二日目の昼
結局、険悪なまま朝の会議は終わった。
もう、吊り先は決まってしまったので、これ以上集まって会議をする必要もない。
時間だけは山ほどあって、それでも何の情報もなくただダラダラと話していても疲れるだけで何も進まないので、丞が次は、今夜で良いと皆に解散を言い渡した。
それでも、占い師の占い先だけは決めておかねばならないと、最後に丞が、陽太に完全グレーの郷と、寛の白先の悠斗、菜々子に大和と香織の白先の芙美子、寛には健と菜々子の白先の永人、そして香織には太成と陽太の白先の藍を振り分けた。
太成はまた香織かとガックリしていたが、しかしそれが逆に怪しい、と見られるようになっていた。
他の人達が、占われてもいないのにそこまで怖がったりしないので、まさか黒で、真占い師に占われてはと怖がっているのではないか、と怪しまれ出したのだ。
怪しまれると、どうしても人外の占い師は皆を納得させるために、黒を打って来たりする。
なので、陽太は太成を心配していた。
一緒にカップラーメンを啜りながら、藍が言った。
「だからね、怖がり過ぎなんだよ。」藍は、言って聞かせるように言った。「僕から見たら君は最初から白いよ?でも、回りはそれを知らないし、占いを怖がるのって人外しか居ないから、みんな怪しんで来てるんだ。ほんとに白ならしっかりしなよ。村人が吊られるわけにはいかないんだぞ?」
ここへ来て、陽太に白を出されたことで、こちらへ合流して一緒に居るようになった、睦も頷いた。
「そうだよ。オレも何にも知らないから、何怖がってるんだよこの人って思ってたからな。もし今夜グレー吊りなら入れてるレベルで怪しいよ?しっかりして。」
太成は、二人に責められて、シュンと下を向いた。
「オレ…怖がりなんだよ。でも、ほんとに怖いんだから仕方ない。とにかく、落ち着くよ。オレは白だし。でも、克己が白なのに黒って言われてるんならって思うと、胸が痛くて。」
「あいつは黒だ。」びっくりして振り返ると、郷が芙美子と一緒に立っていた。郷は、苦笑した。「そう思えって。だから黒が出された。お前は白なんだから白しか出ねぇよ。しっかりしな。分かったか。」
太成は、まだ不安そうだったが、それで少し、落ち着いたようだ。
芙美子が、言った。
「郷さんに言われて、私もちょっと落ち着いた。襲撃って、怖くなさそうじゃない?私、愛美ちゃんを見て、自分もああなるって思うと気分が悪くなってたんだけど、村が勝って何とかしてくれるって郷さんが言うから。そうよね、みんな強いもの。私なんかよりずっと頭が良い人達ばかりだし、もし噛まれたら楽に待ってる。寝てるから、きっと気が付いたら終わってるんだろうし、楽をさせてもらえるって思おうかなって。」
郷は、ハハハと笑った。
「そうだ。オレも楽したい。別に頭も良くねぇし、こういうのは賢い奴らに任せるのが一番良いって思う。できるだけ生き残りたいのは確かだけどな。何しろ、息子の学費が掛かってるから。とはいえ、ちょっとは貯金があるから、それを足しゃあなんとかなるだろ。必死になるだけ、しんどくなっておかしくなるだけだ。気楽にやればいいんだよ。」
芙美子は、フフと笑った。
「そうよね。私もそう思う!深刻に考えたら頭がおかしくなりそう。」
二人は、微笑み合いながらそこを去って行った。
それを見送っていると、律子がやって来て、言った。
「ここ、よろしいかしら。」
陽太は、一緒に座りたいのだと知って、慌てて空いている椅子を押した。
「どうぞ。」
律子から来るなんて珍しいな。
そう思っていると、後ろから健が来た。
「あれ、占い師の話を聞くのか?」
あ、逃げて来たのか。
皆が、それを見てそう思った。
律子は、頷いた。
「ええ。陽太さんや藍さん達と、そういえば話していなかったと思って。」
藍が、笑って言った。
「いいよ~律子さんなら大歓迎!絶対白だし。」と、健を見た。「健さんは、どうして律子さんについて来てるの?律子さん、ダンナさんが居るって言ったよね。もう付きまとわない方がいいと思うけど。だって、医者繋がりで知り合いかもしれないでしょ?」
健は、顔をしかめた。
「それなんだが、彼女がどうしても苗字を教えてくれないんだ。もしかしたら、同僚かもしれないと思って聞いているのに、多分知らないだろうからって。」
律子は、ハアとため息をついた。
「あの、私の夫は海外に長く居て、こちらへ帰って来て…臨床医ではなく、研究医ですの。だからご存知ではありませんわ。あの方のお知り合いの事は、逐一教えてくださるから私も見知っておりますし。あなたとは初対面でしょう?」
睦が、言った。
「健さん、ゲームに集中しようよ。律子さんはゲームをしたいんだよ。だから、それは後で。旦那様が迎えに来てくれるかもしれないでしょ?これが終わったら。その時、挨拶したらいいんじゃない?」
健は、陽太、藍、睦が盾になって、律子に近付けないと諦めたのか、ため息をついた。
「ちょっと話がしたいだけなんだがな。じゃあ、また後で。」
健は、そこを去って行った。
律子が、ハアとため息をついた。
「あのかた、何もご存知ないから。私の夫って、とっても怖い人なんですわ。やめておいた方がよろしいのに。そもそも私、そんなに美人でもないから、これまでそんなにモテたこともありませんのに。戸惑うわ。」
確かに目が覚めるほどではないかもしれないが、よく見るとそれなりに美しいと言われる部類の顔立ちかもしれないのだ。
好みの問題かな、という感じで、優し気な顔だった。
「律子さん、僕達と一緒に居た方がいいよ。押し掛けて来るかもしれないでしょ?ギリギリまでここで一緒に居ようよ。ほら、夜時間前の時とか。」
律子は、フフと笑った。
「ありがとう。でも、そこまでしないと思うけど。できるだけ、一緒に居てもらうわね。」と、陽太を見た。「ところで、陽太さん。お話したいと思っていたの。あの、寛さんの事はどう思う?」
陽太は、え、と首を振った。
「分からないんです。寛さんって、最初の印象が強過ぎて今は穏やかなんだけど、なんか裏があるんじゃないかって思ってしまうよね。」
律子は、ハアとため息をついた。
「そう、あなたもそう思うの。実は、私もそうなの。克己さんの事は、菜々子さんの黒先だし菜々子さんはまだ分からないから、克己さんを吊らせてもらって確かめさせてもらおうと思っているんだけど、寛さんがね…。実は、私は寛さんは狼陣営じゃないかって、最初に言ったのを覚えている?」
陽太は、頷いた。
「覚えてます。言ってたよね、何か、克己と保を庇ったとかなんとか。」
律子は、頷いた。
「そうなの。理由はどうあれ、誰も庇わなかった二人を庇ったのは寛さんだったわ。その内の一人を吊って、黒が出た。もし明日克己さんに黒が出たら、いよいよそれが現実になって来るんじゃないかって考え始めているの…だとしたら、残りの三人のうち二人が真だから、そのうちの一人は限りなく菜々子さんが近付くことになると思う。ちなみに、昨日までは陽太さんの事も私はそこまで信じていなかったの。真目があると言うことで、もしかして噛まれたりしたら分かりやすいとは思ったけれど、それも無かったし…でも、今朝、占い師達の意見を聞いていて、消去法でやっぱりあなたが真かなと思い始めているわ。私は寛さんの真は無いと今、思ってる。でも香織さんと菜々子さん、あなたは分からなかった。でも…菜々子さんは明日一応の結果は出るし、香織さんは…私を占った理由が弱すぎる。だから、あの子も真はないんじゃないかって考えてるの。あくまでも、今の時点での話しだけどね。」
今はそう見えるのが自然かもしれない。
寛はあんな感じなので、もしかしたら皆にマウントを取りたいから皆が攻撃する二人を庇ってみたら、たまたま黒だった可能性もあるのだ。
「気を付けて見ておくね。律子さん、狐はどこだと思う?」
律子は、顎に手を置いて、首を傾げた。
「…占い師の中にと考えているので、菜々子さんか香織さんかと思うわ。でも、確信がない。普通に考えたら目立ちたくないので私にあまり村利のない白を打った香織さんだけど…確信はないの。まだ情報が少な過ぎるでしょう。みんな、丞さんから促されないとあまり発言しないから。本当はもっといろいろ話して、ボロが出るのを待つのがいいのだけど、決まった人しか意見を積極的に出さないじゃない。なので、寡黙な人達はみんな怪しく見えるの。」
言われてみたら、その通りだ。
そこに居た者達は、顔を見合わせた。
「…この際、寡黙位置に話を振って話させまくる?」
睦が言う。
藍は、頷いた。
「今日はもう無理だよ、だって集まるの7時45分でしょ?克己さんを部屋から引きずり出して来るのに時間が掛かりそうだし。」
陽太は、頷く。
「みんなで何とかしないとな。でも、多分椅子には座らないと思うけど。郷さんが力ありそうだから、あの人に頼んで縛ってしまうとか。」
「それが良いかもなあ。」藍は言った。「あの部屋に来ないとルール違反になりそうじゃない?」
皆が、顔を見合わせる。
皆は、克己のことは話しておかないとと立ち上がると、固まって座っている、丞、大和、永人の方へと足を向けた。




