二日目の終わり、そして朝
1(陽太)→8(彩菜)
2(悠斗)→8(彩菜)
3(太成)→8(彩菜)
4(藍)→8(彩菜)
5(永人)→8(彩菜)
6(丞)→8(彩菜)
7(郷)→8(彩菜)
8(彩菜)→14(寛)
9(芙美子)→8(彩菜)
10(菜々子)→8(彩菜)
11(睦)→8(彩菜)
12(律子)→8(彩菜)
13(香織)→8(彩菜)
14(寛)→8(彩菜)
15(健)→8(彩菜)
17(大和)→8(彩菜)
19(忠司)→8(彩菜)
うわ…!!やっぱり圧倒的だ…!!
陽太は、思ってモニターを見た。
もう少し考える時間さえあったら、もっと他の選択肢もあったかもしれないが、皆克己じゃないなら、彩菜と、咄嗟に思ったのだろうと思われた。
思った通り、8と大きく表示がされて、声が告げた。
『№8は、追放されます』
また、パッと電気が消えた。
「どうして私なのよ!いやよ!いや!きゃあああ、」
真っ暗な中、彩菜の声がする。
またモーターの音が聴こえて来るのだが、その前に、悲鳴が不自然にピタリと止まった。
ドサリ、と音がする。
「いや!なに…?!」
芙美子の、怯えた声がする。
芙美子は9なので、8の彩菜の真隣りなのだ。
そのうちに、モーターの音が遠ざかって行って、そうして、パッと電灯がついた時には、もう8の椅子と、20の椅子の二つがそこから消えていた。
『№8は、追放されました。』昨日と同じ文言だ。だが、その続きは別の事を言った。『ここで、皆様にご案内致します。追放が決まりましたら、椅子から立ち上がらないでその場でお待ちください。大変危険です。追放が決まりましたら、椅子から立ち上がらずにその場でお待ちください。では、夜行動に備えてください。』
大事なところは二度言った。
恐らく彩菜は、動いたり立ち上がったりしたのかもしれない。
本当に真っ暗で何も見えないので、何があっても隣りのことさえ分からないのだ。
彩菜には、何かあったのかもしれなかった。
「彩菜さん…!!」
香織が、ショックを受けている。
思えば、ここへ来てから仲良くしていてべったりだった友達だったのだ。
藍が、一気に減った椅子の跡を見ながら、言った。
「でも…これで、明日見えるのは多分、彩菜さんの色だけだよね。」陽太は、藍を見た。藍は続けた。「だって、克己さんは同じ追放でもルール違反じゃないか。今夜投票で追放したのは、彩菜さんだよね?だから、明日の結果は彩菜さんのはずだ。」
そうだ、と陽太は思った。
つまり、克己の色は見ることができないのだ…永遠に。
「だからおとなしくしろって言ったのに!」
郷が、椅子の肘掛けをバンと叩いた。
芙美子がそれをなだめながら、言った。
「でも…ローラーせずに済んだわ。」と、皆を見た。「一日早く黒結果の二人が追放されたの。とりあえず、彩菜さんの色は分かる。それだけでも良かったじゃない。」
それには、丞も頷いた。
「そうだ。とりあえず、忠司は今夜色を見てくれるし、必ず生き延びる。だから、明日の朝色を見よう。それで、彩菜さんがもし村人なら、寛さんが破綻するしな。黒なら寛さんの真目が上がる。だから、明日を待とう。」
香織が、涙を流して項垂れている。
芙美子が、心配げに香織を見た。
「とりあえず、香織さんを部屋に送るわ。占い先は、朝もう指定していたから分かっているわね?気をしっかり持って、今夜はどちらか占わないと。」
香織は頷いて、芙美子の腕に縋って歩き出した。
郷が、その後ろに黙ってついて行く。
陽太は、また人が減ってしまった事実をやっと感じてぼうっと座っていると、太成が言った。
「さあ、陽太。行こう。占い先を覚えてるな?」
陽太は、頷いた。
「分かってる。オレは郷さんか悠斗。」
でも、ここは完全グレーの郷さんを占うつもりだけど。
陽太は、内心思っていた。
恐らく、他の占い師もそうだろう。このままグレーを残したままにしていたら、白が残っていた時吊られてしまうからだ。
それに、順当にグレーを無くしてから片白を占って行く形にして、まだ他の占い師との直接対決は避けたかった。
郷のことは、ここ数日でいろいろ話して、良い人だと思い始めていた。
なので、しっかり占って白を出して、生き残って欲しかった。
とはいえ、あんな郷でも、もしかしたら黒かもしれないのだ。
陽太は、憂鬱になって来る気持ちを奮い立たせながら、太成と藍と一緒に部屋へと戻って行ったのだった。
陽太は、段々にこんな状況に慣れて来ている自分を感じていた。
投票ルームから消えたひと達はどうなったのか分からなかったが、少なくとも愛美は、完全に死んではいないと律子は言っていたが、確かに見た目は死んでいた。
ということは、ここまでで保、愛美、克己、彩菜の四人を失っている。
それなのに、最初に感じたような衝撃は、もう感じていなかった。
もう、仕方がないと諦めているのだろうか。
いや、まだ実感が無いのかもしれなかった。
そうでなければ、死ぬかもしれない場所へと克己を連れて行くために、皆で寄って集って縛り上げて、無理やり運んで行くなど考えられない事態だ。
とはいえ、そうしないとルール違反になって、克己どころか誰が死ぬか分からないと思ったからだったが、よく考えたら異常だった。
それでも、この環境で生き残ろうと思ったら、ルール通りにやるしかない。
陽太は、11時を待って、今日も腕輪を開いた。
そこへ、7番、郷の番号を打ち込んで0を三つ押すと、すぐに表示が出た。
『№7は、人狼ではありません』
よし、郷さんも白だ…!!
陽太は、嬉々としてメモ帳の睦の下に、7、郷白、と書いた。
こうしておけば、きっと自分がもし死んだとしても、誰かが見つけて結果は分かるはずなのだ。
もし、運営の誰かがここへ入って来て、それを持ち去ってしまわない限りは…。
陽太は、ひと仕事終えたとホッと息をついて、そうして風呂へと向かったのだった。
次の日の朝、ハッとして目を開くと、また空が白白と明けて来ているのが見えた。
…またカーテン閉めるの忘れた。
陽太は思って、むっくりと起き上がると、時間を確認する。
昨日と同じで、もうすぐ6時になりそうだった。
そういえば、自分はこうして目を覚ましたところを見ると、人狼の襲撃はいったい、誰に刺さったのだろうか。
陽太は、思った。
当然のように目を覚ましているが、考えたら襲撃されていたら、あのまま目が覚めずに、皆に発見される事になるのだ。
陽太は、今日も自分が生きていたことを誰にともなく感謝して、そうしてトイレを済ませるとさっさと顔を洗い、解錠に備えた。
すると、昨日と同じくぴったり6時に、ガチンという音がして、鍵が開いた。
急いでドアノブを掴んで開くと、目の前の部屋から出て来た丞と目が合った。
丞はホッとしたような顔をして、その後隣りの藍と、太成を見てから廊下を見た。
「どうだ?みんな居るか?」
廊下には、続々と人が出て来てこちらを見る。
数えてみると、きちんと10人居るようだった。
「…みんな居る。ということは、護衛成功か、それともまた上か?」
丞が言うと、上階から声がした。
「丞!」健の声だ。「丞、来い!守れるんじゃなかったのか!」
…どういうことだ?
陽太が躊躇っていると、丞は唇を噛んだ。
「クソ…!!」
そうして、階段を駆け上がって行く。
7階の者達は、それを追って急いで階段を駆け上がって行った。




