表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/66

64

カフェへと向かう道中は、俺、ヒイロさん、ユウシさん、ビデオさん、アヤカさん、マドカさん、ミキ先輩、ヒイロさんの彼女さんが4人、みんなのマネジャーが6人、の計17人になった。


 結構な大人数なので入れるか心配したが、アヤカさんのマネジャーさんが先にお店に連絡を入れていて席を押さえているので大丈夫とのこと。

 ただ移動時はどうしても目立つ。


 見られてるなぁ……


 まあ、そんなことを気にしているのは俺と……先輩と、ヒイロさんの彼女さん4人くらいのものなんだけどね。


「ミキさん。今から行くカフェは個室になっているから大丈夫だよ。

 ここでは基本的に他所で撮影している芸能関係者には会わないように配慮されているんだよ」


 俺たちの知らないことを教えてくれる親切なヒイロさん。ヒイロさんの彼女さんたちはちょっと残念そうにしている。もしかしたら他の芸能人に会えると期待していたのかも。


 ん?


 今先輩の肩に触れようとして避けられていたように見えたけど……先輩が俺の方にちょっと近づいてきただけか。先輩は男性が苦手だからヒイロさんのこともまだ苦手なのだろう。


 俺たちよりも前から撮影しているから、ヒイロさんがここ(東西映像特撮スタジオ)のことについて詳しいことが分かった。

 あれ、おかしいな今睨まれた気がする……


「うわぁ」


 そんな声を上げるのはヒイロさんの彼女さんたち。俺も思わず上げそうになった。


 カフェって聞いていたけど入り口からしてかなり高級そうな感じのするカフェだ。値段もきっとそれなりに高いのだろう。

 不安になりマキさんの方を見れば大丈夫だと頷いてくれてちょっと安心する。


 アヤカさんのマネジャーが先に入り話をつけて、みんなにも入ってくるように促させられた。


 礼儀正しい店員さんに案内されて個室まで案内してもらうが高級そうなカフェなだけに分厚い絨毯の廊下を歩く。


 ——おお。


 ふかふかだ。それだけでも俺が1人だったら絶対に入らないようなカフェだと思う。


 案内された部屋には窓から綺麗な景色が眺められるような雰囲気のいい部屋。

 アンティークっぽい品のある丸テーブルが三つあり、それぞれに座り心地が良さそうな椅子が6脚ずつ設置してある。


「とりあえず適当なところに座りましょか」


 アヤカさんはそう言うが、普通に考えたら丸テーブルの一つがマネジャーさん6人の席になり、ヒイロさんとヒイロさんの彼女さん4人で5人の席に。あとは俺たち6人で座れば問題ないはずだよね。


 でも、ヒイロさんがそれは同じ撮影仲間としてどうなんだい、と嫌がって首を縦に振らない。


 ヒイロさんの彼女さんたちは不安そう。ヒイロさんはもうちょっと彼女さんたちのこと見てあげた方がいいと思うけど……サキたちとだったら真っ先に俺はそっちの席に座るけどな……


「はぁ、仕方ないからヒイロはこっちでいいけど、彼女さんたちには後でフォローしなさいよ」


「当然だろ」


 そう言って俺の左隣の席に座り椅子をこちらに詰めてくるアヤカさん。まあ6席を7席にするから詰めるのは分かるけど、マドカさんがなんでかなちょっと悔しそうな顔をしていた。でもすぐにアヤカさんの隣の席に座ったから仲はいいのだろう。


 右隣には先輩が座るが、その先輩の隣にはヒイロさんがすぐに座った。でもその瞬間、先輩が気持ち俺の方に椅子を寄せてきた。ごめんねって顔をして。大丈夫、俺は分かってるし(男性が苦手なこと)、ヒイロさんは気づいてないようだから。小さく親指を立てておけば先輩がホッとしていたように見えた。


「俺、ちょっとお腹が空いているからパスタセットにするよ」


「周りのことなんて気にせず、ヤマトくんは好きなの食べていいんだからね」


 アヤカさんがそう言ってくれるのは、お昼はスタッフさんが準備してくれていたお弁当を食べたが、最近よく動くからお腹が空く。なので俺は量の多そうなパスタ(ペペロンチーノとパンとコーヒー)セットを頼んだが、ほとんどのメンバーはデザートとコーヒーもしくはデザートとソフトドリンクを頼んでいたからだ。


 ヒイロさんやユウシさんがここでそんなに食うの? って顔をしていたけど、ヒデオさんは逆にうれしそう。そっかヒデオさんはミートパスタ大盛りだったね。でもヒデオさん大丈夫かなミートパスタはタレが飛ぶよ。


「ヤマトくんのソロパートすごかったね」


 みんなでわいわい撮影のことで盛り上がっていると、アヤカさんが不意に先ほど撮影したダンスミュージックについて触れてきた。


「ああ……あれは」


 そうなのだ。もともと俺のソロパートなんてなかったんだけど、前回の撮影で俺には無茶振りが可能だと知った監督が悪戯を思いついたような笑顔を突然浮かべると、ヤマトくんソロでちょっとやってみようかと言ってきたのだ。


 画面外からまるでパルクールのサイドフリップみたいな宙返りで画面中央まで入りすぐにダンスに入る。のりのりでみんなと同じステップダンスをした後にバク転を最後に決める。監督は満足そうに出来上がりを楽しみしといてね、と言っていたけど、どこに挿入されるかは教えてくれなかった。たぶん曲の2番か3番あたりのどこかかな……


「僕もあれくらい練習すれば……」


 ヒイロさんが隣の先輩に何か言いかけたところで、料理が運ばれてきた。 


「わぁ」


 女性陣から歓喜の声が上がる。デザートも結構な量に見えるが盛り付け方がすごい。すごくオシャレだ。


 どんどん料理が運ばれてきて俺のパスタセットも来た。いい匂い、すごく美味しそう。


 ん?


 でも一つ気になることが、ヒイロさんの彼女さんたちのテーブルには何も運ばれてきていない。ヒイロさんを見るがヒイロさんはホットコーヒーを優雅に飲みながら隣の先輩に先ほどの続きを語っている。


 しかも、よく見れば彼女さんたちは涙目だ。もしかして何も頼んでいないの? 慌てて料理を運んできた店員さんに小声で尋ねてみれば、注文は預かっていないと言う。ここって関係者しか入れないお店だからヒイロさんが頼んであげないと注文できないようだ。関係者カード見せないといけないし。

 幸いみんなは運ばれてきた料理やデザートに夢中でこちらに気づいていない。


 ——今なら……


「ヒイロさん」


 ヒイロさんに小声で声をかけるが、先輩と話しているから……いや、おかしい。聴こえていないはずないのに。先輩でさえ俺の方をちらりと見てくれた。さて、どうしようか、もういっそのこと俺が頼んであげようかなどと考えていると、


「ヤマトくんどうしたの?」


 隣のアヤカさんから声をかけられたので、アヤカさんの耳元まで顔を寄せて小声で事情を話す。ヒイロさんの失態をみんなに広めてもいいことはないと思ったからだ。


「は、はぃ」


 アヤカさんが代わりに、まだ部屋で待機してくれていた店員さん(気が効く店員さん)に上手く声をかけてくれて彼女さんたちからも注文を取るように頼んでくれた。


 俺も店員さんに頭を下げる。そのアヤカさんの顔は真っ赤だったけど。もしかして慣れないことをさせてしまったのかもしれないとちょっと後悔。たしかアヤカさんってお嬢様だったっけ? 上品だし。俺が頼むべきだったと思いつつアヤカさんにはちゃんとお礼を伝えた。


「い、いいのよ。気にしないで」


 ま、その後、何事かとマドカさんから尋ねられていたアヤカさん、どう言ったかは知らないけど、ヒイロさん、2人から睨まれていたよ。


 そのヒイロさんは気づいていなかったけど。さすがに今回はヒイロさんが悪いので俺は知らない。


 帰り際、彼女さんたちアヤカさんにお礼を言っていたね。そのあと何故か俺にも頭を下げてきた。アヤカさんが何か言ったのかな?


 ただ帰りの車の中で、先輩がかなり機嫌が悪くてびっくり。ヒイロさんの相手がキツかったとか。助けてほしかったとか。ごめんさない先輩。普通に会話をしていたように見えたから気づかなかったよ。今度食事を奢ることで機嫌を直してもらった。

 マキさんは他のマネジャーさんから色々なノウハウを聞けて満足そうだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ