和解
私ファダは化け物じみた魔力を持つフウの主人であるあの子供に張られている結界が自ら張っているのではなく、第三者によって張られている可能性がある事に気づき、その確認の為、結界を張ったと思う人物に会いに来た・・・
「確認したい事がる、いいか?」
もちろん、奴隷であるフウ本人である・・・
「何でしょうか?」
「お前の主人に結界をかけているのか?」
「ええそうですよ?」
・・・あっさりと認めたな・・・だとしたら、
「・・・それじゃあ、お前の主人が弱いという事も知っているのか?」
「ええ、そうですよ・・・お父様の力はゴブリンと同じ位です・・・」
・・・・・あいつが言っていたのは本当だったのか・・・自分がゴブリンと同じ位の強さだという話は・・・・・
・・・考えてみれば、結界は強すぎるという位丈夫だ・・・恐らく、私の全力の魔法を放ったとしても傷1つつかないだろう・・・・それを常に張っていると言うのは過剰防衛だとずっと思っていたのだが、彼自身が弱く、それを彼女が守る為にずっと張っていたのなら納得する・・・それを維持できる魔力量はすざましいが・・・
今になって思えば、あの結界の出来はすざましかった完璧と言ってもいい・・・あの子供の脅威を測る為に遠くから解析をしていたのだが、すざましかった・・・
1つ目はあの結界以外の魔法の強制解除・・・恐らくその機能により、隠蔽魔法等が張っていた、クロリ―の部屋の魔法を解除させて部屋の中に入ってしまったのだろう・・・・・そう考えれば、あの子供が気づいていなかったのも筋が通る、自分にそんな結界が張られている事すらあの様子では気づいていなかったのであろう、解るはずが無い・・・
2つ目ある一定の衝撃や力を全てシャットアウトする機能、触るとかそういったコミュニケーションの範囲による接触は普段通り行えるが、攻撃と言った明らかに傷つけられる力に対し、あの結界は全てをシャットアウトする。これにより、事故による怪我もあの子は出来なくなっている・・・・・・あの子は気づいているのだろうか?この魔界に来て、ゴブリン位しか闘う力が無いのに傷を全く追っていないという事に・・・・・
3つ目結界の認識阻害、私は何とか解る事が出来たが、普通の魔族は結界が張られている事すら気付かないだろう・・それ位、あの結界を識別するのは困難だ・・・私が第三者に張られていると言う事実に気付かなかったのはこれの所為だ・・・
・・・・・・・・・というより、この結界は何を想定して張られているんだ?下手するとドラゴンの攻撃すら傷が付かない結界だぞ・・・何より・・・
「・・・・・・・・・・・・一つ確認をしたい、なぜお前はそいつの奴隷になっている?お前の方が強いのだろう?」
そこが一番気になっていたことだ・・普通奴隷になるという事はそいつに服従すると言う意味を持っているはずだ・・結果、強い者が主人になる・・・それが普通のはずだ!
「ねえ、お父様の事をそいつって言いました?」
「えっあっすまない・・・・」
・・・すげー睨まれている・・・だって、あの子の名前知らないし・・・って話がそれている!!
「・・・だが!何故それ程の力を持っているのに!何故従っているのだ!!」
「?力を持っているのは関係ないんじゃないんですか?」
「何?」
どういう事だ?
「従いたいそう思ったから奴隷の契約を結びたいとお願いしたのですから・・・」
・・・・・・・・・こいつは・・・・・
「・・・お前自身から奴隷契約をしたいと言ったのは本当だったのか・・・」
普通奴隷になりたいと言う酔狂な人物がいない・・その人物に完全に支配されてしまうからだ・・・命、体の自由、その他もろもろだ・・・契約内容によって奴隷の待遇は変わってくるが、彼女の奴隷の紋章はどう見ても、完全に物として扱われるレベルで命令できる程の契約がされているのが見て取れる・・・
あのレベルの紋章は、主人の命令は絶対に服従、破れば下手をすれば命に係わるレベルだ・・・命令をしなくても、主人が死ねばフウと言う子供も死ぬそこまでのレベルの契約がされている・・・
まあ、私位、魔法に精通していなければ気づかないだろうが・・・魔王様も気づかないのではないだろうか・・・それだけ、あの奴隷の契約による結びつきは強く・・・だからこそ、私は彼女の考えが理解できず・・・頭が沸騰しそうだった・・・
「あいつに操られている訳では・・・・」
私は思わずそう言っていた・・言わなければ、私自身の今までの常識が壊れてしまいそうだった・・・
「?お父様に洗脳する為の魔力ってありましたか?」
「・・・偽装しているとか・・・」
「偽装の痕跡ありました?」
・・・確かに、今にして思えば、あの障壁以外の魔力をあの子供から感じたことが無い・・・私自身隠蔽魔法でごまかされていると思い込んでいたが・・・魔王様にかけられた隠蔽された呪いの魔法すら解いた事がある私が痕跡すら気付かない事などあり得ない・・・・・・
私は、しばらく沈黙した後、ずっと疑問だったことを口に出した・・・
「・・・・・だったら、何故クロリ―はあいつに懐いて・・・」
そうだ、洗脳でないのなら、何故クロリ―はあんなに懐いているのだ!!
「解らないのですか?」
「な・・・・に・・・?」
「本当に解らないのですか?」
この言い方・・・まさかこいつには解ると言うのか?
「解らない・・・・・お前には解るのか?」
「何となくですが・・・」
そう言い放った・・・何だって?・・・どうしてそんな事が・・・
「クロリ―は最初から貴方に懐いていなかったのですか?」
「いや・・・」
「どの時期にあんな風に?」
「・・・・・ある人に騙されてな・・・その時に色々酷いことをされた・・・それからだ、あいつが人に触れられると、癇癪を起すようになったのは・・・」
私は淡々と答える・・・本当にこいつは答えを出してくれるのか?そういった、期待と不安でいっぱいいっぱいだった・・・
「癇癪を起した時にどう対応したのですか?」
「・・・・・・・・・封印して閉じ込めた・・・・」
「じゃあ、それが原因ですね!」
そう、断言された・・・・
「なっ?!」
「あの子は人に酷いことをされて、混乱していたのでしょう・・・それで、近くにいた貴方に助けを求めた、だけど、貴方はその手を取らずに彼女の癇癪を恐れて閉じ込めてしまった・・・違いますか・・・」
・・・何をこいつ・・・解ったような口を聞いて・・
「だったら!!どうすれば良かったんだ!!あいつの力は強すぎて!!近づくだけで死にかけたんだ!!それをどうしろと・・・・」
私は声を張り上げた・・・口答えをしたら、殺されるかもしれない・・そんな事は頭の中から吹き飛んでいた・・・
「どうすれば良かったかは知りませんが、貴方は彼女の力を恐れて封印するという手段を取って、彼女と向き合う事を諦めたそれが貴方と彼女が互いに怯えている原因です・・・」
「・・・・彼女が怯えている・・・・」
「ええ、というより、お父様以外の生き物全部に怯えているんじゃないんですか?あの子?」
そう言われて気づく・・・あの子があの日以来・・・ずっと泣き顔しか見ていないことを・・・
「・・・だったら、なおさら、何故、あいつがクロリ―を懐かせることが出来たんだ・・」
そうだ・・・それだったら、あいつにだって、怯えるんじゃないか・・・
「・・・・・・お父様は懐かせるとか、そんな事を考えていませんよ・・・ただ、あの子が泣いていただから、泣き止ませようと努力しただけです・・・」
「・・・・・そんな事をしてもあいつの癇癪が起こしたら・・・・・・」
「何であの子は癇癪を起すのでしょうか?それは怖いからじゃないんですか?ファダ貴方が、クロリ―に近づくとき、貴方自身怯えていませんでした?」
そう言われて、気づく・・・私自身、クロリ―に接する時、いつもあの子が癇癪を起した時を思い出し、その事に対し怖がっていたことを・・・どんなに恐怖を無くそうとしても、消せなかったという事実を・・・
「怯えは他者に伝わる、恐らく彼女が貴方が怖くて攻撃したんじゃないんですか?」
・・・・・・・・・そうか、私はあの子に怖がられていたのか・・・
「お父様は違います・・・泣き止んでいるから泣き止まそう・・そこに怯えとかはありません・・・純粋にその子を泣き止ませたいそれだけで動いたのですから・・・」
・・・・・・・・・そうか・・・・・・・あの子は、ただ、私の赤ん坊を泣き止めそうと向き合った・・・それだけで、あの子は私の子から信用を勝ち取ったのか・・・・・・・・
「とにかく私が言えるのはそれだけです。納得しましたか?」
「・・・・・・・・・・・・なあ、私は逃げていたのか・・・・?」
「その答えは解りません!私は貴方ではないので・・・」
はは・・・・手厳しいな・・・こんな年端もいかない子供に説教されるなんて・・・・・・・だからこそ、大人のはずの私が逃げる訳にはいかない・・・そう私は決心し走り出す・・・そう、彼の元に・・・
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「キャッキャ!!」
・・・・・・・・・・・俺は何をしているんだろう・・・魔界に来てやったこと、フウの頭を撫でる、子育てをする・・・・・以上・・・・・・・・本当に何をしているんだろう・・・・俺・・・・・・
「ぜえ、ぜえ、ぜえ・・・」
あっファダさんが戻って・・・・・・・何か息切れてない?大丈夫?
「お願いがある、もう一度、抱かせてもらえないか?出来たら、一人で・・・・・」
そう言ってクロリ―を見てくる・・・別にいいですけど、
「この子が震えて無理そうならやめますよ・・・」
そう言ったら、向こうは頷いた・・・さっきと違って何か素直だなあ、まあ、納得してくれたんなら別にいいや、俺はファダさんにクロリ―を抱きかかえたまま近づく・・・・クロリ―がまた震えだしている・・・・・まあ、何とかなるか・・・・
ファダさんに近づいた後、また、ファダさんに抱き着く・・・・・
「えっあっの渡してくれれば・・・」
「まだ、クロリ―が震えています・・・ちょっと待って・・・」
クロリ―の震えは・・・うん、ましになって来た・・・うん?俺とファダさんを交互に見ているな・・・・・そっちに行きたいのか?俺はとりあえず、頷いてみる・・・クロリ―は首を傾げている・・・
「行ってきな・・・」
そう言うと、クロリ―は初めて、ファダさんの胸に飛び込んだ・・・次の瞬間・・・彼女はクロリ―を抱きしめ、大粒の涙を流し始めた・・・・・・・・・・
「・・・・・ごめんね・・・・ごめんね・・・・・・」
そう言って、抱きかかえる、ファダさんを見て、俺はこの場に居られずらくなり、廊下に出ようとした・・・・・・だが、次の瞬間、背中に何か張り付くの感じた・・・
「?何だ・・・ってクロリ―?!」
えっお前・・・ファダさんに抱きかかえられていたよな・・どうして背中に張り付いている?
「・・・転移魔法・・・」
ファダさんがそう呟く・・・・そうか、お前・・転移魔法を覚えたか・・・フウ何回も使ってるの近くで何度も見たからなあ・・・・・・・・・なあ、転移魔法ってそんなホイホイ覚えられるものだっけ?
俺は、とりあえず、クロリーを背負いながら、ファダさんの所に行く・・えっ驚かないんかって・・フウとし過ごしていたらこんなの日常茶飯事だ!!
「ファダさん、お返し・・・・」
「いや、もういい・・・・すまない・・・もしかしたら、もう二度と抱けないのではと考えていたから、嬉しくてな・・・・・・・ありがとう・・・」
そう言った、ファダさんはどこか憑き物が取れたように晴れ晴れとしていた・・・いやいや!この子貴方の子でしょう!引き取ってよ!!俺この後、久しぶりに一人でのんびりするから!!
「そういえば、君の名前を聞いてなかったな・・・教えてくれないか・・・」
・・・何かもう、何を言っても無駄な様な気がしてきた・・・というより、ファダさんに名前認識されていなかったの俺!!確かにあいつと過去いつしか言われていなかった様な・・・というより、名乗っていなかったな
「ムウ・・・ただの人間のムウだ」
・・・・・・・・・・本当に何でただの人間である俺この魔界に居るのか・・・確かに一緒に行くって決めたの俺だけど・・・結局この魔界に来て俺何もしていない・・・・・・・・・・・・誰か!存在意義を教えてくれ!!!
この人は多分、自分がやった事の重大さを気づかないと思う、一生・・・




