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銀の浄化  作者: コゲタ野菜
始まりのセイル
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6話 交差

 現在、見知らぬ風貌の集団が我が家の広間に集まっている。私は個性的な風貌と、町で周囲を見渡すと目に入るような極普通の人達や既に正装の人たちが皆、フィリップの説明を真剣に聞いているのを眺めていた。


 個性的な風貌と称した集団の中には今から魔物討伐に向かうかのような鎧姿で、わかりやすい――これでもかというほど目立つ武器、身の丈ほどある大剣や、槍、などを背負う者達。


 またはワイシャツとジーンズというラフな格好で二振りの剣を腰に下げている男や、今から登山に行きますと言わんばかりの装備を担いだ大柄の男。そして寒くも無い今の時期に焦げ茶色のコート姿で佇み、格好とは別に強い違和感を放つ女性――いや・・・・・・男かな? とにかくそんな集団だった。


 しっかりと給仕の格好をした男女数名を除いてあまりにも場違いにしか見えなかった。

 

 オカシイ、余分に採ったのは給仕のはずだと言うのに明らかに人数が合わない。


「コレ・・・・・・大丈夫なの?」


 私が父に問いかけるのは当然のことだと思う。・・・・・・たぶん。


「大丈夫だろ、少なくとも『鎧君』たちは警備、『給仕君』たちは給仕で決まりだろうな」


 テキトーにつけたあだ名から溢れ出る父のネーミングセンスはこの際置いておくとして、私はその意見に同意した。


 しかし、警備は多いに越したことは無いのだろう。けど武器携帯者を警備にすると必要な給仕が足りない。どうしたものかと私は頭を悩ませていた。


「そうだな、彼らも給仕だな」


 父が私に双剣の人とコートの人を目で指す。


 ・・・・・・まぁ、剣持ってるあの人はまともそう、と言うか去年会場で見た気もするし大丈夫かな? もう片方のコートの人は――まぁ、武器も無いし、護衛に回すなら剣の人とも思ったけど登山の人で決定でしょう・・・・・・大柄すぎるし。


 どうでもいいけど、私のセンスも大概かもしれない。


 とにかく、給仕の方はフィリップがいる。駄目でも何とかしてしまうでしょ。


 フィリップにできないことは無いのではないかと私は思っている。


 フィリップ万能説。彼に任せれば何とでもなる。


 この認識は身内どころかこの街での共通事項だったりする。


 まぁ、大半が半分冗談として捉らえているわけだけど。


 しかし、冗談じゃなく本気でできそうだから恐ろしい。


「そうね、大柄じゃないから予備の服のサイズとも合いそうだし」


「では決まりだ」


 そういうと父はフィリップのもとに向かい、警備と給仕ごとに分けて説明に入った。私はその様子を眺める。


 ふと、コートの人物に視線を向けると、やはり強い違和感を覚えた。見た目ではない漠然としたもの。


 しかし、ソレはただ強いだけであり、不思議と嫌悪感や恐怖といった印象は無い。私はただ、『何かが違う』という漠然とした言葉にできない感覚を抱きながらいつも通り帳簿をつけるために部屋へともどった。



<サイドチェンジ>


「おい、ジェノス。えらくあの嬢ちゃんに見られてたがなんかやったのか?」


 双剣の男がコート姿の男に小声で茶化すように話しかける。男は服装はラフで何処にでもいそうな様子だったが、服越しにでもわかるほどにしっかりと鍛えられた身体つきをしていた。短い金髪の立たせるような髪型、つり目で整った顔立ちをしており、腰にある双剣が無ければさわやかで活発な好青年だ。


 ジェノスは苦笑しながら双剣の男に視線を送り、すぐに視線を前に戻して言う。


「面識は無いはずですけどね。そういうケビンさんも見られていますよ? フィリップさんに現在進行形で」


 ケビンは給仕の注意事項を話すフィリップにあわてて視線を戻し苦笑いを浮かべながら「やっべぇ・・・・・・」と呟く。フィリップはジトッと二人に視線を向けていたが、小さく咳払いをすると再び説明を始めた。




 陽が昇り、日射によって室温が上がり始めた頃。一通りの説明と簡単なマナーの確認を終えて給仕の組は皆それなりに経験者が多くスムーズに進行し、皆は早めの休憩に入っていた。休憩中、広間には数名で集まって談笑や確認をしている。


 その集団から僅かに離れた二人の人物は壁に背を向けるようにして立ち話しをしていた。金髪の双剣男と黒髪コート、ケビンとジェノスだ。


「しっかしなぁ〜、何で俺はこっちにいるんだか」


 ケビンは深くため息をつきながらジェノスに愚痴をこぼしていた。


「まぁ、時の運と言うことで。私としてはこちらに配属されてうれしいのですが」


 ジェノスは苦笑しながらケビンをなだめる。しかしケビンは眉間にしわを寄せ拗ねるような口調で続ける。


「いや、だってよ・・・・・・。俺は警備として雇われているはずなんだぜ? だからこのかっこに子の装備なんだっつーのによぉ。・・・・・・ちゃんと正規の報酬もらえんのかね」


「あれ? あらかじめどちらかに決められているのですか? 私はどちらとも聞かされずに引き受けてしまいましたが」


 ジェノスはケビンの言葉に驚くような様子を見せる。それに対してケビンは呆れたような視線を送った。


「おい、そこは確認しておけよ。・・・・・・まあいいか。空きは確か警備のはずだったんだと思うんだが、実際、俺のときは警備が足りないってジャンが言ってたしな」


 ケビンはふと思いついたような顔をすると、眉をひそめ額に手を当てて言葉を続ける。


「いや・・・・・・てことは何か? あのあからさまに傭兵だっつー格好してるやつらの中に給仕が居るってか?」


 ジェノスも呆れたような表情だが、何処か面白そうに笑みを堪えていた。


「戦場で配ぜんするつもりなんですかね?」


「・・・・・・まったくだ。護衛じゃねーなら剣と鎧くらいギルドに預けてこいっつーの! おかげで俺が変に見られるだろうが」


 ケビンは腰に下げた双剣の柄に手のひらを当てて言う。


「アハハ。いやほら、手放せない理由があるとか――こだわりがあるのかも?」


 ケビンは「あるわけネーヨ、あんな安物ばっかで」とこぼし、後頭部を両手で抱え壁に寄り掛かった体勢で大きく溜息をついた。そのため息には諦めの感情と共に微かな安堵が含まれているようだった。


「ま、雇い主にとっちゃ俺らがこっちで正解だな。アレの誰かがこっちに来るよりは、だが」


「ケビンさん慣れていましたしね」


「俺にできないことはネーヨ。・・・・・・まぁ白状すれば去年ここで給仕やったことがあるだけなんだがな。警備以外のメンツなら何人か顔見知りだよ」


「へぇ、じゃあ――」


 ケビンとジェノスは「クククッ」「あはは」と笑いながら楽しげに語り合う。その様子を遠巻きに見ていた集団は言葉までは正確に拾えないため、場にそぐわない格好で楽しそうに話す二人組みにいぶかしむ様な視線を送るのだった。


「う・・・・・・生暖かい視線が」


「――それでな。・・・・・・どうした?」


「いえ・・・・・・なんでもないです」

「そうか、ならいいが」

 


<サイドチェンジ>


 帳簿とにらめっこしているうちにだいぶ時間が過ぎていたみたいだ。ふと机の上においてある古ぼけた時計を見るとあと半刻ほどで昼になる時間だった。


 そういえば今日はおじさんとあいつが着てるんだっけ。


 挨拶に行ってくるかな。おじさんのついでにあいつにも。


 ・・・・・・あくまでついでだ。


 私は卒業以来めっきり会うことが減った幼馴染の少年の栗毛色の髪と、穏やかな表情を思い出し思う。


 あいつも冒険者になるんだっけ? と、いうことは今日来てる人たちはあいつの先輩になるのか。


 う〜ん・・・・・・どうもしっくり来ない。


 鎧姿の面々を思い出しながら思う。


 腕はいいけど争いごとのイメージの強いギルドとはどうしてもつなげて考えることができないなと私は思いながら、厨房へと向かうのだった。





「父さん下ごしらえは終わったよー!」


「おう、んじゃスープのほう任せる!」


「了解〜」


「エドガーさん生地出来上がりました。保存庫に運んでおきますか?」


「そこにおいとけ! 次はそこの野菜を任せる」


「は〜い」


「おし、それがすみ次第バイトどもの賄いを仕上げとけ! 俺はエドかエリスちゃんに念のため確認を取ってくる! へますんなよ!?」


「「りょうか〜い!」」


 厨房に近づくと若干叫ぶような大声でのやり取りが聞こえてきたが。聞こえてくるのは聞きなれた二人の親子の声にはじめて聞く声が混ざっている。


 新しく料理人を追加したのだろうか? 確かに2人であの量を仕上げるのは大変だと思っていたけど、まったく、そういう手配をしたのなら何故、昨日話してくれなかったのか。 


 私は父に憤慨しながらも無茶をさせられている親子と新しい手伝い(仮定)に謝罪をするべく厨房に入った。





 異能や遺跡が登場するのはしばらく後だと思われます。


 あぁ・・・早く異能(超能力)を登場させたい。


 ちなみに、異能の存在は作中の世界で常識の知識となってはいますが、溢れかえってはいない設定です。



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