勇者としての矜持
本当の完結は・・・いつになるのやら・・・
俺、勇者カールは、神ラーフから神託を受け、スラムに行った所、フウに似た人物カーチと出会い話をした。
そこで、カーチの目的が、裏社会の人間全員を殺す事だと知り、止める為に、彼女と対峙している。
はっきり言って、俺は悪党を殺す事を否定できるほど、聖人では無い・・・
俺自身様々な人間を手にかけたことがある・・・強盗、殺人犯、狂信者・・・様々な裏社会の人達を勇者の名の下に手を掛けて来た・・・
だか、俺は更生の余地も無い、人達が裏社会に闊歩しているのと同時に・・・裏社会の人間全てが、全員悪人なわけでは無い事も知っている・・・
俺自身、裏社会の人間に逆に助けられたことも何度もある、利益関係だけの関係だったのかもしれない・・・
だが、だからと言って、救われたのも事実・・・そんな人達も居るのに・・・裏社会の人間だからと言って、殺そうとしている目の前の人物をそのまま放置しておくわけにはいかない!
はっきり言って、他の人物なら、絶対に出来っこないと笑い飛ばせる。
裏社会の人間は裏社会で動いているだけあって、途轍もなく強い・・・それこそ、下手に表舞台で活躍している人物より強い人達も大勢いる。
当り前だ、強く無ければ、裏社会を動かす事なんて到底出来ないのだから・・・俺自身、ディエティドラゴンを倒した今でさえ、そんな事が出来るとは思っていない。
だが、目の前に居るのは、あのフウに似た女性、恐らく彼女も関係では無いのだろう・・・それだけの実力を持っているという、絶対的な自信を俺は感じ取っていた。
それに彼女はこういった私達が手にかけると・・・
下手をすれば、フウと同じ実力・・・いやそれ以上の力があるこの目の前の人物がどの位の人数かは知らないが、団体で行動に移している。
どんなに大勢の人間が動いたからと言って、裏社会の人間を根絶やしにすること等今日明日で出来る訳が無い・・・
だが、目の前に居る人物は、あの歴代最強と言われた、魔王を倒した人物にそっくりな人物・・・
恐らく、見た目だけでなく、実力さえも似た様な力を持っている可能性がある。
それが、数千、数万・・・もしいるとすれば、それならば、本当にやりかねない。
だとするならば、俺は勇者として、その行為を止めなければ・・・例え、裏社会の人間だとしても、無意味に人を殺させはしない!!
だが・・・
(はっきり言って、目の前のこの人物ですら、一対一勝てるかどうか・・・分からないがな・・・)
勇者とは、人々を守り、導く存在・・・
悪人だろうと、更生の可能性が見えるのなら、殺すのには忍びないと俺は考えている・・・
例え可能性が低いだろうと、全員をしらみつぶしに殺しては、それでは、悪党とやっている事と同じになってしまう!
だからこそ、目の前の人物は止めなければ!!勇者として・・・いや!勇者カールとして!!
(だが、この辺りで闘っていいのだろうか・・・)
ふとそんな考えがよぎる、スラムだとしても、この辺りに住んで居る人間は居るはずだ、それなのに・・こんな所で闘って・・・
「大丈夫ですよ、私達が居る空間と周りの空間は、断絶していますから・・・もし、思いっきり闘っても、周りに影響は出ません」
俺が、考えていると、カーチがそんな事を言って来た。
「空間を断絶?」
空間の断絶という意味は分からなかったが、俺は、急いで、周りを見渡す・・・
そして、気づく・・・周りの様子がおかしい事に・・・スラムとは言え、周りに人は確かに居る・・・だが、その周りに居る、人達は俺達が見えていないかのように、振舞っている・・・
下手をすれば、目の前に、剣を持った俺が居るのに、空腹の所為か、近くで寝そべっている人すら見えた・・・
寝そべっている人に触れようとする・・・だが、俺の手はその人を触れる事は出来なかった・・・
そこに居るはずなのに、存在を認識できない・・・目に見えるのに・・・触れることが出来ない・・・いや・・・もしや・・・これは・・・・
普通の人にも魔力はある・・・生きている限り、魔力を発する事は止まる事が無い・・・
いくら隠蔽魔法で隠していても、かすかな魔力の放出は絶対あるはず・・・だが、目の前に居る人から感じる魔力は全く無かった。
それは、この空間が、本当に俺が居たスラムの街では無く、全くの別空間であり・・・この空間の中では、魔力の干渉すら、外の世界とは出来ない事を意味していた・・・
何なんだ・・・これは・・・こんな魔法、おとぎ話ですら聞いた事が無い・・・
「うーん、断絶というより、この周りの空間を一から作ったと言えばいいでしょうか?とは言え、それすらも、気づかないとは、この世界の勇者も大したことは無いようですね・・・」
俺が目の前の魔法?に圧倒していると、カーチがそんな事を呟いて来た・・・
ちょっと待て!今目の前の人物は何て言った!!空間を一から作ったって言ったのか?!!
そんな・・・目の前の人物は神と同等の力を持っているという事か?!
世界を作る、人を一から作る、世界の因果律を変える・・・そんな事を出来るのは、神である存在のみ・・・
神話の世界でも、そう書かれていた・・・それなのに・・・
「・・・カーチ・・・お前は、何者だ・・・」
「・・・フウ様とムウ様の僕です・・・」
その言葉に俺は画然とする・・・
「・・・フウとムウは、お前より強いのか・・・」
「ムウ様は解りませんが、フウ様は私なんかより途轍もなくお強いですよ?それより、止めないんですか?」
その言葉に、俺は思い出したかのように、剣を構えた・・・だが・・・
(何を震えているんだよ!!)
剣を持った腕が震えていた・・・
自身の理解を超える力を持った人物・・・そんな人物と対峙し、正気を保っていられる人などどれ位いるのだろう・・・
下手をすれば、神を超える力を持つ人物・・・そんな人物に・・・勝てる訳が・・・
「はあ・・・ここの勇者も力をちょっと見せただけで、戦意を消失するのね・・・いいわ・・・貴方はそこで黙って見ていなさい・・・」
そう言って、彼女は、この空間の外に向かって歩き出した・・・
待て・・・待て・・・待て・・・
「・・・待て・・・」
それは・・・本当に小さな呟きだった・・・だが、その呟きを放った瞬間、カーチは足を止めた・・・
「なにかしら・・・私もうそろそろ、動かないといけないんだけど・・・」
「やらせない・・・」
勇者とは勇気ある者・・・それなのに俺は今まで、逃げて来た・・・フウが居るから大丈夫・・・フウが解決するから大丈夫・・・
俺自身そう自分自身に言い訳を言って、自身で大きな問題の解決を他人に委ねて来た・・・
フウ自身が敵に回る・・・その可能性がある事を失念・・・いや、考えない様にして来た・・・
だが・・・今、その最悪の展開が目の前に起きている・・・
だったら・・・俺は・・・勇者として・・・
「何を・・?」
「お前の!大量虐殺を絶対止める!!」
目の前の凶事を絶対止める!勇者として!!人間の希望として!!絶対に止めて見せる!!
例え・・・敵わないとしても・・・勝てないとしても・・・目の前に命を奪う者が居るとしたら、俺は命を賭しても絶対に・・・!!
腕の震えは止まっていた・・・
「へえ・・・貴方が・・・この空間を認知すら出来なかった貴方が私を止める・・・?」
次の瞬間、俺は吹っ飛んでいた・・・
「やってみなさい!!この世界の勇者!!」
・・続きは、また一カ月後・・・?出来るだけ早く書ける様に頑張ります!!