表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味偽装する俺だけど、思ってたのと違う。彼女たちは意外と勘がいい。  作者: ぐっちょん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/66

57

 撮影初日を終えてからのスケジュールは思っていたよりも余裕があって順調だった。

 でも、その分大國先生のレッスンが鬼のように入ってきたのはビックリしたけど……


 少し変わったことと言えば、撮影初日のあの日のこと、俺のファンだと応援してくれた女性たちは、以前にも会ったことのある、大学生のサークルグループだった。

 リーダー(会長)は押野田さんだったはずだけど、お嬢様然としていた雰囲気から、なんて表現したらいいのだろう。ちょっと怖いくらいの熱意と勢いに思わず両手で握手を返してしまった。

 どうしてあの日、俺が撮影初日だと知っていたのかは不思議でならないが、彼女たちの熱意と勢いに元気が出たのもたしかだし、とても嬉しかった。


 そのことをレイコ義母さん(社長)とマキさん(マネージャー)に伝えたところ、その翌々日にはリアライズ芸能の公式サイトにファンページなるものができていた。


 そのページがどういったものかというと、無料会員様用のファンページと有料会員様用(年会費五千円)の特別ファンページに分かれていて。


 そして、有料会員登録者のみ応援したいタレントを選択してもらうことになり、そこで応援したいタレントを選択すると後日会員証の他、毎月、選択したタレントの小冊子が、誕生日にはお祝いのメッセージが自宅まで届くようになる。


 さすがに小冊子を毎月送るなんて大変なのでは? と思ったけどそこは関連会社に委託するのだとか。

 その委託先が母さん(実母サクヤ)の会社だと後で知ってびっくりしたんだけど。


 他にも来月から販売予定のタレントグッズなどの割引特典などもあるようだ。


 因みにグッズ第一弾はグレイドで撮影した生写真。もちろんそれはグレイドでは使われなかった未掲載分らしいが、それを販売するそうだ。


 俺はなるほどと思ったよ。俺も先輩もグレイドで撮影しているし、撮影した量よりも掲載されている写真の量がかなり少ないからね。でもな、なんだろう、うーん……


 無料会員様用のページにはタレントの活動情報の他、社員が撮ったお楽しみ写真画像なんかをアップしたりするそうだ。お楽しみっていうのが少し怖いけど。


 そして、有料会員様用の特別ページには俺と先輩がスマホで自撮りした画像を掲載することになるそうだ。


 だから俺と先輩は半強制的に自撮り画像(タイトルは自由)を毎月数枚ほど事務所に提出しなければいけないが、これには手当て付く。


 でも俺からするとこれは手抜きにも思えてファンの方たちから苦情が来ないかすごく心配。


 いや、そんか心配をする以前にリアライズ芸能に所属しているタレントは、まだ俺と先輩しかいないから登録者が増えるのかどうか……


 でもレイコ義母さんは大丈夫だと言う。


 いや、レイコ義母さんだけじゃなく、事務所の桂木さんや栗田さん、小倉さんからも大丈夫だと言い切られた。


 その理由として、義母さんの別会社であるグレイドの社員さんや、栗田さんの妹さんが大学生で、その妹さんや友人たちが心待ちにしていたから、他にも色々な声を聞き総合的な判断の結果なのだとか……ん? 栗田さんの妹さんは大学生? ちょっと何か引っかかった気がしたけど、まあいいや。


 だから俺と先輩は、そんな心配はせずに、サイト内でファンの声を集めて、毎月その中から抽選でその声に応えるという企画を始めるからそちらを頑張ってほしいそうだ。


 もちろん俺も先輩も頑張るつもりだけど、やっぱり登録者してくれる人がいるのだろうかと心配になる。


 と思っていた次の日には早くも登録者が三桁になっていてびっくりした。


 どうもグレイドの社員さんだけじゃなく、俺が話したサークルグループの押野田さんたちまでも登録してくれていたのだと後で栗田さんから聞いた。


 その栗田さん曰く、俺には非公式ながらファンサイトが開設してあったらしく、そのメンバーと、そのサイトでのファンナンバーがそのまま移行する形で登録されたのだとか。


 そんなのでいいのだろうかと思うも、ファンナンバーは変えれないからと、さも当然のように語る栗田さん、俺にはちょっと意味が分からなかった。


 ちなみに俺は女性のファンのみだったらしいけど、先輩はグレイドの男性スタッフだけじゃなく女性のファンもいた。たぶん、フッションモデルをしている先輩は格好いいからだろうね。


 さらにその次の日には登録者がさらに増えていて四桁を超えていた。もう俺には何が何やらさっぱり。


 でも、もちろんいつまでも所属タレントが俺と先輩だけという状態は好ましくないと考えるやり手のレイコ義母さんは、常にオーディションを開いていて、俳優や女優、モデル志望の子を募集しているようだけど、誰一人として採用に至っていない。


 これも俺は後で知ったことだが、このリアライズ芸能の審査はかなりシビアらしい。演技スクールや演劇学校、俳優養成所などにはそんな情報が流れている。


 でもそうなる理由もわかる。ここはレイコ義母さんが設立した会社だ。ということは、この芸能事務所は大企業、藤堂グループに属していることになるのではないか。


 だから、すぐすぐではないだろうが、今後、藤堂グループ関連のCMなんかも扱うようになる可能性はある。レイコ義母さんもそれらしいことを言っていたし。


 ――あれ? それだと俺と先輩が……


 深く考えると怖くなったので俺は考えるのをやめた。


 ピロン♪


「LIFE?」


 久しぶりの休みで、ラノベ小説を広げベッドの上でゴロゴロしていた俺は上体を起こしスマホを手を伸ばした。


「サキから?」


 俺はLIFEアプリを起動してメッセージを確認した。


 《ヤマトの部屋》


 サキ:やっほー、ヤマトっち。今日も元気? あたしたちちょっと地元に帰る用事ができたからちょっと帰ってくるね。


「え?」


 ――あたしたちってことはアカリとナツミもってこと?


 俺がそんなことを思っていると、


 ピロン♪

 ピロン♪


 続けてアカリとナツミからもLIFEメッセージが届く。


 アカリ:ヤマトと楽しく夏休みを過ごしたかったんだけど、ごめんね。


 ナツミ:ちょっと帰ってくるだけだし……お土産買って来るし。


「え、ええ」


 今はまだ八月に入ったばかり。サキたちからはお盆に少しだけ帰省すると聞いていただけに俺は焦った。


 そう、忙しさのあまり彼女たちとの時間をあまり取れていなかった。そのことで彼女たちを怒らせてしまったのではないかと思ったのだ。


 そりゃあLIFEのやりとりは毎日して画像を送ったら送られたりしていたが、彼女たちも女性に人気があり男性があまり入ってこないカフェでバイトを始めたこともあり、俺の休みと時間が合わず、みんなでウォーターランドに遊びに行ってから一度も逢うことができなかった。


 今日だってそのカフェでバイトだと聞いていたから俺は部屋でゴロゴロしていたのに。


 ――もしかしてここはバイト先まで逢いに行くべきだったのか? いや、しかしあそこは男の俺には入りづら……あー、でも、彼女たちからすればそれでも彼氏の俺に逢いに来てほしかったとか? 


 そう考え出すと、それが正解だったような気がしてくる。


 ――まずい。これはまずいよね。そ、そうだ、せめて駅まで見送りに行く? そうだ。見送りに行こう。そうしよう。


 ピロン♪

 ピロン♪

 ピロン♪


 サキ:おーい、ヤマトっち? 

 アカリ:ヤマト?

 ナツミ:ヤマトいない?


 そう思い至ったがサキたちからのメッセージがさらに届き、俺は早く返信しようと焦る。

 でもそれがいけなかった。俺は焦るあまり、じゃあ駅まで俺も行くよ、と打とうとして、


 ヤマト:じゃあ俺も行くよ。


 駅まで、を打ち損ねた。


 ――あああ、何やっているんだ俺は。訂正だ、訂正を。


 アカリ:え?

 ナツミ:ん?

 サキ:おお? ヤマトっちも来たいの? 


 ――ちがう、違うんだっていうか、サキたち打つの早すぎ。


 怒らせているかもしれないのに、そんなことできるわけない。


「ご、め、ん。今のは、間違い。見送りに、駅、ま、で……」


 俺はLIFEに今のは間違いだと送ろうとした。

 でも俺以上にLIFEを使い慣れているサキたちのメッセージの打ち込みはやっぱり早い。


 ピロン♪

 ピロン♪

 ピロン♪


 サキ:もしかしてヤマトっち。ずっとあたしたちに逢えていなかったから寂しい? 

 アカリ:ああ、そういうことね。

 ナツミ:そっかヤマトは寂しいのか。


 ピロン♪

 ピロン♪

 ピロン♪


 サキ:しょうがないねヤマトっちは。じゃあ一緒に行こ。

 アカリ:うん。じゃあ私たちは駅で待ってる。

 ナツミ:待ってるし。


「え? いや、違う……俺はただ……」


 怒らせているかもしれないと思った俺は、せめて彼女たちを駅まで見送り行くことで、罪滅ぼしというか、機嫌を直してもらえればと思っていただけなのに、何故か、俺まで彼女たちの地元までついて行くことになってしまった。


「あれ? サキたちの地元ってどこ?」


 彼女たちが同じ中学校出身だということは教えてもらっていたから知っていたが、その中学校名や、彼女たちの地元が何処なのか知らなかったことに俺は今さら気づくのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ