ファダの苦悩
あいつ等がやって来て一カ月・・・私は、何とかクロリ―の洗脳を解こうとやっきになっていた・・・だが、どうしても洗脳の痕跡すら解らず、手が出せずにいた・・・しかもあいつ等いつも3人で行動している為、物理的にも手が出せない・・・手詰まり状態だ・・・・・まあ、一人になったからといって、勝てるか解らないが・・・
そんな日々を過ごしていると、あのクロリ―を洗脳した子供が一人でクロリ―を連れて廊下を歩いているのに気が付いた!チャンスだ!!私は意を決して話しかけようと・・・・・・・
「キャッキャッ!!」
・・・・・・・・・・何でそんなに楽しそうなの?何でそんなに嬉しそうなの?何で笑っているの?何で私にその顔を向けてくれないの・・・?
「・・・・・何で何で何で・・・・・・・・・・・」
私は知らず知らずの内に口に出していた・・・私はクロリ―のあの笑顔を見て心が折れ、自ら話しかけられず、ただ後ろから付いていくことしかできなかった・・・
「・・・・・何で何で何で・・・・・・・・・・・」
と呟きながら・・・そんな風に後を付けていると・・
「あのう・・・・・・」
洗脳野郎が私に話しかけて来た・・・
「何だい!洗脳野郎!!今度は私を洗脳しようって言うのかい!!」
私は虚勢を張りながら、大声を張り上げる!
「この子、貴方の赤ん坊何ですよね・・・」
・・・・こいつは何を言っている?
「そうだ!それをお前が・・・」
お前が取り上げたんだろう!!そう言おうとしたとき、あいつが私の近くまで来て・・・
「じゃあ、返しますね!!」
そう言ってきた・・・はっえっ?こいつは何を言って・・・返してくれるのか・・・だが、結局、そいつは言葉だけで返すそぶりをみせない・・・
「何だい!返すと言って!!やっぱり・・・」
「ファダさん・・クロリ―震えていますけど、何かありました?」
・・・震えている・・・クロリ―が・・・・・そんなの理由は一つしかない・・・・
「・・・・・・・・・・・・ああ、そうだ・・・昔、ちょっとな・・・・」
クロリ―はやっぱりあの出来事を今でも引きずって・・・
「ファダさん、ちょっと座ってくれませんか?」
私が物思いにふけていると突拍子もないことを言われた。
「はっ?!何で?」
何で廊下のど真ん中で座る必要性がある?
「いいから!」
結局、目の前の子供の勢いに釣られ、私は座ってしまう・・・
「座ったよ・・それで・・」
「そのままでいて下さい・・・・」
そう言ってその子供は、私を抱きかかえて来た・・・はっ?えっっちょっと・・・私が混乱していると、また抱きしめる力が強まる・・・
「大丈夫・・・・大丈夫だから・・・」
そんな彼の言葉を聞き、私は頭が混乱しながらも、心の中では別の思考が生まれていた・・・
そう言えば、誰かに抱きしめられたのっていつぶりだろう・・・・・子供の頃、母親に抱きしめられた以来かなあ・・・何だか安心して・・・じゃない!!
「お、お前・・・」
「?はい?」
「な・・・何を・・・」
「ああ、クロリ―が何故か俺なら大丈夫みたいなので、俺と一緒なら他の人が一緒でも震えが収まるんじゃないかと思って試してみました!」
何だかもっともらしい事を言っているが!違う!!こいつ今私を洗脳しようとしたな!!
そうでなければ、私があんな思考になる訳が無い!!
「いいから離れろ!!」
私は慌てて、体を引き離す・・距離さえ離れてしまえば、洗脳も効かないはずだ!!
「ぜえ、ぜえ・・・ふっふ、私も洗脳しようとしたようだが、失敗したようだな!!はっはっは!!」
よし!さっきまで感じていた。安心感も!幸福感も無くなった!!こいつの洗脳に打ち勝ったのだ!!
「・・・・洗脳何てしてませんよ・・・」
・・・こいつはどうしてここまでイラつかせる!
「はっ嘘を付け!!そうでなくてはどうしてクロリ―がそんなに懐いておる!私なんてこの子が起きている時には指一本触れなかったのに!!」
自分で言ってて悲しくなってくる・・・私はそう言って、思いっきり涙を流した・・・・
「えっと、ファダさん自身、クロリ―に触ろうとしたんですか・・・?」
「ああ、だがな毎回!魔力暴走を起こされて!何度も何度も死にかけて!!しょうがないから苦渋の選択で封印をしたのに!!何で!!お前は!!抱きかかえることが出来るんだ!!!」
ぜえ、ぜえ・・・叫びすぎて喉が痛くなってきた・・・
「だったら、さっきみたいに俺が抱きかかえていれば、触れることが出来ますよ」
「・・・・・また、洗脳するつもりか?」
こいつの言葉に乗ってはいけない・・・また、さっきみたいに洗脳されそうになってしまう・・・
「しませんよ!!というより俺洗脳の仕方なんて知りませんし!!」
はっ騙されるか!!
「ちょっと外に出て下さい・・・」
そう言うと、子供は外に向かって歩き出した・・・・・・ここまで結局、あいつにいい様にされていただけで、何も情報すら手に入れていない状況だ・・・・・・行くしかないか・・・・・・
私は気合を入れて外に行くことにした・・・
「だから、俺は本当にただの弱い人間なんです・・・」
「これだけ、リアルな嘘話もすごいな・・・」
「だから!嘘じゃないんです!!」
なぜか、外に出た後、とんでもなく弱い魔法を放って、「これが俺の実力です」何て言ってきやがった。
そして、その後、さらに嘘話が続いていく・・・なんでも、自分は弱くて、ゴブリンと同じくらいと精霊さんというこいつの師匠にまで言われ、すごく強いのはフウという子供だけという話だ。
じゃあ、なんで魔界に来たのかと聞いたら、なんでも一度フウは魔王と闘って追い返したのはいいが、大けがを負ったらしい・・・魔王の軍勢を一人で追い払った?とんでもないホラだな。あんなもの一個人でどうすることなどできやしない・・・
それで、大けがを負ったフウという子供に対し、少しでも力になれたらと無理を承知でやってきたらしい。
第一魔力を持っていないというなら・・・
「だが、お前、私の隠蔽魔法と障壁魔法が掛かった部屋に入れただろう・・それはどう説明する?」
魔力を持っていなければ、私の隠蔽魔法と障壁魔法が破られるわけがない・・・
「隠蔽魔法と障壁魔法?」
分かっていないふりなどしおって!
「・・・クロリ―の居た部屋にかけていた魔法だ・・・」
「?仕掛けはあったけど、魔法何てあったのか?」
そういってとぼけてくる、こいつを睨みつける・・・どこまでもコケにしおって・・・
「はっ!私の魔法何て気づきもしなかったと!!」
私は皮肉をもってそういう・・
「えっ・・・えっと・・」
「第一・・・」
だいだい今だって・・・障壁を張って・・・?この魔力は?
「ちょっと待て・・・この感じ・・・・・・・・・・・・・」
この魔力の種類、前にフウという子供が発した魔力に似て・・・いや全く同じだ!!
「どうしました?」
「・・・・・・・・少し離れる・・・ちょっと待ってろ・・・」
・・・・・・・・これは確認をしなければいけないな・・・




