赤ん坊との出会い
魔の森に迷って何故か赤ん坊の泣き声が聞こえた俺…
そんなはずがない…絶対に何かある裏がある…
現に泣き声が聞こえている所に進んでいくと大量の魔物の死体がありました…
…絶対に魔物の罠ですよねこれ…
そう思いながらも、どうせ、遅かれ早かれ魔物には食われるだろうと思い…意を決して泣き声が聞こえる方に行った…
そうしたら、俺の目の先に何故か籠がありました…
(ってあれ?魔物は!!?)
俺は慌てて籠の周りを見るが魔物達が倒れていない。
先程まで俺は死んでいる魔物の合間を縫ってここまでやってきたはず…
慌てて後ろを見る…そこには数え切れない程の死んでいる魔物が折り重なって居る…
また籠を見る…やはり籠の周りに魔物は居ない…
(何故この場所にだけ魔物が倒れていない?第一、何故こんな場所に籠が?)
疑問に思いながら、もう一度周囲を見る…やはり、謎の籠の周囲には魔物達は一匹たりとも居ない…
不思議に思うが、ここまで来て戻る選択肢はない…
俺は意を決して籠の傍に寄って行く…
注意深く近づいていくと同時に赤ん坊の泣き声はさらに大きくなる。
…さっきまで、ずっと魔物がここにいると思っていたが、今聞こえる泣き声がどうしても人間の赤ん坊の泣き声にしか聞こえない…
(…まさか、本当に赤ん坊が居るのか?)
半信半疑のまま…更に近づく…ようやく籠の中を見れる距離に行くと…そこには…
いかにも生まれたばかりの赤ん坊が真っ白な服を着て、そこに居た…
(って!えっえぇぇーーーーーーーー!!!本当に赤ん坊が居たーーーーーーー!!)
叫びそうになる口を必死に抑えながら、目の前の赤ん坊をまじまじと見る…
(いや!これ!!どう見ても本当に生まれたばかりの赤ん坊じゃないか!!何でこんな所に居るんだ!!)
魔物の擬態何かとも一瞬思ったが…どう見ても普通の赤ん坊にしか見えない…
というより、魔物に擬態しているはずならこんな弱そうな俺を見た瞬間、擬態を無くして食いに来るはず…
それなのに、目の前にいる生物は赤ん坊のままでいる…
…本当に魔物が擬態していない赤ん坊?こんな魔の森の奥深くに本当に??
余りにも不可思議な光景に俺が動揺していると、泣いていた赤ん坊が俺の方を見た…
途端に先ほどまで聞こえていた赤ん坊の泣き声が止む。
俺も赤ん坊の目を見る。
…どう見ても、魔物が擬態しているようには見えない…
…普通の人間の赤ん坊だ…
(…何だこれ?何でこんな所に赤ん坊が居るだ?)
俺は混乱しながらも、頭の中で、自問自答する。
(…いやいやいや!やっぱり!こんな場所に赤ん坊何て居る訳が無いって!!魔物の幻影魔法か何かか?!これ絶対罠だろう!?魔物の!!)
その後も様々な考えがムウの頭をよぎった…
しかし、だからと言って、このまま放置するのか?そうなると結局その後俺は一人になるんだぞ…
だったら…
(もうどうでもいいや!!)
一人で、一週間誰にも会わずに生きて来た…
最早、魔物の罠とかどうでも良かった…
そう、例え罠の可能性がたかろうともそれでも…俺は人のぬくもりが欲しかった。
(どうせここから帰れる方法何て見つからないし…だったら…わずかな希望に手を伸ばそう…)
俺は意を決して、赤ん坊に手を伸ばす…
…赤ん坊に魔物が化けているのなら、この子に触れた瞬間俺は一瞬で捕食されてしまうだろう…
…今更だ…第一俺はその魔物に食われるつもりで来たのだ。
俺の指が赤ん坊の肌を触った…
…何も起きない…それに…暖かい…
(久しぶりの人肌だ…)
少し涙が流れてくる…それはそうだろう…魔物に食い殺されると思っていたのに…
…何故か会えるはずがないと思っていた本物の人に会えたのだから…
俺が涙を流している様子を赤ん坊は不思議そうに見ながら首を傾げてくる…
(ああ…もう!かわいいなあ!!)
俺は必死になって、目を擦りながらも、赤ん坊を籠の中から、抱きかかえる。
少し深呼吸しながら、辺りを見渡す…相変わらず死んだ魔物が倒れている…
俺は、怖くなって、慌てて赤ん坊を見る…
そこには相変わらず、俺の事を見ている赤ん坊がそこには居た
少し心に余裕が出てきた…
(…そう言えば、この赤ん坊、さっき最初に目を合わせてからずっと俺の事を見ているな?)
人見知りはしないんだろうか?というより…瞬きもしていないように見えるんだが気のせいか?
(ずっと俺の事を見て…どうしたんだ?)
さっきまでずっと泣いていたのに…今は、笑いもせずに、無表情で俺の顔を見てくる。
まあ、さっきまで、大きな魔物達に囲まれていたんだから、笑うのはおかしいだろうが…だからと言って、無表情でいられるんだろうか?
まあ、赤ん坊だから、何も考えていないだけかもしれないけれど…
赤ん坊の目を俺の手で覆ってみる…
さすがにいきなり目を隠して暗くしたら泣くかな?と思ったが、泣き声は聞こえない…
手を離してみる…
相変わらず、手を覆う前と同じように俺の顔をじっと見てくる…
いないいないばあ…でも何でもないけど、少しも反応しない…
…本当に泣きも、笑いもしない…
(…何を考えているのか解らねえ!!赤ん坊だから当たり前だけど!!というより!!これからどうしればいいんだ!!)
…そう、実際赤ん坊を見つけたのは良いが、結局、森から抜け出せる方法は何一つわかっていない。
心の中で絶叫をしながらも、とりあえず、今は俺は赤ん坊を抱きかかえてここから離れることにした。
先程、通ってきた魔物達の死体の合間を縫ってそこから離れる。
(赤ん坊を見つけたんだ!こんな不気味な場所すぐに離れないと!!いつ生きている魔物に合うかわかったもんじゃない!!!)
俺は人肌を感じながら赤ん坊を抱きかかえながら…魔物達の死体の合間を抜けていく…
抜けた後はすぐに走った。
赤ん坊が落ちないように必死に抱き着きながらも走った。
…そして、ようやく魔物の影が見えなくなった辺りでようやく息をつく…
(…本当に生きて帰ってこれたんだな…)
…俺は頬を抓ってみた…うん痛い…夢じゃないんだよな…
あそこに倒れていたのは魔の森でも、危険な魔物達であったはず…
だって、ドラゴンも倒れていたんだぞ!!
理由は知らないがそんな魔物達が死んでいたんだ…俺がそこから生きて帰ってこれたのは奇跡に近いのだろう…
というより…何でそんな場所にこの子がいたんだ?
抱っこしている赤ん坊を見る…相変わらず俺を見たままだ…
…まあ、かわいいからいいか!!
(…とにかくこれからどうしよう…)
…そう、先程心の中で思っていたが…何一つ改善していないのだ…
…本当にこれからどうしよう…
俺はとぼとぼと森を歩いていくのであった…