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狼の話4

「どういうことだ!!」寛は、激怒して言った。どうやら、騙されていたのが許せないらしい。「あいつが狐だって?!呪殺?!」

オレは、怒り狂う寛に向かって、頷いた。

「落ち着いてくれ。これはチャンスだ。」寛が、ゼエゼエと息を上げてこちらを睨むのに、続けた。「明日、必ず呪殺が起こる。寛さんは陽太、陽太は香織さんを占う。狩人は、昨日陽太を守っているはずだ。今夜は、陽太が噛める。二死体が出る…どっちが呪殺したのか、分からなくなる。」

寛は、それを聞いてピタと止まった。

そう、寛が陽太を呪殺したように見せかけることができる上、陽太を上手く処理することができる。

いつか寛も吊られるだろうが、どちらが真なのか分からなくなるのは強い。

右往左往している間に、間に合わなくなる可能性が上がって来るのだ。

何しろ、陽太の結果がこれ以上落ちないのが何より大きいだろう。

寛も、同じことを思ったのか、しばらく息を上げていたが、次第に落ち着いて来て、言った。

「…オレを騙してたのは腹が立つが、まあいい。分かった、結果的に真占い師が二人とも処理できるんだ。陽太を噛もう。オレが吊られるかもしれないが、村目線ではまだオレの真も切れないはずだ。君が残っていても、オレが真なら君達は狂信者と真でしかなく、グレーを処理して行くしかない。恐らく悩むだろう。それで行こう。」

オレは、頷いて寛を見た。

「それから、オレも克己と同じ戦法で行く。」寛が眉を寄せると、オレは続けた。「香織ちゃんが死んだのを、悲しんで世を儚んでるふりをする。そうしたら、会議に参加せずに済む。克己ほど極端にはしないけどな。オレは生き残らなきゃならないし。村に情報を与えないのが一番いいんだ。だから、明日は一人で頑張ってくれ。」

寛は、段々にオレの考えが浸透して来たのか、力強く頷いた。

「任せてくれ。一日でも長く生き残るようにするが、死んだ方が良さそうなら素直に吊られる。君が残るのが大事だ。とはいえ…狂信者は、いったいどこに居るんだ?いくら完全潜伏とはいえ、やり過ぎだ。オレ達にも分からないなんて。」

それは、オレも思った。

睦がそれらしい気がもするが、どうも違う気もする。

だが、他に誰かと言われたら、郷はどう見てもこちらに対して攻撃的だし、藍は完全に陽太寄りでそうではないだろうと思う。

いったい、誰が狂信者なのだ。出て来てくれないと、戦略も詰められない…。

オレ達は、ずっとまだ見ぬ狂信者に、イライラしながら探していたんだ。

そうやって、その日は陽太の番号、1を入力し、そしてオレ達は結果を待って眠りについた。

香織ちゃんが死ぬのは分かっていたが、もうどうやってみんなを騙そうとそれしか考えてはいなかった。


次の日、やはり香織ちゃんは死んだ。

オレ達目線では当然のことだったが、問題は陽太だった。

だが、あっさり陽太も死んで、思惑通りに二死体が出て村は混乱することになった。

陽太は白かったが、その白さを狐ゆえだと言われたら、皆分からなくなるだろうと思っていたが、限りなく上手く行った。

オレは、宣言通り香織ちゃんの部屋に籠って悲しんでいるふりをしながら、ずっと狂信者の位置を考えていた。

大和は違う。何しろ克己と保を追い詰める原因を作ったのはあいつだ。

藍は陽太陽太で狼が見えてるようには見えなかった。

郷さんは初日から芙美子さんに纏わり付かれて、それを受け入れていたし秘密を持っている人外には見えない。狼ならあり得るが、狂信者は占われても白しか出ないのでそこまで共有に媚びる必要はない。

既に死んだとしても、太成が狂信者ならもっと黒く死んでくれた方が助かった。

律子さんは大和と同じで寛と対立軸を形作っていた筆頭だ。彩菜さんは背徳者。

だとすると、もう睦しか考えられなかった。

睦は、バランスを取ると言いながら、ここまで極端に陽太寄りだった村を何とか寛も真かもという意見を残して進めることに成功していた。

実際、かなり助かっていたのは確かだ。

オレ達は、既に三日目には二人きりで、狂信者の位置も見えず、かなり追い詰められていたからだ。

それでも、両方が成るように考えてくれるのはほんとに助かった。

村は、寛と陽太、両目線でのグレーである、大和を置いておくことはできないだろう。

いくら白くても、盤面上置いておくことはできない位置だった。

丞はかなり悩んでいたが、結局大和吊りを選択した。

大和は吊られた。

もう噛み先は決まっていた。

何を言っても結局寛は吊られるだろうが、オレは敢えて猫又吊りを推した…その時点で猫又ローラーしていたら、あっさり村は勝っていたかもしれない。

最後に残るなのは寛だからだ。村の選択は迷うことなく寛になり、最終日困らないだろう。

だが、オレの意見など通らないのはもう、知っていた。

わざと投げやりな態度を取って、村に情報は落とさないで、分からなくするのが狙いだった。

寛には、何も言っていなかったが、あいつはオレを残そうと思ったんだろうな。

オレを怪しんで、オレに投票までしていたのは、やり過ぎだろうとは思っていたよ。

どちらにしろ、寛も吊られてオレは一人きりになった。

狂信者の位置は分からない。

そうなってもまだ出てこないことから、もう既に死んでいるのか、それともこっちに協力する気がないってことだ。

オレは覚悟を決めて、何がなんでも最終日までは生き残ろうとその日は丞を、たった一人で襲撃した。

部屋を出ることもしなかった。


猫又精査は、オレが吊れと言えば言うほど、吊られたくない健が怪しくなるのは見えていた。皆がそういう反応をしていたからだ。

急に姿勢を変えるのはおかしいし、オレはその姿勢を貫いた。

郷さんが、やたらとオレを吊りたそうだった。

その時、オレは思った。

もしかしたら、郷さんが狂信者なのではないかと。

そう、色が見えているように見えたのだ。

郷さんは、確かに白いが誰を吊れとは、決してハッキリ言及しなかった。

村の意見に忠実で、芙美子さんと一緒に考えているふりをしていたように思えた。

それでも、郷の意見は村には通らなかった。

あまりに芙美子さんと一緒だったので、逆に怪しまれたんだ。

その郷が、オレを吊り推せば逆に吊られなくなるのに、郷さんは足掻いていた。

狂信者がなぜそんなことをするか?

オレには分からない。

とっくに怪しまれているのは知っていて、自分を最終日に吊らせるためなのか、何なのかはオレには分からなかったが、それでも郷さんぐらいしかもう、しっくり来る位置がなかった。

そのわけが、分かったのは健さんが吊られた直後だ。

郷さんは、オレを噛めと言った。

色が見えているぞと。

噛み筋から行くと、次は芙美子さんだ。

オレは思った…郷さんは、ただ芙美子さんを死なせたくなかったのだ。

だから、人外であるにも関わらず、狼に協力せずにここまで来た。

だが、せめてもの役割として、狼位置を村に言及することはなかったのだろう。

だが、ここまで来たら分からない。

最終日、オレの偽が確定する。

その時に、郷さんの票はオレに入るだろうし、狂信者だと言い出すかもしれない。

オレは、迷った。

どちらを噛もうか、と。

郷さんは今にも芙美子さんに打ち明けているかもしれない。そうなると誰が道連れにされるのか分からないのに、白い誰かと芙美子さんが残った時、オレは吊られる。

ならば郷さんを残したらどうなるか。

郷さんが狂信者だと言えば言うほど狼に見えるのでは、と。

オレが狂信者として、あまり抵抗しないまま吊られるふりをしたら、結局郷さんが吊られるのではないか、と。

オレは、芙美子さんを襲撃した。

郷さんが狂信者であることに賭けて、残れば黒塗りできるだろうと踏んで、郷さんを残した。

だが、結果は、君たちも知っての通り。

郷さんが、健の道連れになって死に、オレの思惑は外れた。

最後の望みは、睦が狂信者であったことだが、郷さんでしっくり来ていたオレは違うだろうと思っていたよ。

だから、あきらめた。

郷さんには完敗だ。

自分の勝利のために、香織ちゃんを売ったオレとはえらい違いだ。

まだ分からないが、君たちは狂信者じゃないんだろ?

だったら、もう郷さんしか居ない。

郷さんは、芙美子さんのために、芙美子さんを勝たせるために潜伏して村人を演じきったんだ。

自分の命を差し出して、芙美子さんを助けたんだろう。

だから、もういい。

今夜はオレを吊ってくれ。それで、このゲームは終わりだ。

やっと終わるよ。

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