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三日目朝の会議2

シンと静まり返った中、悠斗が言った。

「…いや、それはおかしいな。」皆が、悠斗を見る。驚いたことに、また香織の隣りに座っていて、香織も悠斗を嫌がっている素振りはなかった。「オレは恐らく最後尾だったが、香織ちゃんと二人で寛さんの背を見ていたんだ。別に怪しい動きはしてなかったけどな。」

え、と皆が香織に視線を向ける。

香織は、頷いた。

「…ええ。寛さんは気付いていなかったけど、一番最後に入ったのは私と悠斗さんだったの。だから、寛さんより後ろに居たのよ。でも、別にメモ帳を何かしている感じじゃなくて、ブラブラ奥へ歩いて行って、気付いたって感じだった。」

悠斗は寛の白なので仲間なのではと思われたが、香織は寛の対抗だしまだ相方なのかも分かっておらず、寛が狼なら真か狐だろう。

狼を庇うことは、無いはずだった。

芙美子が、驚いた顔をした。

「え、ということはやっぱりあのメモは、いつからあったか分からないけど、寛さんが仕組んでないってこと?」

悠斗は、頷いた。

「オレ達にはそう見えたけど。」と、律子を見た。「もしかしたら、律子さん、郷さん、芙美子さんがのうち何人かが同陣営で、寛さんを嵌めようとしてるんじゃないのか?」

丞は、首を振った。

「それはおかしい。現に芙美子さんと律子さんには香織さんから白が出ていて、郷さんには陽太から白が出ている。香織さんが偽物ってか?」

言われて、香織は表情を硬くした。

悠斗は、首を振った。

「違う。白人外だって居るしな。村人だって惑わされてる可能性もある。だから、この中に混じって煽ってる人が居るんじゃないかって言っているんだ。」

皆が、顔を見合わせた。

律子なら、それができるからだ。

律子は頭がいいし、言葉が豊富で分かりやすく、つい、信じてしまいたくなる。

誘導されていると言われたら、そう思えるからだ。

丞は、眉を寄せた。

「…仕方ない。とにかく、オレとしても忠司の結果はなかったと思って進めることにするよ。律子さんを信じた訳じゃない。郷さんと芙美子さんの証言でも、襲撃された後は荷物を片付けているのは確かなんだろう。これが終わったら他の人達の部屋も見て来とく。寛さんが、そんな見付かったらまずいことをするとも思えないし、他の誰かがやったのかもしれないしな。彩菜さんは、白黒どっちか分からなかった。それで良いだろう。話を進めよう。」と、陽太を見た。「陽太は?今夜はどこを占いたいと思う?」

陽太は、答えた。

「吊り先次第だと思っていたが、太成は香織さんの黒だしとりあえず置いておいて…」と、見回した。「…グレーに色をつけていきたいけど、黒っぽい人がほんとに居ない。もしどうしてもなら、今の話で同陣営かもしれない悠斗と香織さんかな。この二人のどちらかに色をつけたら、もう片方も色が分かりそうだ。それで白が出てもオレはもう片方も占うとは言っておく。なぜなら狂信者が混じっているかもしれないからだ。」

丞は、頷いた。

「そうだな。占い師の内訳が分からないもんな。今のところ、霊媒には騙りがなかった事から占い師には狂信者が出ていると考えた方が自然だ。そう考えると…どうなるんだ?」

律子が言った。

「その二人を怪しんで占い師に狂信者が出ているのなら、悠斗さんが狼かもとは思えるのだけど、それなら多分狐陣営になる寛さんを庇う理由が失くなるわ。」皆が律子を見た。律子は続けた。「今の寛さんを庇った事がおかしいのなら、見えるのは寛さん狼、香織さん狂信者、悠斗さん狼の内訳ということになるわ。だったら狐はどこ?…狼には見えているのかしら。」

言われてみたらそうだ。

だが、そんなに分かりやすい動きをするだろうか。

そもそも、狐は?

「…分からなくなってきた。」藍が言った。「確かにそうなんだよ。でも、分かりやす過ぎる。悠斗と香織さんが寛さんを庇うメリットがない事から、同陣営なのか、それともただ見たままを言っているのか分からないんだよね。こう見られるのが分かってるんだからさ。」

芙美子が言った。

「律子さんと寛さんが別陣営なのは分かるわ。というか、お互いに分かっていない村なのかも知れない。」

律子は、言った。

「仮説を立てるの。」律子は、虚空を見つめた。「…仮に寛さん悠斗さん狼、香織さん狂信者だった場合。真占い師は陽太さんと菜々子さん。二人の白先、藍さん、睦さん、郷さん、永人さん、大和さんは人外ではない。克己さんは菜々子さんの黒で狼。そして恐らく彩菜さんは白。つまり、狼目線では自分達が囲ってしまった中、もしくは彩菜さんが狐だったと考える。でも…香織さんは朝、彩菜さんは白だったと主張していたわね。それを身内切りと取るか、ただ友達を殺されて憤っての事なのかは分からない。でも、狼陣営ならばそこで切る必要はないはず…それに、彩菜さんが狐なら、背徳者はどこに?噛まれたのは霊媒師だけ。吊られたのは狼。背徳者が死んでいないことから、彩菜さんは村人か、あって背徳者ということになる。」

律子は、そうやって考えるのか。

皆が思いながら律子の話を聞いていた。

律子は、ため息をついた。

「…分からないわ。香織さんの行動が狂信者っぽくないのよ。狂信者なら、もうとっくに狼と繋がっているはずだけど、昨日は悠斗さんとも距離を置いているようだったし。今日になって一緒にいるのは、彩菜さんを失って心細いからのように見える。狂信者なら、仲良くしておいて、郷さんと芙美子さんのように、一緒に居ても誰も怪しまないように持って行く方が有利だもの。だとしたら、やはり悠斗さんが狼ではないのかもとも考えられるわね。」

太成が、言った。

「だったら、香織さんは狐だ!」皆が驚くと、太成は続けた。「寛さんは知らない。でも、オレ目線じゃ絶対に偽物だから、狼と繋がらないなら狐だよ!」

太成目線では、今の話を聞くとそうなるのか。

寛が、言った。

「だったらオレが今夜香織さんを占う。」皆が寛を見た。寛は続けた。「偽扱いされるのは真っ平だ。呪殺を出せば信じるんだろう?占って確かめる。村目線でも、オレが呪殺を出したら助かるんだろう?」

それはそうだが、寛は今真目が下がっている。

一番良いのは、恐らく陽太に占わせる事だろう。

芙美子は、言った。

「…それはダメよ。」皆が芙美子を見ると、芙美子は険しい顔で言った。「噛むかもしれないじゃない。真か狂信者だったらそこで切ってもいいもの。信じられないわ。」

律子が、言った。

「…いえ、占ってもらいましょう。」皆が驚いた顔をしたが、寛も驚いた顔をした。「仮に寛さんが真なら、狐は溶けるから村としては助かるわ。私も思考の更新ができる。偽物なら…狐は噛めないわ。真で狼が噛み合わせて来ても、背徳者が生き残っているのか分からない今、狼のもくろみは村に透ける。とにかく、一度試してみるの。その代わり、そうなると占い師同士の相互占いになるから、菜々子さんか陽太さんが寛さんを占って、香織さんは菜々子さんか陽太さんを占う。今日は全員がグレーに戻ったんだから、その中から自由投票にしましょう。ラインも見えるし一石二鳥よ。」

すると、芙美子が立ち上がった。

「そうしましょう。」と、言った。「私は、共有者よ。」

皆が仰天して芙美子を見た。

丞を見ると、丞は渋い顔をした。

「…まあ、狩人には話してあったんだけどな。そうだよ、芙美子さんがオレの相方だ。オレ達は、共有者だ。」

郷は、顔をしかめた。

「…いいのか?」と、心配そうな顔をした。「最後まで潜伏してろって言ったろ。」

郷は知っていたのか。

あれだけ側に居たら、それは芙美子なら言うだろう。

芙美子は、頷いた。

「覚悟を決めなきゃ。私は平気よ。」

郷は、気遣わしげな顔をした。

「…どこも吊るとこが見付からないなら、オレを吊れ。」みんなが仰天した顔をすると、郷は言った。「オレは狼じゃない。狐を処理するまでに狼が全部居なくなったら狐勝利になっちまう。だったら、オレなら必ず村は続く。今、処理されてるのは恐らく二人の狼だろう。後一人ぐらいなら間違って吊っても大丈夫だが、今日明日と吊っちまったらまずい事になる。真占い師の呪殺が出るまで、なんとかバランスを取って行かなきゃならねぇんだ。」

芙美子が、とんでもないと首を振った。

「ダメよ!村柱はまだ先でも大丈夫なはずだわ!だったら私を吊って!確定村人なのよ?!村は存続するはずよ!」

郷は、首を振った。

「今も話したろ。グレーを減らす事が村有利になる道なんだ。真占い師が占わなきゃならねぇ場所が減る。お前は残らなきゃ。克己と彩菜さん、どっちも黒だったら後が無いんだぞ?だから太成だって吊らねぇのに。」

芙美子は、唇を噛んだ。

丞は、それを見て、言った。

「…オレは、明日占い師の中に黒が出る事に賭ける。」と、陽太を見た。「最初の印象を信じるよ。陽太、君が占い師の中で狼陣営だと思うのは誰だ?」

陽太は、困惑した顔をした。

「今のところ…寛さん。次に菜々子さん。香織さんは人外でも白な気がするから。太成黒に納得が行かないし、真だとは思っていないから、相方が菜々子さんだとしたら寛さんになるかな。」

陽太は、頷いた。

「だったら今夜は寛さんを占うんだ。君は必ず生き残るから。狩人は生き残っているから。問題ない。」

オレに護衛を…?

でも、そんなことをしたら共有が…。

陽太は思ったが、何も言わなかった。

重苦しい沈黙が流れた。


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