがいいわ。もう8時だし、10時までに部屋に入らないといけないんでしょ?今律子さんにゴミ袋を取りに行ってもらってるの。手分けしましょう。」

確かにこれだけ散らかしたら片付けるのに時間が掛かりそうだ。

皆は、立ち上がった。

「じゃあ洗い物でもするか。」

陽太が言うと、芙美子が首を振った。

「あなたはいいの、座ってて。料理してない人達でやろうって決めたから。取り皿は紙皿だったし、そんなに掛からないわ。私達でやるから。」

芙美子は、そう言って戻って来た律子からゴミ袋を受け取って、何やらみんなに指示しながらゴミ袋を配り始めた。

どうやら芙美子は根っからの世話好きのようだった。

回りが騒がしくなってきて、いくら座っていろと言われても気になって仕方がない陽太は、藍と一緒に空き缶を集めて回り、結局片付けにも参加したのだった。


そうして、綺麗に片付け終わったので、皆はそれぞれの部屋へと歩きだした。

郷が飲みすぎてフラフラだったので、部屋が近い永人と丞が手を貸して、何とか階段を登って部屋へと押し込んだ。

陽太も同じ階なので一応一緒に見届けたが、顔をしかめた。

「あの人、役職持ちじゃないよね?11時までに復活すると思う?」

すると丞が答えた。

「ま、頭はハッキリしてるみたいだったよ。酔い切れないって言うの?足元はフラフラなのに、頭はハッキリしてる、みたいな。何の役職か知らないけど、ちゃんとゲームやってくれないと追放になりますよ、って言ったら、分かってる、ってしっかりした目で答えてた。なんか、いろいろあるみたいで。あの人もなんか引きずってるんだろ。」

確かにむっつりと黙っているタイプっぽかったが、酒を飲むことで何とか皆と話しているように見えるかと言われたらそうだ。

何があったか知らないが、離婚するのだからそれなりの修羅場をくぐったのだろう。

自分は人生経験が浅いのでよく分からないのだが、陽太は勝手にそう理解しようとした。

端へと歩いて行くと、太成が悠斗を呼び止めた。

「そういや悠斗、お前よろしくやってたな。邪魔したらと思って離れてたけど、ずっと香織ちゃんと彩菜さんと話してただろ?どうだった?やっぱりいい子だったか?」

悠斗は、少し厳しい顔をしていたが、頷いた。

「ああ…めっちゃいい子で。オレ、マジで好きになるかもしれない。」

陽太は、驚いた。

「え、マジで?すごいな、こんなところで運命か?」

少しからかうように言ったのだが、悠斗はニコリともせずに言った。

「まあ…そうかな。」

そして、扉を開くとさっさと中へと入ってしまった。

太成が怪訝な顔を陽太に向けて来て、陽太も訳が分からない顔をした。

「なんだあれ?なんでいい子を見つけたのに深刻な顔してるんだ?」

太成は、肩をすくめた。

「さあ?なんだろうなあ、あいつは。あんな風なの初めて見たよな。」

真剣に恋したらああなるんだろうか。

分からなかったが、二人は意味が分からないながらも、そのまま各々の部屋へと入ったのだった。


その夜、サッと風呂に入って寝間着にするつもりで持って来たスウェットに着替えると、陽太は腕から離れないその銀色の腕輪をじっと見つめていた。

完全防水なのか、風呂で水に浸かっても全く問題はないようだ。

もうすぐ11時、占い師の陽太には、お告げ先が現れるはずだった。

じっと小さな時計のデジタル表示を見ているとデジタル表示が11:00となった途端、あ、なったと思う暇もなく、パッと腕輪の液晶画面に文字が現れた。

『№4は人狼ではありません』

とそこには書いてあった。

…4…4…は誰だ。

名簿を見ると、そこには藍、と書かれてあった。

…やった!藍は村人だ!

陽太は歓喜したが、だがよく考えたら狂信者も背徳者も白が出るはずだった。

それでも、藍は信じて行こう、と思いながら、側の備え付けのメモ用紙に立っていたペンでサラサラと4藍は村人、と書いた。

そして、ホッと息をつくと、初日の仕事が終わったとばかりにベッドへと沈んだ。

「はあ~なんか疲れたなあ。」

窓の外の景色は、真っ暗で代わり映えしない。

陽太はホッとして、そのまま目を閉じて眠りの世界へと入って行ったのだった。

辺りはあり得ないほど静かで、扉の外で人狼たちが動き回っていることも、陽太には全く気取れなかったが、しかしゲームは静かに進んでいたのだった。

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