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滅びゆく世界のキャタズノアール  作者: 北条トキタ
予期せぬ来客、新たなる旅立ち
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第七十九話

 ここはどこかなのか分からぬ、どこなのかも知れぬ場所……。

 薄暗い風景の中、赤黒く輝く光の帯が、まるで台風のように渦巻いている。

 その中心に人だろうか、それを思わせる輪郭の持ち主がいた。

 そこへ更にもう一人、暗めの色合いの豪華な服装をした男が、近づいてきた。


「やあ、久しぶりだねぇ。また会いにやって来たよ、()()君」


 その男はかつてはギア王国で宰相を務めていたシャリムだった。

 しかしその姿は実体ではないのか、薄ぼんやりとして透き通っている。


「…………」


 しかしネロと呼ばれた存在は、ただ無言のまま、返事を返さなかった。


「つれないねぇ。まあ、いいけどね。それより君でしょ、王国にあんな巨大な化け物を送り込んだのは。よっぽど僕らの中に()()()()()()()()()相手でもいたのかなぁ? 分かってるよ、その人物が誰なのかと言うのは見当はついてる。君が、この僕以上に脅威と感じているあの()()は、いずれこの場所へとやって来て君と対峙することになるだろう。その時、君と彼らの戦いの行方はどうなるのか、この僕でさえ興味深いよ」


 更に続けられたシャリムの言葉にもネロは眉一つ動かさず、耳を傾けている。


「相変わらず不愛想だねぇ。だけどお互い数百年も生きている身の上だ。敵同士とは言え、僕は本心から君に敵意だけじゃなく、友情を感じてるんだよ」


 そこでようやくネロは、シャリムを見やる仕草をとった。

 じろりと自身を鋭く睨み付けてくるネロの目を、シャリムもまた見つめた。

 どれだけの間、視線を交わしていただろうか。

 シャリムはふっと笑みを溢すと、踵を返してネロから離れていった。


「じゃあね、ネロ君。また来るよ、僕だって準備は万端にして、ここへと向かっているんだ。簡単にはやられてあげないつもりだよ。君に冷や汗くらいは流させてみせようじゃないか。次に会う時にはここは戦場になるだろうし、この景色も最後の見納めかな」


 シャリムは立ち去りながら、足元で渦巻く光の帯の間から微かに見える風景を眺めていた。

 そこには廃墟となった、どこかの古い街並みが広がっていた。

 そしてその廃墟の街並みには、五メートル~十五メートル級と言った無数の魔物ゴルグ達が、所狭しと蠢いていたのである。


「やれやれ、どう見ても数千匹……いや、数万匹はいるねぇ。いくら僕でも全部を相手にするのはちょっと骨が折れそうだよ。まっ、だからこそ、今度は軍勢を引き連れてやって来てるんだけどねぇ」


 だが、その魔物ゴルグの群れを見ているシャリムの表情には言葉とは裏腹に、楽しんでいるような、余裕の笑みすら浮かんでいたのは確かであった。

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