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雲雀ちゃんとヤンデレ腐女子

作者: can

よろしくお願いします。

「アレ? 君一人でお留守番してるの? あ、お腹すいてる? クリームパン食べる? 間接キスだけど。なんてね。どうぞ?」


 ゴクリッ。きっとわたしの喉が唾を飲む音は雲雀(ひばり)ちゃんの耳に届いている。

 ああ、わたしの目の前には、雲雀ちゃんのかじった、可愛い半月型に欠けたクリームパンが細く綺麗な指で差し出されている。


「い、いいの?」


 わたしの目はクリームパンに釘付けで、断るという選択は1ミリも無い。


「どうぞ?」


 わたしの口元にクリームパンが?! 

 手作りの焼きたてパン。

 差し出される指と綺麗な笑顔。

 甘い香りに誘われて、無意識にかじりついたわたし。


「美味しいでしょう? じゃあね?」


 あ、わたしのかじったクリームパンを雲雀ちゃんが食べてる?

 マジですか?!

 神様、ありがとう! 


「おい、雲雀、お前何、女子と間接キスしてんだよ?」

「クリームパンをおすそ分けしただけだよ」


 遠ざかる雲雀ちゃんとお友達の会話で、我に返った。

 恥ずか死ねる!

 きっと今、わたしは、真っ赤だろう。

 文化祭のクラブ展示場で、赤面の腐女子は周りからはどんなに風に見られていただろう?

 


 雲雀ちゃんは可愛い。

 何時もお友達が周りに何人もいて、一人で居ることは無い。

 くるんと巻いた天然パーマは、フワッと軽く風に揺れてる。

 細く華奢な肩。

 あの腰のくびれは、内臓が入っていないはず。


 撫で回したいですよ!

 その腰を!

 

 真っ白な小顔に赤い唇。

 舐めてイイ?


 ギャー! 隣の男子が肩を組んで、雲雀ちゃんの頭を撫でた?!

 羨まけしからん!


 雲雀ちゃん、ボタンは上まで止めましょう!

 なんで二つも外しているの?!

 見えちゃうから、見えちゃってるから!

 エロい! エロエロ星人か?!


 教室の窓に張り付いて鼻息が荒いわたしは今日も雲雀ちゃんを見ている。


「なあ、お前、大丈夫? 顔真っ赤だぜ?」


 おうふっ。隣の席に座る男子に見付かってしまった。


「だ、だいじょぶデス」


 多分、顔は赤い。鼻息は荒いが、聴こえてはいないはず。

 よだれは……。大丈夫だった。

 鼻血……。確認。大丈夫、出していない。


 クラスにキモいヤンデレ腐女子の一人くらい居てもいいでしょう?

 いや、わたしの友人達は、普通のかわいこちゃん達デス。

 お腐れ様はわたしだけ。

 口下手で、引っ込み思案のわたしは大人しいと思われている。


 オタクで腐女子なだけである。

 


 俺の名前は雲雀。

 最近視線を感じる。


「バイバイ」


 えっとあの子は写真部の子だ。

 返事をする前に走って逃げた。


 長い髪をポニーテールにしている。

 翻るスカートから、健康的な脚が見えた。


「おい、雲雀、見えたか?! 白だったぞ!」


 ええ?! 俺の友人は太股の上まで見たらしい。


「こら! しゃがむなよ!」

「いや、チンコが勃起()ってるから立てねえ」


 俺は友人を蹴り倒して寮に帰った。



 文化祭の二日目、俺は友人とクラブ展示を見て回った。

 

「雲雀、模擬店でクリームパン食おうぜ!」

「ああ、アレすぐに売り切れるから、まだあるかな?」


「雲雀ちゃん! いらっしゃっい♪ 待ってたんだよ! 特別にお取り置きしてあげた、焼きたてクリームパンだよ! 買っていって~!」


 うわっ、女子が囲んで来た!

 

「オレ、オレ買いまーす!」

「俺も一つ下さい」

 

 俺と友人は難無く、スゲーいい匂いのふわふわクリームパンをゲットした。


「やっぱり雲雀と居ると女子がサービスしてくれるからお得だな!」

「おまけしてくれ無いんだから得じゃないだろう?」

「アレ? そういえば、そうだな。でも、焼きたてクリームパン食えたじゃん!」

「そっかぁ?」

「そうそう」


 あ、この間の写真部の女子が一人で展示番している。

 しまった、クリームパンを差し入れしてあげればよかったのに、俺の食いかけしか無い。


「クリームパン食べる? 間接キスだけど? どうぞ?」


 やべえ、可愛い。

 俺の食いかけ食わしちゃった!

 口ちっちゃくて可愛い。

 もぎゅ、もぐもぐ?

 なんだよこの可愛い生き物は?!


 やべえ! チンコが……。


「じゃあね?」


 友人が間接キスしたパンを狙っている。

 誰がやるかよ。

 俺は慌てて彼女が食べたところをかじった。


 あ、やべえ。彼女が見てたじゃん。

 俺も間接キスだ。

 アレ? 彼女『いいの?』って言ってた。

 俺と間接キス、オッケーって事?!

 やべえ。今、俺はきっと耳まで赤い。


「おい、雲雀。大丈夫か? 顔真っ赤だぜ?」


 前から歩いて来たクラスメイトが俺の顔を見て言う。

 はずい。


「おう。大丈夫、大丈夫だぜ!」

「雲雀は、女子と間接キスして、赤くなってんだぜ!」


 友人にバラされたので、取り合えず、背中を蹴り、俺の足跡をつけてやった。


 文化祭のキャンプファイアーが俺の顔を赤く染めている。


 写真部の彼女はもう帰宅していなかった。

 クラブ展示で、俺の後ろ姿を写した写真は、誰の作品だったのだろう。

 彼女に聞けばよかった。


 あれから彼女を遠くでよく見かける。

 何時も友達に囲まれている。

 女子は腕を組んで歩くんだと、彼女達をぼんやり見ながら思った。


 俺も彼女と腕を組んで歩きたい。


 彼女と話したのは、放課後の『バイバイ』と、文化祭のあの日だけだった。

 

 卒業式で彼女を見たのが最後。

 彼女は今、どうしているんだろう。


 同窓会のお知らせが来た!

 彼女に会えるかも知れない。

 返信ハガキは出席の一択だ!


 卒業後、初めて見た彼女は、見違えるほど綺麗で、声さえかけられなかった。



 

 

 

お読み頂いて有り難うございます。

誤字等、有りましたら申し訳ございません。



BLとエロしかポチらないところを、血迷いました。

青春ものデス。



学校に通えるようになりましたが、文化祭は未定デス。

好きな人に会える幸せな時をかみしめて。


今日の日があなたにとって、良い一日でありますように。

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