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滅びゆく世界のキャタズノアール  作者: 北条トキタ
忍びよる侵略
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第十一話

「来るぞ! 散れ!」


 俺は二人に叫んで指示すると、ヴァイツとノルンがそれぞれ左右に飛び、そして俺は背後に飛んだ。そこに跳躍した巨兵の魔物ゴルグの拳が叩きつけられ、砕かれた石床の破片が、辺りに飛び散った。


「俺達がデカブツの足止めをする。その間にノルン、始めろ。()の使用を許可する!」


「分かりました、アラケア様。どうかご武運を!」


 そう言うとノルンは武装を解き、全身を脱力させた。

 ノルンが持つ能力が、巨兵の魔物ゴルグに向けられようとしているのだ。


「さて、目標の魔物ゴルグはかなりの戦闘力を持っているようだが、奴は単身で大量の黒い霧を発生させることが出来る、()()()()()()魔物ゴルグなのは間違いないようだ。ヴァイツ、ノルンは今、無防備だ。近づけさせないように奴を引き付けるぞ!」


「うん、命がけの仕事になりそうだね。こいつ、並大抵の魔物ゴルグじゃないようだし」


 俺は先陣を切って、巨兵の魔物ゴルグに飛び掛かった。

 先ほど兵士達を惨殺した奴の腕を警戒し、間合いを取りながら攻撃の機を窺う。

 前方は俺、ヴァイツは背後から間合いを取り、挟み撃ちの隊形だ。

 そして奴は腕を動かし、前方の俺をターゲットに定めると、斬りかかった。


 ガギィイイイイイイン!!!!

 奴の高速で回転する腕の刃と、俺の戦斧が火花を散らす。

 速く、そして重い斬撃。

 このままでは俺の戦斧が持たないと判断し、その攻撃を流して回避する。

 そこへ背後から、ヴァイツの六方棍が繰り出される。


「背後から失礼するよ、『破壊衝』ッ!!!」


 重い衝撃が巨兵の魔物ゴルグの頭に炸裂した。

 数秒、動きが沈黙したかに思えたが、しかしそれを物ともせず振り返ると、ヴァイツ目掛けて、拳が放たれる。


「あ、やば!」


 危機を感じ取り、叫んだヴァイツは咄嗟にかがんで回避するが、今度は奴は両手を合わせて、大きく腕を上に振り上げている。ヴァイツを叩き潰す気だ。


「させると思うか!? 秘儀、『死天呪縛』!!!」


 奴の足元の周囲四か所に四本の短剣を投げると、死天呪縛は発動し、短剣に込めた気が放出すると、巨兵の魔物ゴルグの動きを物質的にも精神的にも封じこめた。


「がっ! ががががっがぁぁあああ!!!!!」


 だが、巨兵の魔物ゴルグは狂ったように叫び出すと、力づくで死天呪縛を破ろうとその場で腕を無茶苦茶に動かし、暴れ回っている。


「ちっ、力で強引に破ろうというのか。馬鹿力の単細胞め。このままでは本当に破られる。だが、どうやら()()()()は間に合ったようだな」


 そう、ノルンの能力が……発動したのだ。

 それは魔物ゴルグの精神を、完全に破壊させる物であった。


「がっ……ぐが……るうう……ぐるるぁ……」


 暴れていた巨兵の魔物ゴルグが思わず耳を塞いだが、意味はなかった。

 耳の隙間から聞こえてくるのだろう。それは「歌」だった。

 涙を流したり悲しみの表情を浮かべている。どういう原理か分からないが、ノルンの歌には魔物ゴルグの精神を乱し、力を奪っていく力があるのだ。


「神は最も最初にヒタリトの民をお作りになった……続いて我らの手足としての人間をお作りになられた……さあ、歌おう。未来永劫、我らヒタリトの民の繁栄を願い、そして、世界の隅々にまで遍く歓喜の光を」


 ノルンは全身から淡い緑の光を放ちながら、尚も歌い続ける。

 巨兵の魔物ゴルグは堪らず、床に蹲っていた。


「相変わらず凄いね、ノルンの歌は。形勢は一気に逆転だよ。こいつ、もう戦意は完全に失くしている。さあ、アラケア、とどめを」


「ああ、終わせてやる。こいつの首を跳ねてな」


 俺は巨兵の魔物ゴルグに近づくと、戦斧を振り上げ、振り下ろそうとしたが、まさにその時……あっという間のことだった。

 巨兵の魔物ゴルグの手が伸び、俺の足を掴んだのだ。


「なっ、何!?」


 更に巨兵の魔物ゴルグは俺の足を掴んだまま立ち上がると、腕を振り上げて俺を床に叩きつけようとする。ぶつけられれば大ダメージは避けられない。


「ぬかった! このままでは床に!!」


 俺は咄嗟に受け身を取ろうとするが、その瞬間……


 ダン!! ダン!! ダン!!


 宙を火の粉が舞った気がした。

 見ると巨兵の魔物ゴルグの頭の一部から血飛沫が飛んでいた。


「あぶない所だったねぇ、アラケア君。やばそうだったんで、援護射撃させてもらったよ」


 それはシャリムによる攻撃のようだった。

 奴がこちらに向けている短筒のようなものから、煙が吹いている。

 武器とは思っていなかったが、奴は丸腰ではなかったということか。


「黒い霧に飲まれた亡国の遺物さ。けど、やっぱりこんな玩具じゃ魔物ゴルグを仕留められるほどじゃじゃない。だからとどめを刺すのはやっぱり君だよ。さあ、アラケア君。今度こそやっちゃって」


「助けられたようだな、シャリム。たぁあ!!!」


 俺は自分の足を掴んでいる巨兵の魔物ゴルグの手首に戦斧を叩きつけると、奴はあっさりと手を離した。どうやら最後の気力を振り絞っての行動だったようだ。


「終わりだ、この一撃でな。とくと味わえッ……『光速分断波』を!!」


 俺は水平に構えた戦斧に全身の闘気を収束させ、斧の刃を白熱のように光り輝かせると、巨兵の魔物ゴルグに向けて放った!

 眩い光が生じ、巨兵の魔物ゴルグへと向かい、炸裂する!


「ぎぃぃっ……あぁあああああっ!!!」


 断末魔の叫びが聞こえ、爆炎と爆風が対象を中心に広がる。

 そして、しばしして黒煙が晴れると……そこには粉々に砕け散った魔物ゴルグの肉片や破片のようなものが散らばっていた。


 決着である。

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