精霊の村の中で
全部書き直し中だけど、いつになったら終わるのやら…
魔の森に道に迷っていた俺、ベテラン冒険者すら、死ぬとされている森で高レベルの魔物の中、死を覚悟する日々を過ごしていた。
そんな中、謎の赤ん坊を拾い、更に迷っていたら、伝説の精霊に俺は出会った。
その精霊に案内されるまま、俺達は、伝説の精霊達が住む村に案内された…
俺が初めて精霊の村に入った時、俺目を奪われた。
神話に出てくる様な幻想的な風景…そう表現してもおかしくないだろう…それだけ神秘的だった…
だって、空を透き通った羽を使って、様々な色の髪の毛を靡かせて小さな体を使い無邪気に飛んでいる、小さな精霊達がそこら中に居たのだから…
(凄くきれいだ…)
俺はそれらの多種多様なきれいな精霊達に圧倒され、俺は目を奪われ、素直にそれらがきれいだと思った。
最初に会った、精霊さんも神秘的な雰囲気を醸し出していたが、これだけの数の精霊達が居るのを見て、
俺は、この景色に圧倒されていた。
ああ…そうだ、最初にあった精霊の事だが、俺は精霊さんと呼んでいる。
本当は、もっと普通の名前を呼びたかったのだが、なんでも、精霊の名前は契約時につけられる為、何も契約をしていない精霊は名前がないらしい。
その為、精霊にさん付けをして呼んでいるのだが
(…それって種族名だよな?いいのかそれで…)
そんなことを考えていると…
「どうだ?妖精や精霊達は?」
声がしたほうに向くと…そこには、最初に会った精霊…精霊さんがいた。
精霊さんも神秘的な雰囲気を発している…いや、大きさだけなら、他の精霊達以上に大きいため、それだけで、他の精霊達と一線を画していると言える。
そんな精霊さんの言葉に俺は引っ掛かりを覚えた。
(ん?精霊は良いけど…妖精てなんだ?)
後から教えてもらったのだが、なんでも、精霊の成長する前の精霊達の呼び名らしい。
しかも、精霊達とは違い、光っているだけの存在な為、最初は存在すら認識できていなかった。
確かに、初めて見た時小さな精霊の中にさらに小さな光があるなあと思っていたのだが、それが、妖精だったとは…
だが、この時の俺は、そんなことを知らなかったので、精霊さんに妖精のことを聞こうとしたのだが…
その時になって気づく…あれ?
(…精霊さんって…俺の前に居なかったっけ?)
そう、俺達を案内するために、精霊さんは常に俺の前を歩いていた…
だが、先ほど、声を掛けられ、後ろを見たら、精霊さんが居た…
慌てて前を見る…そこにも精霊さん…後ろを見る…そこにも精霊さん…
(ってえっ…?)
そして、気づく…精霊さんが二人いることに…
(…ってえええええええええ!!!!!!)
俺が心の中で叫ぶ…だって何で精霊さんが二人も居るの?!
「えっ双子?!」
と俺が混乱しながら、そう叫んだ!
いやどう考えても、双子だろう?!これって?!!
「違う違う…もういいだろうから、説明してやる。」
そういって、精霊さんが説明をしてくれた。
なんでも、俺達が、最初にあった精霊さんは、魔法で作った体で、本体は精霊さんの村に入ってから出てきた方だということを説明してきた…
…確かに、最初にあった精霊さんの体は、半透明になっていたのには気づいていたけど、まさか、魔法で体を作るなんて…
俺…そんな魔法見たことも、聞いたこともないんだが…
「まあ、この魔法は高度すぎるから、使えるものも限られるだろうからな、知らなくとも無理がない。」
そうですか…確かに、俺自身、魔法に精通しているわけでもないし、知らない魔法があってもおかしくないだろう…
だけど、魔法で自分の分身を作っちゃうなんて…
あまりにも驚きの連続で、思考を放棄し、ボーとしていると不意に…
「それで、これからどうする?お主がよければ、このままずっと住んでいてもよいのだが…」
と精霊さんに尋ねられた。
ってえっ?ずっとこのまま住む?
「えっいいんですか?いきなり、見ず知らずの俺達を村に住まわせて…」
そう、俺達は、この精霊さんに会って、本当に1時間も経っていない…
それなのに、いきなりそんな事を言ってくるなんて…
「…その背中にしょっている、赤ん坊…このまま、育てられると思っておるのか?第一、さっきからの話からして、この魔の森から外に出れるかも怪しいしな」
「っう…」
そう言われて、俺は言葉に詰まる…確かに…現状、このままこの村に住むしか手はない…
「それに、この後魔の森に出られてしまった場合、この場所がバレる可能性が高くなってしまう」
「そんな、俺はこの場所を伝えるつもりは…」
「魔法で強制的に自白させるだってあるのだ。大抵は魔法抵抗力が少しでもある物なら、その魔法自体失敗するのだが…お主どう見ても、魔法抵抗力が低そうだしな…」
「うぐ…」
その言葉に俺は、更に言葉が詰まる…
俺がどの程度、魔法抵抗力があるか解らないが、ゴブリンを倒せない程、身体が貧弱な俺…
どう考えても高いとは思えなかった…
「だから、この村にずっと住んでもらえれば、そんな事を心配しなくてもすむんだが…」
(確かに…そう言われれば、このままずっとこの村に住むのが正しいかもしれない…けど…)
一生この村に住む…
確かにそれも、一つの人生の選択肢だろう。
ここにいる精霊達はきれいだし…ずっとここにいるという選択肢はありかもしれない。
第一、魔の森で恐らく唯一安全な場所、そんな場所に俺は居る。
もし、この村から出て行くとしたら、魔の森を抜けて、街へと戻るしか手はない…
それに、本当に街へ帰れる保証すらない…
精霊さんの質問に俺は…
「…ごめんなさい、それはできません…」
そう答えた。その答えに精霊さんは驚いた顔をする。
そりゃそうだろう、普通に考えれば、絶対この村で過ごした方が安全で、衣食住が保証されているのだから…
もし万が一、街に戻っても、資金が無い為、その衣食住の保証すらない。
だが…俺は…戻らなくてはいけない…だって…
(まだ!奴隷を一人も買っていないのに!!あきらめきれるかあ!!)
そうだ!夢をあきらめきれるかあ!!
そんなすぐにあきらめるくらいなら!!
ゴブリンを倒せない時点で!!!村に引きこもっているわ!!!!
それでもあきらめきれずに…一途の望みを託して冒険者になったんだ!!!
今更あきらめきれるかあああ!!!!
「…何故だ?お主の実力では、この魔の森から出ることすら難しいはず、それなのに、どうして、この村の永住を拒む?」
…いや…それは…奴隷を手に入れると言う完全に私利私欲のためなんですが…
そんな事…精霊さんには言えないしなあ…
「…ある夢のためです…」
俺は、遠くを見ながらそう言った。
そう、まるで大いなる夢がある様な雰囲気で…
(うん…何かありそうな雰囲気は出しているけど…嘘は言っていないよな?)
それに、大きな夢って言ったら、俺にとっては、大きな夢だし…
…奴隷を手に入れるのって、金貨必要なんだよな…本当に俺にとっては夢の又夢の話だよなあ…
そんな事を考えていると…
「その夢はどうしても叶えなければいけないことか?」
そんな事を聞かれた。
「はい…」
そう答えるしかない…だって!俺にとっては、その通りなんだから!
(奴隷ハーレム…絶対に叶える!その為にこの森にやって来たのだ!)
…普通の人ならハーレムを作るより、命を取るだろう…
だけど、俺は諦めきれなかった…だからこそ、命の危険が無い安全な村を飛び出して、わざわざベテランの冒険者すら命の危険があるこの魔の森にやって来たのだ…
(目的が完全に私利私欲だけど…俺にとっては絶対に叶えなければならない夢だ!)
「…この村から一歩でも出れば、死ぬかもしれないとしてもか?」
「はい…!」
(死ぬ可能性があるなんて!そんなの冒険者になる時から覚悟していたし…今更だ!!絶対ハーレムを作って見せるんだ!!)
ゴブリンすら倒せない俺が冒険者になって死ぬ可能性を考慮しない訳が無い…
だけど、どうしても冒険者になってでも…夢を叶えたかった…
奴隷ハーレム…今更諦めきれるかあ!!!!
「…そうか…だったら、せめて、私が魔法を教えてやろう…その結果次第で、お主を村の外に出すかどうかを決める」
「は…えっ?」
精霊さんの申し出に一瞬呆ける…えっ何?魔法を教える?
「当たり前だろう!はっきり言って、今のままじゃあ、この村に一歩出ただけであの世行き…せっかく命を助けてやったのに、それじゃあ、余りにも目覚めが悪い!よって、私が魔法を教えて、この魔の森でもやっていけると判断するまで、この村から出ることを禁じる!!」
(…えっと…なんだか話が妙な方向に行っているぞ…)
「えっと…」
「返事は?!」
「はい!!」
精霊さんの気迫がこもった問いかけに思わず返事をしてしまう俺…
…それから俺は…精霊さんの指導の元、魔法の練習に明け暮れることになるのであった…
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……精霊の村へやってきて一年、俺は魔法の習得に専念した…。
おかげで、俺は火の玉、水の玉を打ち出す魔法を覚えた!!
…威力?…ゴブリンに怯みをいれられる位の威力らしい…
……精霊さん曰く…上手く使って、運が良ければ、ゴブリンと相打ちが出来るだろうと言われた…
………いや、凄い進歩したんだよ!前何て火は焚火に火を付ける事しかできず、水は飲み水しか確保しか使えなかったのだ!!
それに比べたらすごい進歩の…はずだ
…村に居た同年代の人達は、もっと強い魔法を使っていた様な気がするけれど…
まあ、どの道、こんな威力じゃあ、魔の森に住んでいる魔物に通用しないんだろうなあ…
…こんなんじゃ、精霊さんの許しが出るのは…いつになるのやら…
頑張って魔力量を増やす訓練もしているのに…一向に増えないし…
ああ…あと何年したら…普通に魔法が使えるのやら…
俺が落ち込んでいると…
「あっ!お父さん!!」
遠くから声が聞こえた…その声のほうを見ると、そこには、少女がいた。
身長は100㎝、目の色は赤く、髪の色は黒い…服は、蔦や草で編まれた服を着ており、肌は透き通るほど白い。
その人物は、とてつもないスピードで、俺の方に向かってきて俺の腰に抱き着いた…
…この人物が誰かって?…赤ん坊だよ…魔の森で拾ってきた!!赤ん坊!!!
何故だか、この1年でここまで成長してしまいました…。
(いや、この成長速度、明らかに異常だろ…)
まあ、魔の森に捨てられていた子供だし、普通じゃないのはわかっていたが…ここまで成長が早いとは…本当に、何者なんだ…この子?
「お父さん?どうかした?」
(…まあ、かわいいからいいか!もう今更だし!!)
「いいや、何でもない…それで、どうしたんだ?フウ?」
フウとは、この子の名前だ。
精霊さんにこの子の名前を付ける様に言われて…俺のない頭を使って頑張って付けた名前だ。
名前の由来?…俺がムウだし…ムをフに変えれば、女の子らしいかなって…
…余りにも安直過ぎた気がする…誰だよ!こんな名前つけた奴…俺だよ!!
…まあ、フウもこの名前を気に入っているみたいだし…
うん!名前の由来なんて関係ないな!!フウが気に入ってるのならよし!!
「お父さん!!見て!!」
そんなことを考えていると…フウが自分の後ろを指してきた…
そこには…身長を5mはあろうかという程の大きなクマの魔物の死体が宙に浮いていた…
(……いや本当は…さっきから気づいてはいたんだよ…)
5mもある魔物…そんな物、一目見ればそこにあるなんてどんなに目がおかしくても解らない訳が無い…だけど…
(ただ…俺が触れたくなかったんだよ…絶対…フウが狩って来たんだよな…この魔物…)
…この元赤ん坊…何と、もう既に魔法を使えます。
しかも、この魔の森に居る魔物を倒せるほど強くなっています…
…本当になんで…こうなったんだろうか…?話は一年前に遡る。
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「じゃあ、あの的に当ててみろ」
魔法の練習を始めてすぐ、俺にいきなり魔法を的に当てろと精霊さんが言ってきた。
俺自身、攻撃魔法なんて一度も成功させたこともないし、そもそも攻撃魔法の発動すらできないので、無理だといったのだが…
「とりあえず、魔法の適性を見るだけだ。とりあえず、放ってみようとするだけ放ってみろ!」
そう言われて、俺はしぶしぶ従った。
だが、生活魔法ですら、苦労して身に着けた俺は、この攻撃魔法を成功出来る自信が全くなかった…
(とりあえず、適性を見るだけって言っていたんだ!出なくてもやるだけやってみよう!!)
もう半分やけくそ気味に、魔法を放つ…次の瞬間…
俺の手が光った…
(はっ?)
次の瞬間…
ドーン!!
とてつもない轟音…そして、目の前には…あったはずの的が無くなっていた。
「えっ?」
何が起きた?
確か俺はさっき…魔法を放とうした…
俺が放つ魔法だ、マッチの火程度の火しか出ないだろうと思っていた…
だが…結果は…
…目の前には…さっきまであったはずの的がなくなり、柄の部分だけが残っている…これは……
(どういうこと?)
俺が混乱していると…
「駄目だ!!これじゃあ練習にならん!!!魔力を乗せるのをやめんか!!」
「へっ?」
俺が混乱していた為、素っ頓狂な声を出して、精霊さんの方を向く。
「…お主に言っておるのではない。背負っておる赤ん坊に言っておる」
(何を言っているの?精霊さん…赤ん坊に言っている?)
俺が訳が解らず頭の中で?マークを作っていると、精霊さんが説明をしてくれた。
…何でも、先程まであった的がなくなったのは、魔法が当たって消滅したらしい。
しかも、魔法を放ったのは俺であるということであった。
…ここまで聞けば…
(俺って魔法の才能があったんじゃん!!)
なんて思ったのだが…それは違った…
何でも、さっきの魔法、俺の魔法に赤ん坊の魔力が乗せられて放たれた魔法でその所為で的を消滅させるくらいまでの威力になったらしい。
「…えっと、赤ん坊でそんなこと高度そうなことって可能なの?」
よく分からんが、村でそんな事が出来る何て聞いた事すら無いぞ!
「普通なら不可能だが…赤ん坊が発している…この魔力量…恐らくその赤ん坊…私より、魔力量が多いだろう」
へっ?精霊って魔法を扱うすごい種族だって聞いてたんだけど…
だから、いろんな人達が精霊達と契約をしたがってると聞いた事がある…
まあ、結局、伝説と呼ばれている程、精霊は人間の前に姿を現さないから精霊すら見たことが無い人がっ殆どなんだけど…
そんな伝説の精霊…いや、他の精霊達より、大きな身体を持っている精霊さんより、魔力量が多い?!どんだけ魔力が多いんだよ…
「…しかも、魔力量が多いだけじゃなく…どうやら本能で魔法を使っておる…普通なら、魔法を使える様になるのは、どんなに早くとも、子供の段階…何も教えていない赤ん坊の状態で使えるとは…言うなれば天才って奴だ…」
「はっ?」
…なんだ…その天才児…本能で魔法を使うってどういうことだよ!!
俺なんて理屈教えられても魔法使えないのに!!
…というより、なんで…
「そんな天才児の赤ん坊が、魔の森に捨てられていたんだ?!!」
「私に聞かれても知らん!!ちなみに、さっきの魔法のほぼ全てがその赤ん坊の魔力で放ったからな」
と精霊さんに言われた…(´;ω;`)
そうか…やっぱりさっきの魔法って…俺の魔法じゃなかったのか…
一瞬でも期待した自分が悪かったよ…
…だけどさあ…伝えるにしても…もう少しオブラートに包んでくれてもいいじゃない?!!
俺は、精霊さんの言葉にただただ、項垂れるだけであった。
その後、精霊さんは赤ん坊に対して、俺が魔法を使う練習の時に魔力をのせるなと何度も精霊さんは言い聞かせた。
(赤ん坊にそんなことを言って、本当に伝わってるの?)
そんな疑問があったが、次に放った魔法は俺がいつも放っているマッチの火サイズの魔法であった…
…解っていたけど、さっき放たれた魔法と雲泥の差じゃねえか…
何だよ…マッチの火って…
よし決めた!!今まで俺自身魔法なんて使えないって決めつけていたけど…
(さっきみたいな威力は出せないだろうけど…せめて、魔法を前にだけでも飛ばせるようにしてやる!!)
そうこの時に俺は決心をした…
赤ん坊がこの後…どれ程急成長するかということを知らずに…
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それから、俺は魔法の練習をする片手間赤ん坊の世話も同時にするようになった。
一応、村には、様々な、妖精や精霊たちがいるので、身長は十数cm、でかいのでも、十数cmしかないので、赤ん坊の世話をするには小さすぎた…
しかも、性格も自由奔放のため、任せると不安で仕方がないということで、妖精や精霊達には頼まなかった。
まあ、精霊さんの大きさは、別だが…
最初にあった精霊さんの身長は俺よりちょっと低いか同等の大きさがある(俺は小さくないぞ!周りがでかすぎるだけだ!!)
その精霊さんは結構な世話好きで赤ん坊の世話もしようかということも本人から言ってきたのだが…
(俺が世話をしなければ奴隷にする教育が出来ないだろうが!!)
という考えから、俺は結局、精霊さんの申し出を断ることにした…
まあ、結局、周りには、自由奔放に動き回る、妖精や精霊達が居るから、そんなことできなかったけどね…
万が一、妖精や精霊さん達を通して、精霊さんにバレたらと…考えると…どうしても出来なかった
だから、普通の赤ん坊の世話しかしなかった…
ちなみに与えた食事は蜂蜜、果実、食べられる草の出汁を与えていた。
(注意:蜂蜜には腸内菌がいる為、乳児には与えてはいけません、現実ではまねしない様に)
赤ん坊は、好き嫌いもなく、俺が与えたものも、全て残さず食べていった…
そういえば、排泄物が一向に赤ん坊から、出てこないのだが…大丈夫なのだろうか?
まあ、具合が悪い様子も無いし…大丈夫なのだろう…うん!本当にこの子は謎が多いなあ…
そうして、赤ん坊の世話をしている内に一カ月の月日が流れた…そこには…
「きゃっきゃ!!」
俺に背負われながら練習用の的を自分で魔法を放ち、一瞬で的を吹き飛ばす赤ん坊が居た…
…なあ、この一カ月で何があった?!
何で?こんな威力の魔法をボコすか打てるの?!!
まだ!フウ!赤ん坊だろう?!
「ほう、もうこれだけの精度で魔法を使えるようになったか…フウは」
いやいや!これって普通なの?精霊さん!当たり前みたいに受け止めているみたいだけど!!
絶対普通じゃないだろうが!!そんな思いは精霊さんには伝わらず…代わりに…
「それに比べて…」
と言って…俺の方を向いてくる…解ってるよ!!ほら!!
俺は全力で魔法を放つ…
手のひらサイズの火が一瞬出たと思ったら消えた…
「………一応進歩しただろう大きさが!!!」
やけくそ気味にそう叫ぶ…そうでもしなければやってられん!!
「火を前に飛ばせない段階で論外だ!!!」
…ごもっともな意見で…
「お父、がんば」
赤ん坊に慰められる俺…ぐうの音も出ない…
ちなみにこの時赤ん坊は片言だけど喋れるようになっています…
なあ、こんなに赤ん坊の成長って速かったっけ?
そんな疑問を抱きつつ魔法の練習に励んでいった…
それから更に一カ月後…
「……であるからして」
俺達は魔法の講義を聞いている。
いや俺達では無いな…正確にはフウが聞いている。
「……ってなあに?」
「……とは……………である」
やべ全然わからん!!というか赤ん坊に話す内容じゃねえだろうが常識的に考えて!!
…普通そうだよね?…
ちなみに俺は話が全然分かんないので寝ています。
かたや赤ん坊で頭脳明晰、かたや大人で凡人…どうしてこうなった!
って赤ん坊で頭脳明晰って何だよ!!
まだ言葉すら話せない時期じゃないのかよ!!
確かに成長スピード速いなあって思ってたけど!!
というより、これじゃあ…奴隷にする為に俺が教育するというのももう無理じゃないか?
赤ん坊に奴隷にするための教育って、自我が芽生える前にしないといけないはず…
…前から思っていたけど…これってもう!自我が芽生えているとかの前に大人顔負けの知識すら有しているよな?!
これで、奴隷にする為の教育をフウにしようものなら、嫌われるどころか…精霊さんにバレたら、邪悪な心を持っているとされて、森の外に一人で追い出されるだろう…
…もう、フウの奴隷計画とん挫したし、こうなったら教育も含めて全部精霊さんに任せた方がいいのかなあ?
そう思って、ある日その事を精霊さんに言うと何故だか俺の背に居たフウが泣き出した。
「はあ、お主は少し親としての自覚を持った方がいいぞ」
「そんな事を言われても、俺…この子の教育なんてできないし…」
知識量すら今の状態ですら負けている現状、俺が教えれる事なんて何も無いと思ったから、自然とそんな言葉が出た…
「…この子が成長が速いのは知っておろう、なのにお主から離れない理由を考えたことは無いのか?」
「それは赤ん坊だからじゃないのか?だけど、親代わりなら…精霊さんでも…」
そういうとフウ更に涙を流し始めた…
子供みたいに大きな声は出さずに…嗚咽も出さない…
だが、ただ、ただ、大粒の涙をフウは流す…
「フウの涙の意味を少しは考えろ…」
…えっと、そういえば、フウは何で泣いているんだ?
いつも泣いたことなんてなかったはずなのに…
赤ん坊で泣かないっていうのも何かおかしい気がするけど…何で今になって…
「はあ…本当に気が付かんとはなあ…まあ良い!とにかく、お主が最初に世話を全部すると言ったのだ、やってもらうぞ!!」
まあ、確かに、奴隷にしようとして、全部するって精霊さんに言っちゃったけど…
もう、フウ…強さだけなら、俺の手を貸さなくても生きていける位…強くなっている気が…
そんな思いも届かずに、結局、俺は精霊さんに言われるがままフウの世話を続けるのであった…。
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そして、それから4か月、村に来てから半年、フウは様々な上級魔法や精霊さんのオリジナル魔法、様々な魔法を習得していった。
…俺の成長…?…察してくれ…。
そんな修行をしていた日々の中である日…
「のう、フウ…お主もう自分の足で歩いたらどうだ?」
そんな事を精霊さんが言ってきたのだ…っておい、まだフウは赤ん坊なんだぞ!!
出来るわけ…
「…言おう言おうと思っておったんじゃが…多分結構前からフウは自分の足で歩けるようになっていると思うぞ」
「えっそんなわけないじゃないか…なあ、フウ?」
そう言う、俺だが、フウは何故か、下を向いている…
「…これ以上強くなるには森の外に出なくてはいけない、フウだけならまだしも、ムウはまだ、森の外には絶対に出れん!!」
まあな…その通りなんだけれど…そうはっきり言われると流石にへこむぞ…俺…
「お主らが以前、街に戻ると言っておったが、今の強さのままでは、この男を守りながら、外には出られんぞ!」
俺がフウに守られるのは決定事項なんだな…
「のう、ムウ、もう諦めてこの森で住むという事は…」
「絶対に嫌だ!!!」
精霊さんの問いに急いで俺は答える。
何でだよ!!まだ奴隷一人も手に入れてないんだぞ!!!
夢のハーレム生活の第一歩すら進めていないんだぞ!!!!絶対!諦めてたまるか!!!
「…という訳じゃフウ、お主が強くならければ恐らくこの男すぐこの村に出たら死ぬぞ…」
ぐさ!!俺の心に100のダメージ
「多分フウの助けが無ければ魔物に会っただけで死ぬ、多分ゴブリンだろうが死ぬ」
ぐさ!!!俺の心に更に100のダメージ
「しかも、この付近に居るのがドラゴンと言った大型の魔物だ。この男がここまで来れたのは単に運が良かっただけ奇跡と言ってもいい…はっきり言って、2度目の幸運など絶対無い」
…へへもう受けるダメージすら…
「だから、赤ん坊のお主が強くなるしかない!!」
あかんぼう…
ぐさ!!!俺の心に1000のダメージ…
そうか、俺、赤ん坊にすら頼らないといけないほど弱いのか…
俺が心のダメージを受けたせいで地面に這いつくばっていると…
「…解った…お父さん、今まで背中に乗せてくれてありがとう」
そう言ってフウは、俺の背中から降りて歩いて精霊さんの所に行った…
(…って!はあ?!お前本当に歩けてたの???!!!)
俺が口をパクパクしていると…
「今日から外で特訓じゃな」
そう精霊さんが言った。
なあ精霊さん…心のダメージを受けた俺に対するフォローは無いの…?
というより、フウが歩けたことに対して、凄い衝撃を受けているんだけど…
「お父さん!私頑張るね!!」
(…フウよ、今は俺はお前のその笑顔が一番のダメージだよ…)
精霊さんに認められ、魔の森に抜ける為には、最早フウに頼らざる得なかった現状に対し…俺は心の中で大ダメージを受けた…
それから、更に半年…フウは様々な魔物を狩ってきた。
中には10mを超えたドラゴンを狩って来た事もあったなあ…
それも、一回じゃなくて…何回も何十回も…というより、数えきれない位…
ははは………
なあ今更ながら、俺、この子の父親名乗ってていいの?