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ルール違反とは

律子も含めた皆で丞の所へ行くと、丞と大和、永人は振り返って言った。

「あれ。どうしたんだ、何か分かったか?」

陽太は、首を振った。

「何も。ただ、克己さんの事を何とかしないとって。郷さんに手伝ってもらって、いっそ縛って連れて行くかって話してたんだけど。」

丞は、顔をしかめた。

「確かになあ。ルール違反ってどこからなんだろう。8時にあの椅子に座って投票するのが決まりだけど、来なかったらその時点で追放かな?」

藍は、首を振った。

「分からないよ。どうなるのかなんて何もね。とりあえず、連れてきて座ってもらわないと始まらないし…でも、無理そうでしょ?なんとかしないと。」

永人が言った。

「まあ、だったら縛ろう。それしかない。みんなで押し掛けて縛り上げて運んで行くしかない。ルール違反は避けたいからな。」と、キョロキョロした。「郷さんは?あの人が一番力がありそうだっただろう。」

「さっき、芙美子さんと部屋に帰ってったよ。」睦が言った。「後で話しとくよ。じゃあ、手間取るかもしれないから7時に克己の部屋に集まろう。オレの部屋の洗濯ロープ1本持って行くね。」

陽太が、驚いた顔をした。

「え、そんなのあったか?」

睦が、逆に驚いた顔をした。

「え、バルコニーに洗濯干せるように置いてあったけど。陽太、洗濯してないの?パンツ足りる?」

言われてみたらそうだ。

陽太は、慌てて頷いた。

「数は足りてるけど確かに溜めるのはまずいよな。やるよ。聞いてて良かった。」

みんな洗濯してるのか。

陽太は、恥ずかしくなった。

確かにアパート暮らしだし、洗濯はしているが基本一週間分まとめてするからだ。

みんながやってるのかと思うと、部屋に溜めて来ている少しの洗濯が気になった。

「じゃあ、今は解散だね。」藍が言う。「僕も昨日のパンツ干さないと。お風呂で洗って干すの忘れてるから。」

そうか、風呂でついでに洗ったら楽だな。

陽太は思って頷いた。

「帰ろう。じゃあ次は7時に、克己さんの部屋で。」

「その前にご飯だろうけどね。」

藍が答えて、その場は解散した。

レストランラウンジには、まだ数人の人達が残っていた。


六時頃、太成がやって来て飯に行こう、と言うので、陽太は太成と共にレストランへと向かった。

あれから陽太は部屋に戻ってパンツを手洗いし、睦が言っていた通りの場所にあった洗濯ロープのうちの一本を、バルコニーに設置して干した。

天気が良いのでよく乾きそうだと満足した後、ついうとうとしてしまい、気が付くと夕方だった。

パンツはまだ生乾きだったのでそのままにして、トイレに行って出て来たら、太成が来ていたのだ。

二人で階段を降りていると、太成が言った。

「なんか悠斗が来てさあ。」陽太が驚いていると、太成は続けた。「陽太が寝てるから話せないし、話をしたいとか言って。それで、聞いたんだけど。」

陽太は頷いた。

「それで?」

和解したなら一緒のはずの、悠斗が居ない。

恐らく何か言い合いにでもなったんじゃないだろうか。

思った通り、太成は答えた。

「あいつ、まだ香織ちゃんのこと言ってんの。みんなどうしちゃったんだろうね?郷さんと芙美子さんはお互い幸せそうだからいいけど、健さんとかさあ…そう言えば、寛さんはもう律子さんに言い寄ってないのかな。」

陽太は、何が言いたいのかよく分からず顔をしかめた。

「だから悠斗はなんだって?」

太成は、慌てて言った。

「ああ、そうそう。なんか香織ちゃんは、陽太と話したいからあまり話し掛けないで欲しい、って言うんだって。真占い師同士、連携取りたいからって。悠斗は陽太は友達だから、一緒に話そうって言ったらしいけど、あなたはまだ白黒分からないからそれは出来ないとか言われたらしくて。陽太から、なんとか頼んでもらえないかって。」

陽太は、眉を寄せた。

自分に都合のいい時だけ友達って。だいたいここへ来てからこっちを邪魔にしてたのは悠斗の方じゃないか。

陽太は、フンと鼻を鳴らした。

「今さらだって。最初自分から離れてったんじゃないか。それに、オレ別に香織さんが相方なんて思ってないし。向こうから一方的にだもんね。無理だ。」

太成は、階段を降りきってレストランへと入って行きながら、頷いた。

「だろ?オレもそう言ったよ。そんなにあの子と話したいなら、自分自身の役職でどうにかしろよって。狩人なら守れるからとか、共有の相方ならオレは白だとか、そんな感じで。素村なら素村で発言頑張って白おきしてもらえるようにするとか。そしたら、赤い顔をしてたけど、そのまま飛び出してったよ。あいつ、絶対おかしい。健さんも寛さんもおかしい。オレ、ゲーム外で煩わされるのめんどくさい。」

「なになに?」藍の声が割り込んだ。「またなんかあったの?そう言えば、健さんが律子さんの部屋を訪ねたみたいで、そこに寛さんも来て大騒ぎだったらしいよ。結局、郷さんと芙美子さんがそれに気付いて律子さんを自分の部屋に囲ったから、良かったみたいだけど。どうなってるんだろうね、ほんと。」

陽太が、驚いて言った。

「え、オレ寝てて気付かなかった!」

何しろ防音が完璧なので、外の音が全く聴こえないのだ。

藍は、苦笑した。

「郷さん達も偶然通りかかって知ったらしいからね。扉が開いてて、中で健さんと寛さんが言い合いしてて、律子さんが困ってた、って感じ。別に襲おうとかじゃなくて、話したいって訪ねたらしいけど、女性の部屋の扉勝手に開けて声かけるのってまずいよね。あの人、結婚してるって言ってるのに。なんか嘘かもしれないから話が聞きたかったとか言ってたらしいよ。ほら、めんどくさいから。結婚してるって言えば、近付かないだろうって、そんな感じに。」

陽太は言った。

「寛さんって弁護士なんでしょ?ヤバいの知ってるはずなのにね。離婚専門とか言ってたじゃないか。」

太成が、ため息をついた。

「みんなおかしいよ。悠斗だって、これまでも女性関係はいろいろあったけどあんなことなかったのに、香織ちゃんにだけは異常なほど執着してるんだ。保さんのあれとか、愛美ちゃんの姿とか見たはずなのに、まだ恋愛どうのって言っていられる神経が分からないな。」

すると、郷、芙美子、律子の三人が通りかかって、言った。

「…おかしくなっちまってるのかも知れねぇぞ?」郷が割り込んだ。「こんな状況だから、現実逃避したくなって他のことに気持ちを向けてるのかもな。案外一番参ってるのかも知れねぇ。」

言われて、こちらの三人は郷を見る。

芙美子は、頷いた。

「私も郷さんが一緒に居てくれるから、とても気持ちが楽なの。居なかったらと思ったら、狂いそうだわ。だから、あの人達の気持ちも分かるかも。律子さんがたまたま好きなタイプだったから、心の拠り所にしたい、慰めてもらいたいって思ってるんじゃないかな。律子さんには迷惑な話だけど。」

律子は、頷いた。

「部屋に来られるのは、ハッキリ言って迷惑ね。レストランとか共有スペースで話し掛けられるのはまだ我慢するけど、部屋にまでなんて無理。特に寛さんって嫌いなタイプなの…だからつい、強く当たってしまって、疑ってしまうのかもしれない…内緒よ。」

確かに俺様タイプだから、嫌いな人は嫌いだろう。

芙美子は、言った。

「だよね。律子さんの反応見てたら分かるわ。ああいう自分本位な人って最悪よね。」

どうやら郷は違うらしい。

律子は、頷いた。

「それより、ご飯を食べておかないと。7時に克己さんを捕まえて投票ルームに運ぶんでしょう?キッチンへ行きましょう。」

陽太は、歩いて行く皆に釣られて足を動かしながら、みんな言わないだけで、かなり精神的に追い詰められているのかもしれない、と思った。

そうして、自分がこうして皆に支えられて、真だと信じてもらえている今は、実はラッキーなのかもしれないと思い始めていた。

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