二日目朝の会議2
「じゃあ、陽太はどうして健さんと睦で睦を占ったんだ?」
丞が言った。
陽太は答えた。
「オレ、睦のことは藍と似てるところがあるから、多分視界が濁って黒でも分からないかなと思ったんだ。健さんはよく発言するし、多分色が後からでも分かって来そうだけど、睦が黒なら怖いなと思って占った。そうしたら、白だった。」
丞は頷いた。
「そうだよな、睦は確かに藍と感じが似てるから、菜々子ちゃんとも愛美ちゃんともよく話してたよね。親しみやすい感じだから、確かに黒だと怖いよね。」
陽太は、納得してもらえてホッとした。
次に、菜々子を見た。
「で、菜々子ちゃんは?どうして克己と大和で克己にしたの?」
菜々子は、答えた。
「みんなに疑われていたからよ。白だったら間違って吊ってしまったら可哀そうだし占ったら、人狼だったの。びっくりして…結果見てから、噛まれないかって怖くて仕方が無かった。」
指定先に入っていたら、確かに人狼は噛んで来る可能性がある。
そういうところは、真感情ではないかと思えた。
丞は、寛を見た。
「じゃあ寛さんは?」
寛は落ち着いて頷いた。
「オレも、自分の指定先に昨日疑われていた彩菜さんが入っていたから、そこを占った。郷さんも気になるが、それより村目線、そっちの方が色を見たいと思ったからだ。もしかしたら呪殺も出るかもしれないと考えたが、出るどころか黒だった。驚いた。」
丞は、淡々と先へと続けた。
「で、香織ちゃんは?律子さんと太成で、どうして律子さんにしたの?君が一番分からないんだよね。律子さんは昨日の時点で限りなく白に見えてたでしょ?その結果を落として、村のためになると思った?」
丞は、どうやら黒を出した二人より、香織の占い先がおかしいと思っているようだ。
それは陽太もそう思ったので、その意見は分かった。
陽太が占った睦より、律子の方が目立って白かったので、同じように白っぽい所を占ったとしても、陽太と香織では全く印象が違うのだ。
香織は、丞にそんな風に言われたので驚いたようだったが、怯えたように言った。
「それは…律子さんはとても穏やかなのに、とても意見が強くて狼だったら怖いなと思って。最初に占っておきたいと思ったんです。白が出ていたら、みんな安心するかなと思って。」
深く考えずに、どちらかと言われたから、律子を占ったのだろう。
だが、真目が落ちたのは確かだった。
ということは、寛と菜々子のうちどちらかが真占い師で、どちらかの結果が本当のものなのだが、それが全く分からない。
寛も、昨日の午後からはすっかり落ち着いていたし、特に圧を感じるとか、そういったこともないし、菜々子の発言は無難過ぎて、色がつかない。
そんなわけで、陽太以外の占い師は、皆横並びだったのだが、占い先で香織が少し下に落ちたような状態だった。
丞は、言った。
「とりあえず、納得はしないけどもう占ってしまったのに今さらだし、今日の精査は寛さんと菜々子ちゃんの二人の方だ。なぜなら、二人の黒先のどちらかを吊る必要があるからだ。意見を聞こうか。みんな自由に発言してくれ。」
寛が、言った。
「オレ目線でも克己はグレーだから、別に黒という可能性はあるぞ?」皆が驚いて寛を見ると、寛は続けた。「だから、別に今夜は克己でもいい。もしかしたら菜々子ちゃんがオレの相方かもしれないし、狐でも狼に黒を出したりするからな。もし黒だったら、狂信者ではないだろう。狂信者は人狼を知っている。だから、オレは自分が黒を見ているからできたら彩菜さんを吊って欲しいが、相方かもしれない菜々子ちゃんが出している黒先を吊ってもまあ、いいかなと考えているんだ。」
陽太は、意外なことに驚いた。
もし寛が狼陣営だったなら、言えないことだと思ったのだ。
仮に狼陣営だったとしてこう言っているとしたら、菜々子の黒先が白だと知っていて、別にいいからそう言っている、と見える。
だが…。
「これ…」藍が、言った。「もしかして、だけど。今の意見で寛さんが真に見えるけど、逆にワンチャン寛さんが狼で、菜々子さんが狐か背徳者だったり、狂信者だったりしたら、黒でない所に、そう、村人が信じやすい所に黒を打ってて別に吊られても構わない、とも見えるよね。それで吊られて明日忠司さんが色を見て白って言ったら、吊られるのは菜々子さんの方なんだ。」
言われてみたらそうも見える。
もう、何を信じていいのか分からないのだ。
「克己さんは絶対黒よ!」菜々子が言った。「だから、明日忠司さんが私が真だと証明してくれるわ。絶対に黒結果が出るから。絶対よ。寛さんがこう言ってるんだから、克己さんから吊って。お願い。」
そう言われると、そうした方が色が分かりやすいのかもしれない。
だが、本当に忠司は色を見ることができるんだろうか。
克己が必死に言った。
「どうして白のオレが吊られなきゃならないんだよ!それでしか、白証明はできないってのか?理不尽過ぎやしないか?保を見て…オレもああやって落ちてかなきゃいけないってのか?!」
悲壮な声だった。
太成が、何より怖がっていたことだった。
丞は、気の毒そうに言った。
「確かにそうだが、村目線じゃ君がどっちなのか分からないんだ。ここは村の勝利のために、吊られて欲しいんだ。もちろん、彩菜ちゃんと二人のランになると思うけど、今の様子だと君が濃厚だよな…白なら、絶対明日忠司が色を見て君の仇は討つから。大丈夫だ。」
克己は、ブンブンと首を振った。
「オレじゃない!」克己は、立ち上がって狂ったように言った。「絶対に嫌だ!」
そうして、船首ラウンジを駆け出して行った。
「こら!」
丞は声を掛けたが、克己は駆け出して行ってしまった。
それを見送った、郷が言った。
「…まずかないか。」と、深刻な顔をした。「あいつ、投票に来ない可能性があるぞ。あの椅子で落ちたくないんだろう。座ると思うか?」
睦が、顔をしかめて言った。
「オレが黒を打たれていたらって考えたら気持ちは分かるけど、でもさ、来ないともっとまずい事になりそうじゃない?だって、それってルール違反じゃないか。って事は、追放じゃなくてルール違反で死んじゃうんじゃないの?だって、どうやるのか知らないけど、愛美ちゃんが寝ている間に襲撃で死んだんでしょ?そんな風に、部屋に籠ってたってあっさり死んじゃう気がする。」
「その前に、こっちでオレ達が投票してたら多分、愛美ちゃんと同じ形で追放になるんじゃないか?来なくても。結局、自分の首を絞めることになるのに、あいつはどうしてあんなに取り乱しているんだろう。」
丞が言うが、太成が同情気味に言った。
「オレは気持ちが分かるよ。」皆が、太成を見る。太成は続けた。「オレだって、白なのに黒を打たれて、じゃあ色を見たいから吊られてくれって言われたら、理不尽だって叫びたくなる。だって、自分は悪くないのに、人外に貶められるんだよ?いくら忠司が証明してくれるって言っても、オレはその時はもう死んでて、勝敗は残った人たちに委ねるしかないんだ。もしかしたら、二度と目覚めないんじゃないかって、そりゃ怖いよ。君達だって同じ立場になったら分かる。」
言われて、皆は顔を見合わせた。
共有者である丞には、それは分からないのだろう。
陽太も、今は真置きされているが、いつ何時人外に嵌められてしまうか分からないのだ。
襲撃とは違い、投票で死ぬのは確かに怖かった。
律子が、言った。
「…今夜は、申し訳ないけれど克己さんに吊られてもらいましょう。」皆が、律子を見た。律子は言った。「これ以上追い詰めるのは克己さんが可哀そうだから、ここは克己さんに任せてそっとしておいて。明日、忠司さんが色を見てくれるわ。それで、判断しましょう。でも、もし黒だったとしても菜々子さんの真はまだ追えないと思って欲しいわ。狐でも、狼が追い詰められて真を取ろうと仲間を切っている可能性も、まだ無いとは言えないから。ここは、やはり目に見える形で、呪殺が出ないと完全には信じ切れないの。人外だと思われる位置が二人出て来たのだし、まだ縄に余裕がある。二人を今日明日でローラーしても間に合うかもしれないわ。」
黒ローラーか。
陽太が思っていると、彩菜が言った。
「そんな!私は白なんです!律子さん、寛さんは人外です!確かに克己さんは黒かもしれないけど、だとしたら寛さんは克己さんをきっと切ってるんだわ!そして、吊っても良いって言って、忠司さんに黒を見せて…私を吊ったら、明日生き残る忠司さんに、白だとバレてしまうから、克己さんをスケープゴートにしようとしてる!そうとしか考えられない!」
寛が、言った。
「別に村の希望を聞くと言っているだけで、オレは今でも君を吊りたいと思っているよ。だって黒だからね。でも、今律子さんが言った通り、自分が出した黒を忠司が証明してくれても、真だと見てはくれないだろう。オレは呪殺を狙いたいね。そうしたら、君が残っていても村が君を吊ってくれるから。」
「あなたに呪殺なんか出せないわ!」
彩菜の言葉には、何やら確信めいた力があった。
だが、黒を出されて必死に抵抗して命乞いをしているようにも見えた。




