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奴隷が欲しいので赤ん坊を育てた  作者: ・・・・
街へギルドへ
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セシルの決意

分割してみます。

フウとセシルの決闘が終わった後にギルド長であるギャンは内心途轍もなく、動揺していた。


予想以上の強さ…ブラックドラゴンを倒していたという事は知っていたが、それでも、Sランクである、セシルに互角以上…


いや、魔法使いと考えれば、接近戦で闘い、勝ったフウと言う名の子供の方が強いであろう…


見た目はどう見ても、子供だが、実力はSランクの冒険者を一対一で圧倒させる程の強さを持っている…


その真実に動揺しながらも、見た目はそんな事をおくびも出さずにフウとムウに接し、ギルドカードを渡した後、すぐさま、セシルの後を追って訓練場を後にした。


…ギルド長…大斧使いのギャンという二つ名を持った冒険者であった。


以前は、英雄クラスの冒険者であり、自身の背丈ほどの斧を使い、戦場を闘い続けた。


スキルを用いない純粋な力勝負の闘いなら誰にも負けないと言われている程の実力者であった…


そのギャンが必死の形相でセシルの所に向かった。


元英雄クラスの冒険者が取り乱す程、先程の決闘は異常であった…


「おい!大丈夫か?!!」


セシルを見つけたギャンは急いでそう問いかける。見ただけで、顔色が悪いのが解る程であったが、それでも問いかけずにはいられなかった。


「…大丈夫に見えるか?」


「…すまん、あのスキルを使って大丈夫な訳ないな…」


…彼、セシルのスキルは膨大な力を得ることが出来るが、その代償は決して安くはない。


彼のスキルは、一瞬で、自らの力を数倍…いや、頑張れば、数十倍の力を一瞬で手に入れることが出来るスキルだ。


同じことを強化魔法でも出来るが、この力の真価はスキルと強化魔法を重ね掛けをすることが出来る点だ。


簡単に言えば、強化魔法で3倍の力が上がり、スキルの力で3倍の力が上がったとすれば、3+3=6では無く、3×3=9倍と言った具合に乗算される。


その為、強化魔法を使い、更にスキルで、数倍の力を上げるだけでも、普通の人間なら決して到達できない程、強くなれる。


スキル込みであるならば、セシルと近接で闘える人間は恐らく英雄クラスでも誰一人いないであろう。


しかし、そのスキルにも、弱点はある。


普通のただ強いだけのスキルならばない代償がこのスキルにはある。


それは、スキルを使うたびに、寿命が縮まると言う大きな代償…しかも、発動すれば物凄い負荷が肉体に掛かる為、そう何度も使用できない。


その為、セシルは相手が魔物であり、かつ強敵である相手以外に、このスキルを使った事は無かった…


当り前だ…人間の限界を超える力…魔物以外に使えば、人間相手なら普通は一瞬で死ぬ…


それが、例え、英雄クラスであろうと…不意打ちなら確実に殺せる…それ程強力な力であった…


その力を持ってすら…フウと言う子供に勝てなかった…その事実に俺は心底驚いていた…


ブラックドラゴンを倒しているとは聞いていた…それ以上のドラゴンも倒しているとも言っていた…


だが、俺は信じられなかった…当り前だ、ドラゴンなんぞ、神話で語られる程の力の象徴である魔物だ。


歴代の勇者であろうと、ドラゴンを相手にするのは苦労したとされている…


…認めたくはなかった…だが、セシルが、ここまでやられるとは…その話も真実味を帯びて来た…


セシルを見る…その姿はどう見ても、疲れている様だった…


(当り前だ…寿命を縮めるスキルを使ったのだ…並大抵の人物なら、気を失っていても可笑しくはない)


それだけの力を持ってしても、倒せないとは、あの二人はどれ程の実力なのだろうか…


「…それにしても、お前のスキルで数倍以上にあげた、力で負けるとは…」


「数倍じゃない、数十倍いや、100倍近い強化をして攻撃を放った…」


「なっ!!」


その言葉を聞いて驚く…そうだろう…セシルのスキルを使った全力は、対人では必殺の力を持つ程莫大な力を持っている。


その全力は1000倍以上の出力を持っている…


その代わりにスキルを使う本人の負担も途轍もなく、一瞬だけでもそのスキルの力を使うだけでも、命がけである。


近接であるのなら、対人戦で最強の力を持つ…恐らく英雄クラスであろうと、セシル相手に正面切って勝てる相手等ほとんどいないでは無いか…


それ程の力を持つセシルが負けた…私はセシルを見ながら、冷や汗をかいた…


――――-----------------------------------


俺は、ギャンと話しながら、内心溜息をついた…


先程の決闘、俺は全身全霊全力を出して攻撃をした。


先程のスキルを使った攻撃は、修行時のブラックドラゴンと闘った時でさえ使わない攻撃だった。


それも、当り前だろう?命を縮めるスキルなのだ。そうホイホイと修行何かで使える訳が無い…


今回は…本当の本気の奥の奥の手を今回の闘いで使ったのだ。


それだけ、全力で攻撃をしたのだ…


結果はフウと言った子供の服を少し切れたくらいで終わったが…


「…スキルの全力を出してあれか…」


「ああ、俺自身の全身全霊を出し切ってあれだ…」


本来の俺とギャンの予定では、ムウとフウに対し、普通に換金したお金を渡して終わらせるつもりであった…


だが、一週間前、王都に魔道具を使い、2人の強すぎる幼子について、連絡をしたのだが、その結果、王都に連絡した数日後、王都に居るバクバ王から、2人の強さを測る様に勅令が来たのだ…


本来なら、断りたいところだが…王の勅命…しかも、あのバクバ王から命令に、俺達は断ることが出来なかった…


もし、断れば、政治的、経済的…武力あらゆる面から、攻撃されるのは、目に見えていた…


それ程、あの王の影響力は強いのだ…


とは言え、どんな冒険者だろうとあの規格外の子供たちに真向に闘ってタダで済むとは思えない…


それ以前に、普通の冒険者が闘った所で、相手が実力を見せる前に、終わってしまう可能性が高い‥‥


その結果、俺自身が闘う事になった…まあ、結末は見事のまでの惨敗であったが…


…惨敗本当にそう言っていい程、無様な負け方だった…


…模擬戦が始まってすぐ俺は強化魔法を纏い、それなりの力でフウに剣を振るった…


…どれだけ強くとも、相手は、魔法使い…肉弾戦は弱い…そう思っていた…


だが、奴は悠々と受け止めた…英雄クラスと言われ、剣での戦いであれば、今の時代に敵う者などいないと言われた俺の剣を!!


…普通、俺の一撃を受け止める相手等そうはいない。


魔族であろうと…この俺の攻撃を易々と受け止める者等はいない…そう思っていた…


だが、目の前の…幼子にしか見えないフウと言う者は、魔法で一瞬で作り出した剣を使い、真正面から俺の攻撃を受け止めたのだ!


(こいつはやばい!)


俺はすぐさま、全力で強化魔法を使い、本気で殺そうと攻撃を連続で繰り出す。


しかしその本気の俺の攻撃も氷の剣で全ていなされた。


(こいつは、剣術すら扱えるのか!しかも、俺を翻弄するまでの技量で!!)


俺の剣は自分で言うのは何だか、誰よりも洗練していると思う…まだ、まだ、最高の高みには至ってはいないとは思うが、今の時代に俺以上の洗練した剣術を使っている者なんていないと思っていた‥‥なのに…


(本当にこいつは何者なんだ!!)


剣での戦いという、俺の完全なる土俵での戦い…俺自身、剣の勝負なら誰にも負けないと言う自信を持っていた…


だが、目の前のこいつは…俺が長年培ってきたものを全て出し切って…剣との勝負しかしていないのに…ギリギリの勝負にしかならない…


(相手は、魔法使いで、戦士では無いのに…どうして…)


魔法の鍛錬…剣術の鍛錬、両方同時に行うのは難しい。


当り前だ、それを行うだけの時間が足りないのだから…


どんなに天才だろうと…何か一つを突き詰めなければ、それは、凡人に成り下がる…


俺は、身体能力を限界以上に上げるという自らのスキルの特性を生かす為に、剣を選んだ…


もちろん、スキルを使わなくとも、剣術1つだけでどんな冒険者とも渡り合えるだけの強さも持った…


なのに…どうして!どう見ても数年しか生きていない様な幼子…しかも、魔法を使う魔法使いの剣術で俺の剣が当たらない!!


しかも、それだけでは無い…闘い始めて何度も剣をぶつけあっている内に相手の動きが良くなっている様に見えた…


それこそ、俺の動きを読んでいるかのように…


(…こいつは俺の動きを読んでいると言うのか…?)


たった短期間で、俺の動きを読めるようになる…それは即ち、俺以上の天武の才を持っているという事でもあった…


(こいつ…!!)


一瞬、頭が熱くなりそうになる…だが、俺は何とかそれを抑えて、冷静になる…


今の俺の役目は…相手の実力を測る事…だが、このまま続けても、相手は魔法を使う素振りすら見えない…


ムウという男に攻撃をするか?いや、そんな隙は無いし…攻撃をした所で、このフウと言う幼女より強い可能性すらある…


このまま闘い続けても、俺の攻撃は当たる可能性は低い…


それどころか俺の剣筋を完全に読み切られる可能性すらある…


(…頃合いか…)


俺はある程度、剣を合わせた後…攻撃を止めた。


これ以上攻撃しても相手に俺の情報を与えるだけになる。


もし、確実にこいつを殺そうとすれば俺自身のスキルが必要になってくるのだが、俺のスキルは強すぎて、周りの影響を考えるとここでは使えない。


だからこそ、俺は最初、試合に負けたと宣言したのだ。


だが、あいつはそれに納得せず、一瞬で、俺達の周りを結界で囲いこういった。


『結界を使って試合します。これなら、周りに被害が無いでしょう?』


この結界の強度、見ただけで予測でしか無いが、大魔法使いマルイと同じ位…いや、下手をすればそれ以上の強度を持っている…


しかも、大魔法使いのマイルでさえ、もう少し、予備動作があるはずなのに、目の前の幼女はそんな動作は一切感じさせずにこの結界を張ってみせた…


(…本当に化け物だな…)


恐らく、人間の到達点…それすらも、遥かに凌駕している存在が目の前に居る…だが…それでも…


例え、武力、魔法共に、規格外だとしても、これだけの結界を維持するのは、難しいはず…もしギリギリであれば、他の魔法を使うのも難しいはず…


…魔法を使いながら、近接戦を行っている事時点で、それだけで規格外ではあるが…


(これだけの魔力を使っているのなら、今はほとんど魔力が残っていないのではないか?)


そう思い、尋ねると…


…『…だったら、私は素手で相手します!』そう言って来た…


俺の本気を素手で相手をする?


(なめやがって!!)


そう思い、逆上しそうになったが、俺は考えた。


相手が魔法を使わないと言うのは一世一代のチャンスでは無いのかと…


これだけの力を持つ者を野に放って置くわけにはいかないだろう…


本当に魔族かどうかは解らないが、これだけの力を持つ者…上手くいけば、ギルドに利益をもたらしてくれるが…


下手をすれば、人類が滅亡する…目の前の幼子の実力は恐ろしかった…


目の前の2人の実力ははっきり言って底が見えない…それこそ、英雄クラスの武術と魔法を持っていると言ったが、それすらも、彼女達の実力はそれを遙かに凌駕している可能性すらある…


だが、今相手は俺の事を舐めきっている!今なら、殺せる可能性がある!!


はっきり言って、相手が本当に魔法が使えないのか解らない…


だが、使えたとしても俺の本気のスキルを全力で使って100倍…いや…魔法を使って数百倍のブーストをかければ絶対に倒せる!!


周りに影響が出るかもしれないが…こいつが油断している今が一千一隅のチャンス!


そう思って…俺は周りの影響何て考えずに全力で攻撃した…


一瞬だが、俺は限界の限界を超えた…それこそ、今まで出した事が無い程の速度で剣を振るったと言え様…


今までの中で最高の剣筋…そう思えた剣を振るった結果…相手はほとんど無傷だった…


剣は当たった…だが、相手は俺の剣を受け流した…吹っ飛ばすことは出来たが、それだけ…目に見える外傷はなく…相手はすぐに立ち上がった…


(…俺の負けだ…)


…そう考えた俺は、そのまま振り返らず訓練場を後にした…


そして、今、俺は先程の試合で心が折れかけていた…


いや、実際折れたのだろう…


俺自身の全力を出した上に、相手は俺に合わせてくれた…その上で負けたのだ…


そう考えた瞬間…今までの事が頭をよぎる…


様々な魔物と闘った…そして、様々な仲間とその魔物を討伐してきた…


死にかけた事もあった…だけど、それでも、仲間と一緒…ソロの時でも死線を乗り越えて来た…それは一種の誇りでもあった…


それなのに、相手はその誇りであった強さですら上回っていた…


誇りを汚された俺はもう闘う事は出来ない…そう思った…


だけど…


(…本当にそうか…?)


別の自分が俺に囁く…


(俺は…このまま終わりたいのか…?)


思い出すのは、小さい頃の記憶…神話の世界の話…


その中での勇者や仲間達は自ら弱いからと言って、諦めたのか…いや…諦めなかった…


どんなに強敵だろうと、諦めず立ち向かう…そんな姿に憧れていたんだ…


そう思った瞬間、口から自然と言葉が出た…


「…俺は魔の森に行く…」


まだだ、まだ終わりじゃない!


そうだ!俺は何の為に戦士に!冒険者になった!!?


何で英雄クラスと呼ばれるまでに強くなった?!!


そうだ…誰よりも強く…逞しく…そして、自分自身で伝説を作る為にここまで来たんだ!


子供一人に負けて、立ち止まっている場合では無い!!


相手が強すぎる?強すぎるのなら、俺自身ももっと強くなればいい!!


そう思った瞬間、俺は自然と『魔の森に行く』と口から出ていた。


「何をしにいくのだ?」


『何しに行くか?』か…


はっきり言って、これ以上強くなるには、並大抵の修行では強くはなれない。


第一、ブラックドラゴンはあの子供が数えきれない程倒していると言っている…それ以上のドラゴンも倒しているとも…


だったら、俺はそれ以上の魔物を倒すまでだ!!


「あそこに居るという伝説のディエティドラゴンを倒してくる…」


…かの勇者が倒した、伝説のドラゴン、ディエティドラゴン…


もし神話の通りなら、勇者はあのドラゴンを殺さずに負けだけを認めさせたはず、それならば、まだ生きているはず…


…もし、ディエティドラゴンの討伐が可能になる程強くなれば、誰も敵わない程強くなれるだろう…


「あんなの本当に居るか解れねえぞ!第一本当に居たして、一人で倒せるわけがねえ!!」


そう、昔倒したとされる英雄も10人掛かりで挑み何とか倒せたと言われている。


だが、これ以上強くなるには、無理を可能ににしなければ、上には行けない…


そう感じていた。それに…


「行く…例えいなくとも、あそこ程修行に適している所は無い!」


そうだ、もしディエティドラゴンがいなくとも、ブラックドラゴンを始め、様々な凶暴な魔物達が居るのだ、そこ程、修行に適した場所など無い!!


だからこそ、行かない手は無いのだ…


これは、ギャンには言ってはいないが、ディエティドラゴンについては、全く当てが無いわけでは無い…居るのなら、絶対見つけてやるつもりだ!!


「…はあ、もう何を言った所で止まらねえだろうな…解った行ってこい!」


その師匠の言葉に俺は頷いた。


そのままギルドから出て行き魔の森へと向かう。


…目標はあの子供…フウを倒す事…


待っていろ!!絶対倒してやる!!!

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