〜 やっとご飯です 〜
今回長めになりました。すみません(>_<)
「あれ……? ここは」
「おはよう」
「えっと、私もしかしてまた寝てしまいましたか!? 申し訳ございません! 」
「大丈夫だよ。 それでね、ちょっと聞きたいんだけど、君の名前を聞いてもいいかい? ずっと君って呼ぶのもいやだからさ。 僕の名前は、二宮 真斗。マナトって呼んでくれてもいいし。出来れば、お兄ちゃんがいいかなぁ」
(あ、性癖を……)
「……はい。マナト様。私には、名前がありません。 強いて言うなら、番号で8番と呼ばれていました」
「(お兄ちゃんって呼ばれなかった……悲しい)わかった。なんて呼んでほしいとかあるかな? 」
少女は少し悩んで
「……わ、分からないです。そ、そんなことを言われたのは、はじめて、で! ど、どうしていいかが、分からないです」
「そっかぁ。じゃあ、僕が決めてもいいかな? 」
「……は、はい!ご迷惑で無ければ! 」
「それじゃ、優花でもいいかな? 」
(容姿とか、全く関係がないけど……この子は、優しい花のように育って欲しいな。)
そう思いながら、少女の様子を見ていると、ポロポロ涙がこぼしていた。
「あ、ごめん! 嫌だったかい? 」
少女は頭を横に振りながら、
「ち、違うんですっ!う、れじぐて! 名前をつけてもらっだのがっ!」
「それは、良かった」
僕は、少女を涙を拭ってあげる。
「ほら、そんなに泣いてると、可愛い顔が台無しだよ? 嬉しい時は、笑ってほしいな? ね? ユウカ」
「は、はい! 」
涙はとまってはくれなかったが、満面の笑みを僕に向けてくれた。
そのあと、僕はユウカのことをあまり聞いていないことに気がついて、
「そういえば、ユウカはどうしてここに来たんだい? 」
なぜ、こんなところにいたのか?
誰かがつれてきたのか?
それとも、何かから逃げてきたのか。
ここの近くには、人がすみそうな村などのようなものもなく、建物の一つさえ見つけけることができない。それだけ、遠い距離を子どもひとりで歩くことが出来るのか?
「は、はい、私は逃げてきたのです。バレンディル王国からグラステヌ帝国に奴隷として送られるために輸送馬車に乗っていたのです。私は、その途中で、兵士の隙を見て馬車から逃げました。
ですが、どこに行く宛もないので先ほどの草原で右往左往している所を化け物に襲われてしまったのです」
「そっか、本当に助けられて良かったよ。でも、これからどうするの? 」
「はい、ご迷惑でなければ、一緒に行かせてください」
ユウカは、少し震えながらそう言った。
「よし、一緒にいこう! 僕も一人は不安だしね」
ユウカは、パッと笑顔になって、
「やったー!! はっ……!? す、すみません! はしゃいでしまって申し訳ございません……。お願いです、見捨てないでください。」
(こっちがどう考えても素のユウカだよね。コロコロと表情が変わって可愛いなぁ)
「大丈夫。ねえ、ユウカ。我慢してるでしょ? 今のユウカとても可愛かったよ? だからずっとそのままのユウカがいいなぁ。僕は言葉遣いや態度で怒ることはないよ。だから、ね?」
僕の口からは、歯の浮くような言葉がつらつらと出てくる。
保育士なるもの子どもを褒められないとね!
そんな僕を前にしてユウカは赤面してうつむいてしまった。
「どうしたの?」
「うぅ……。恥ずかしいです。もしかして、マナト様は、タラシというものですか? 」
「え、なんで? 本当のことを言っているだけだよ」
「むぅ……でも、本当にいいのですか……? その、た、態度とか……ちゃんとしなくて」
「うん! 堅苦しいのはなしだよ? 」
「うん! わかりました! 」
「早速敬語だね」
僕は笑いながら突っ込む。
「す、すぐには無理です! 」
ユウカは慌てながら返答する。
すると、キューっとユウカのお腹から音がした。たちまち、ユウカは赤面する。
「あう……」
「あはは、そうだね。話に夢中で忘れてたよ。ご飯取りに行こうか。そうすると、そこら辺のモンスター? を狩って食べればいいのかな? アレとか食べられる? 」
僕は、サイのようなモンスターを指さす。
「は、はい。 食べられると思います! でも、あれは、A級モンス『行ってくるね!』えっ!? 」
僕は、モンスター目がけて、勢いよく走り出した。
(やっぱり、速い! あれ、昨日より速くなってないかな、これ。でも、どうやって倒そう、考えてなかった……ま、何とかなるでしょ!)
「よっし、このままー、えいやっ!」
モンスターの頭を殴り飛ばした。
驚く程に、柔らかく頭を陥没させてしまった。
「あれ? ほんとに? 終わった? これ、死んでるよね? こんなに柔らかいんだね。モンスターって……、おっと、いけないけない早く戻らないと! 担げるかな……」
僕は、力を入れて担ごうとするが、思ったよりも軽く持ててしまった。
「軽い、まぁ、いっか。走ろっと」
傍から見るととてもシュールな光景だ。
自分より大きなものをもって、軽やかに走っているのだから。
「うわー! マナト様! すごいです! 」
「そ、そうかな? 意外と弱かったよ?これ 」
「そんなはず、ないですよ!? だってこれ、B3級のモンスターで、王国の兵士が束になって狩るモンスターですよ! 」
「え」
「やっぱり、マナト様はお強いのですね! 」
「そ、そうなるのかな? 自分では実感がないけど。それよりも、早く解体しないとね! 」
「あ! そうですね! でも、どうやって切りましょう」
「あ」
ピキーンと僕の頭に何かがよぎる。
この力の使い方が一瞬にして理解できたような経験だった。
「────ッ。 うん」
「え? マナト様今のは? 」
「ナイフできたみたい」
「えぇ!? 本当ですか? 」
「うん! ほら! 」
僕の手には、銀色に輝く包丁くらいのナイフが握られていた。
僕はそれを躊躇いもなく、モンスターの体に突き刺して、肉を切り始めた。
「ふっ! はっ! 」
「す、すごいです! 」
恐るべき速さで、肉が解体されていく。
そして、内臓を切り開いた瞬間、
デロン。
人が出てきた。
「うぇ……ユウカはあっち向いてて」
「いえ、大丈夫ですよ? 慣れっこですから」
(慣れっこというのはどう意味なんだろう。ほかの子どもたちがこんな目にあってるということ? )
「そうなの? ひぇ……それにしても酷いな」
出てきた人間は、半分溶けて見るも無惨な状態となっている。 しかし、アイテムなどは溶けてはいないようで、ユウカが人間から防具やら武器やらを剥ぎ取りはじめた。
「私、死体から装備を剥ぐ仕事をやらされた時期があったんです。いい装備やアイテムを剥ぎ取って売るんです。そうでもしないと、生きられませんでしたから」
「そういう事か。うん。でも、もうしなくていいんだよ? そんな辛そうな顔をしながら、取らなくていいんだ 」
「で、でも、これくらいしか私出来ません。マナト様のお役に立てません!」
「ユウカ。 役に立とうと考えなくていいんだよ? ユウカ、僕は君が迷惑をかけようと役に立てなかろうと関係なくきみを見捨てないよ」
「ほ、本当ですか? 」
「もー、本当だよ? んじゃ、おまじないしよっか! 嘘つけなくなるおまじない。 小指出して? 」
「は、はい。これでいいですか? 」
僕はユウカの小指に自分の小指を絡ませ、
「うん。指きりげんまん嘘ついたら針千本のーます。指切った♪ はい。これで、お互いに嘘つけないよ? 嘘ついたら、針千本飲まされるからね? 」
「は、はい! 信じます! マナト様!」
「さてと、どうやって焼こうかな? 」
「先ほど、漁った肉焼きセットがありますよ? 」
「good! ありがとう。何だか、モン〇ンみたいなセットだね、使い方はー、うん。刺して火をつけて焼くだけか」
〜♪おなじみの音楽を口ずさみながら楽しく調理しる。
「上手に焼けました!! 」
僕は、ただ焼いただけの肉にただならぬ魅力を感じた。
空腹の時はなんでも美味しそうに見えるよね!
「お、美味しそうです! 」
ユウカもヨダレが垂れそうになっている。
「じゃあ、食べようか? いただきます! 」
僕は肉にかぶりつく。
「う、旨い! これが肉本来の味なのか!? ってあれ? 」
ユウカは、肉と僕を交互に見てじっとしていた。
「どうしたの? お肉嫌い? 」
「いえ、大好きですし、こんな豪華なものは初めてです。 でも、一緒に食べてもいいのですか? 」
(どれだけ過酷な状況だったんだろう)
僕は、そんなことを思いながら、
「いいんだよ! さっ、食べて? 口あけて、はい、あ〜ん」
「んぐっ!?」
肉の大きな塊を口に突っ込まれて、一生懸命に口をもぐもぐしている。
「お、美味しいです! 」
「でしょ? 」
そこからは、ユウカは肉を貪るように食べていった。
「うん。満足満足! ご馳走様でした」
「ごちそうさまでした! 」
約一日ぶりくらいのご飯を堪能した僕たちは、これからについて話すことにしたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます!