出発準備
俺はフウと旅に出る事になった・・・
どこかにふと出かけて帰って来たと思ったらフウが大怪我を負ってきたその日の夜、フウが目を覚ましてこう言った。
「お父様!お願いがあります・・・これからしばらく旅に出たいと思います!!」
と・・・理由は言わなくても解る・・・外に出て怪我を負って戻って来たのだ・・それ関係だろう・・・俺はその言葉を聞いて止めることが出来なかった・・・いや止める権利が無かった・・・フウは俺より強い・・・そのフウが怪我を負ってまでやらなくてはいけない事・・・恐らくよほどの事なのだろう・・・・
だけど、どうしても・・・・
「俺を連れてけ!」
気付いたらこう言っていた・・・今日帰って来た時にフウが大怪我をして戻って来た時、どうしようもなく動揺した・・・そして同時に、怖くなった・・・どうしようもなく強いフウでも怪我をする・・・死ぬ事がある事を実感してしまった・・・
知らない間にフウが死ぬそんなの嫌だ・・・そんな思いでついそんな事を言っていた・・・その後の事は余り覚えていない・・ただ、フウが了承して、俺がフウの頭をずっと撫でていた事だけしか覚えていない、何を言ったか・・・何故だろう・・・思い出そうとすると顔が熱くなってくるのは・・・・
・・・とにもかくにも、俺はフウと旅に出る事を奴隷達と家族に伝えた・・・
奴隷達に伝えた所・・・
「「「「「解りました!留守の間はお任せください!!!」
と敬礼して了承を得た・・後、ウムフの世話も・・・
「「「「「絶対にウムフ様をきちんと育て上げます!!!」」」」」
・・・・・すげーテンションだな・・・まあ、これで大丈夫だろう・・・多分
家族は・・・・まずはお父さん
「・・・旅に出る?すぐ戻ってくるんだよな?・・・・えっ解らない?」
うん、フウに帰還を聞いてみると『解らない、下手をすると1年は帰ってこないかも・・・』って言ってたし・・・
「・・・・・・俺、やる事が無くて肩身が狭いんだが・・・・」
・・・何だそれ?俺今から死ぬかもしれない所に行くんだからそんな事に構ってられないんだけど・・・まあ、そんなことお父さんと言うか家族には言えないんだけど・・・
「エルフの人達に・・・」
「お前の親だからそんな事させられないって・・・この家にいる5人も同様に・・・」
ああ、そう言えば俺神格化されてたんだっけ・・・・・・・まあいいか知らん!!!
「待ってくれ!!本当に何とかしてから言ってくれ!!!」
しょうがないので、お父さんには農業を頼んだ・・・まあ、近くに森があってそこに果物とか豊富にあるからいらないんだろうけど・・・これで時間は潰せるはず・・・やり方はエルフにお願いした・・・ついでにフウと一緒に旅に出ると言った・・・何人か着いてくると言ったが断って最後は、
「「「「「「「「「「「「解りました!留守の間の防衛はお任せください!!!」」」」」」」」」」」」」
とまた敬礼されました・・・・本当にどうしてこうなった・・・お母さんは
「えっ?旅行?いいわね・・・えっ違う?旅・・・大丈夫なのそれ?えっ長期間いなくなるって・・・ムウこっちを見て・・・本当に大丈夫なの?」
とかなり心配されたが、もう腹は決まった俺は絶対に行くと言って譲らなかった・・・
「大丈夫だって、魔の森に1年間住んでたくらいだからどこだって生きていけるって!!!」
色々言ってきたが、言葉の応酬をして何とか説得した・・・一番説得に疲れたぞ・・・・
最後に弟・・・
「ハーレム要員を増やす旅か!兄貴!!」
違う・・・
「そう言って、増やしてくるんでしょう!!」
違うってば・・・・
「俺もその旅に・・・」
「違うって言ってるだろうが!話を聞け!!!」
俺より身長が高いくせにもてないのかよお前・・・
「とにかく、危険な旅になると思うから連れて行けない・・・・」
「兄貴より俺強いと思うんだけど・・・」
言うな・・悲しくなってくる・・・
「なあ、やっぱりハーレムを増やす為・・・」
「違うって言ってるだろう・・・」
説得と言うか説明に時間が掛かった・・・あれ・・・絶対勘違いしてるよな・・・
とにかく一日かけて全員を説得し、玄関で見送られた後フウに転移された先は・・・・
無限の荒野と大きく広がった黒い空間だった・・・・・何だこれ・・・・・・
「なあ、フウこれは何だ?」
「こちらの世界と魔界を繋ぐゲートです・・・」
はあ?えっとどういう事?
「・・・なあ、フウ俺達はどこに行こうとしているんだ?」
どこにでも着いていくつもりだったが・・もう聞かずにはいられない・・・
「魔界です!」
「何しに?」
「巨大な魔力を持っている魔族を倒しに!!」
・・・・・・・・何故に・・・
「何で?」
「この前大群でこの世界に押し寄せて来たからです!」
・・・・・・・・ちょっと待った・・・・
「お前この前の怪我って・・・」
「すみません、その大群と巨大な魔力を持つ魔族に後れを取ってしまいました・・・」
「・・・お前一人でか・・・?」
「?そうですが?それがどうかしましたか?」
ちょっと頭を整理しよう・・・・・・フウが魔族の大群と対峙して怪我を負って追い払ったと・・・・・・・何だそれ!!!もう一度言う!!!何だそれ!!!!
「なあ、それって勇者の役割じゃないのか?」
「?勇者何て当てになりませんよ?」
「何で解るんだよ・・・」
「だって、家に来た時余りにも弱そうでしたもの・・・」
ちょっと待て?家に来た?
「はぁ?家にっていつ来たんだ?」
「数ヶ月前に来たじゃないですか?」
えっ本当にいつ?
「お父様が膝枕してくれていた時に来た男の人が居たじゃないですか・・・あの人です・・」
膝枕・・・男の人・・・・・・・ああ、確かに来てたな、フウを膝に抱えてたから対応もおざなりだったけど・・・・えっあの人が勇者だったの?まじ?
「えっ、本当?」
「?本当ですよ、まあ、あんな人が居なくても居ても変わりませんでしたし、というより居たら邪魔なのでいなくて良かったです!」
・・・・・・・・・・勇者を邪魔者扱いしちゃったよ・・・・・フウ・・・
「いやでも勇者何だから強いと思うよ・・・」
「?そうなんですか?」
「いや・・・確かに俺勇者が闘ったところ見たこと無いけどさ・・・」
だけど、人類の希望である勇者が弱いって事は無いだろう・・・
「・・・だったら、闘ってみましょうか・・・」
そう言うと周りが光って気づいたら、周りが森になっていた・・・
「うお!!」
あっ、この前きた男だ・・・って事は勇者?!!
「久しぶりですね・・・」
いきなり声をかけられ勇者は驚いた顔をした・・・だが、すぐに平常心を取り戻したらしく
「・・・何だお前か・・・色々疑問があるが・・・お前だからな・・・何の用だ・・・」
と言ってきた・・・
周りを見渡すとドラゴンの死体があっちこっちにある・・・うわー・・・フウで感覚麻痺してたけど改めてみるとすごい・・・やっぱりこの人勇者なんだなあ
「お父様が勇者が強いと言ってましたので、確認をしに・・・」
そう言うと、勇者が俺の事を睨んできた・・・何故?
「・・・どうすればいい・・・」
「一回だけ戦ってくれれば・・・傷と魔力は・・・」
そうフウが言うと、勇者が光り出した・・・
「これで大丈夫ですか?」
「・・・・・・・・・解った、やろう・・・」
うわー!勇者様の闘いが見れるんだ!!だけど、どうしてだろうか?勇者様の表情が何時も奴隷達がゴーレムたちに挑む様な表情をしている・・・?
「・・・・合図は?・・・」
「いつでもどうぞ・・・」
そう、フウが言った瞬間・・・バキバキバキ・・・・・・変な音と共に勇者が消えた・・・・・何か木が一方向に一直線に折れているんだが・・・・
「フウ・・・勇者は?」
「?あっちに・・・」
そう言って、木が折れて通路が出来た先を指さす・・・・・・・・・・・えっと・・・
「何が起きた?」
「ぶっ飛ばしただけですが?」
「どこに・・・」
「あちらに・・・」
そう言ってまた、先程指を指した方向に指を指す・・・・それで、やっと理解した・・・勇者はあっちの方向にぶっ飛ばされたのだと・・・フウに・・・
俺は本当にこいつと旅を出ていいのだろうか・・・?そう思い空を見上げた・・・




