~ ポケットの中にはー♪ ~
ども、かたかなきんぐです。
「これからどうしようか 」
僕は、ユウカに問いかける。
子どもにこんな時頼らなくてはいけないのは、何とも頼りない。
(僕が導いてあげなくてはいけないのにな)
しかし、知らないものは知らない。
時には、子ども信じて任せるというのも保育士の仕事ですよね。きっと。
「はい、目下の所まずは王都、バレンディル王国に向かうのがいいと思います。ここから1日~2日歩けばつくと思います」
「あー、なかなか歩くね。僕は行けそうだけど、ユウカは大丈夫? 」
「はい、大丈夫です! 」
「それじゃ、早速向かおうか!」
「あ! 待ってください! 先ほどの死体を漁った時にS級のアイテムポーチを見つけたんです! 使ってください! 」
ユウカは何かの皮で出来たような小さめのポーチを差し出してきた。
「え、これ? S級なの? 」
「はい! 試しに、余ったお肉入れてみてください」
あの大きさのモンスターの肉を2人で食べ切るのは無理があったため、日陰において置いたのだ。
モンスターが寄ってきそうでドキドキしていたがそんなことは無かった。
僕は、言われた通りに入れてみる。
「えっ? これ。すごい! 」
まさに某猫型ロボットのポケットだ!
見た目の許容量と実際の許容量がかなり違うことに驚いた。
調子に乗って手をあちらこちらに入れて動かしていると、
ふにっふにふに
「あ、あん……///」
「おわっ! 」
肉とは別の感触と突然の喘ぎに、驚いて手を離してしまった。
「ま、マナト様? 大丈夫ですか? 」
ユウカは僕が喘いだと思っているのだろうか? 何故かニコニコしていた。
僕は意を決して、もう一度今度は両手を入れることにした。
「よいしょっと、ここら辺かな? 」
ふにふにっ
あの感触だ。柔らかくてずっと触っていたくなる。
ふにっふに。次は撫でてみる。
つぅー。
少し、湿っていて暖かい。
「う、うん……/// あっ……だめっ///」
うん、これ分かった女の子入っとる。
「よいしょと」
僕はそのまま両脇の下を持って引き上げた。
すると、
「うきゃぁぁぁっ! 」
ドシン。
女の子が出てきた。銀髪のロングに、目は前髪で隠れ、それでも何か魅力を感じる容姿をしている。歳は、15歳くらいだろうか。発育がいい体つきをしていて、血流が少し早くなったのを感じた。
服を着ていないので尚更の事だ。
「大丈夫? 」
自分の上着を掛けてあげようとした瞬間、目の前の女の子の姿がブレる。
「ふっ! 」
「うわっ! 」
どこから抜いたのかわからないが右手には長刀を持ち、僕を切り裂こうとした。
「ま、マナト様っ! 」
「だ、大丈夫!! しっかし、危ないよ。 そんなもの振り回したら! 」
銀髪の少女は喋らない。目を確認出来ない為、何を考えているかもわからない。
「……」
シュッ。
音もない、人間の急所を狙う無慈悲な斬撃。
僕は、自分でも何でよけられているのかわからない。
「――――ッ」
銀髪の少女は、何かをつぶやく。
すると、僕の右足と横腹を何かで切り裂かれた。
「ッう〜〜! 痛い! 速すぎだよっ! 」
衣服が割かれて、傷口がパックリと開いているのが見える。出血も酷い。
「……死んで」
更なる追撃をする為、銀髪の少女は再び口を動かす。先程の攻撃の時に比べて、長い間呟いていた。
僕は直感でわかる。やばいのが来ると。
「マナト様っ! フル・エンチャント! 」
「ん、これは!? レリウス!? 」
レリウスは、いつの間にかユウカと変わっていた。
「お気をつけを!マナト様。彼女は、幻魔人です! 」
「え! そうなの!? 」
そうこうしているうちに、チャージを終えたらしい銀髪の少女は、数メートルある風の刃を打ち出してきた。
「やっば! 」
「プロテクト! 」
レリウスが叫ぶ。
僕の目の前に半透明な防護壁が現れ、風の刃を受け止めた。
「くっ! あまり持たないですっ! ……避けて下さいっ!」
「よいしょっ! 」
僕は、レリウスに言われた通り、横っ飛びで避けた。その刹那、レリウスの張った防護壁は砕け、その背後にあった地面や木が跡形もなく抉り取られていた。
「ひぇ……」
「そこの人、神聖人? 」
銀髪の少女は、レリウスを見て問いかけた。
「はい、そうです。そういう貴方は幻魔人の方ですね? 」
銀髪の少女は何も答えない。
レリウスは、無言は肯定として見ているようだ。
僕はすっかり蚊帳の外な感じで傍から見ているだけだった。
「そう。神聖人……。じゃあ、いいや……」
「お待ちください! 私達は戦わなくてはいけない運命でしょう? 」
銀髪の少女は、無言で立ち去ろうとする。
「ま、待って! 」
「……? 」
僕は堪らずに声をかける。
銀髪の少女は、誰でしたっけ? というような顔で僕を見た。
(ちょっと、ショック……)
忘れているかもしれないが、この銀髪少女。
全裸なのだ。
養護も学んでいる身としては、全裸で少女を外にほっぽり出すのは、ネグレクトと同義な様な感じがして嫌だったのだ。
「あの、その、裸はダメだよ? これでも着て行って? 」
少女に手渡そうとしたのは、フリフリのゴツいドレスのような可愛い洋服。所謂、ゴスロリというものだった。もっと、普通の洋服を用意しようと思っていたのだが、何故かゴスロリが生まれてしまった。
少女は、食い入るようにその服を見つめている。
「い、やっぱり、要らないかな? 」
僕は手を引っ込めようとするが、むんずとゴスロリ服を少女は掴むと、大事そうに抱きしめた。
「貰ってくれるんだ! ありがとう! 」
僕はたちまち笑顔になる。
少女はくるりと踵を返すと、消えていってしまった。
「あ〜、とても痛い! 」
僕の横腹と右足からは絶賛大出血サービス中。
かと、思いきや。塞がっていた。痛みはあるのだが、傷がない。
「おいおい、本気ですか? 僕の身体おかしいんじゃないの? 」
「いえ、問題ありませんよ? 神聖人とはそういうものなんです。高速治癒は、自動的に備わっているものなのです」
レリウスが、近くに寄って説明してくれる。
「お、レリウス。さっきは、ありがとう」
「いえいえ、とんでもありません。これくらい、普通のことです」
レリウスは、謙遜する。
しかし、先ほどの戦いでレリウスは素晴らしい力をみせた。これが、神聖人というものか。
「身体は大丈夫? 」
「はい、何ともありません」
見たところ、疲労の色も出ていなくケロッとしていた。神聖人すごい。
「取り敢えず、バレンディル王国に向かおうと思うんだ」
「はい。それがいいかと思います。 私がご案内致します」
こうして、ようやく王国に向かうのだった。
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