プロローグのようだ。
楽しんでいただけると光栄です。
────僕の夢は、保育士になること。子どもたちが笑顔で健やかに成長できるようにすること
僕、二宮 真斗は大学2年の夏に交通事故で夢を叶えることなく死んだ。……はずだった。
「ここ、どこ? 」
僕は呆然と辺りの景色を見て、立ち尽くした。
のどかな緑が生い茂り、見たこともない動物が歩いていた。
「まさか、日本じゃないよね……? 僕、夢見てる? 」
僕は、自分の頬を痛いほど抓るが、
「痛い……現実なんだ、これ。多分、異世界? ってやつなのかな? うーん。」
友人の持っているゲームや書籍などの絵とどことなく景色が似ている。
「なら、確かこんなだっけ? ウインドウ! 」と、僕は叫ぶ。
しかし何も起こらない。
「うーん、自分の情報がモニタリングされると思ったんだけどなぁ……ステータス・オープン! 」
しかし何も起こらない。
「えーと、ディスプレイ! オープンスキル! 魔法の鏡よ! 開けごま! オープンセサミ! ゲートオブ……ぜぇ、ぜぇ。ダメかぁ……ゲームや本はあんまり参考にならないなぁ」
モニタリングするのを諦めて、辺りの状況を確認する作業に移った。
それからしばらくして、辺りは暗くなり始めていた。すると、どこからか助けの声が聞こえた。いや、悲鳴だろうか?
僕は、その声が聞こえた瞬間いても立ってもいられなくなった。悲鳴の上がった場所へ走った。
「身体が軽い? 自分の身体じゃないみたいだ! 」
少しして、悲鳴の上がった場所へとたどり着いた。
「あれだけの距離を走ったのに、息ひとつ乱れない。何なんだろう。じゃなくて! 今は!」
あたりを見回すと、女の子が猪の様な化け物に襲われていた。獣は、体長3m体高は2m程の大きさで、その大きさを前に少女は、岩を背にカタカタと震えていた。
「ヒッ……ぁっ」
化け物は今にも少女に向かって突撃しそうだ。
───グゥオオウオウオオオオオオオッ!!
化け物は咆哮と共に大地を蹴り、女の子に猛進し始めた。
「なんか、デジャヴ!!でもっ、助けなきゃっ!うおおおおおおおっ!」
僕は少女を目がけ駆け出す。
だが、化け物と人間どっちが速いかは馬鹿でもわかる。
「くっそっ! ……間に合わな……ぃ、せる! 」
(諦めちゃいけない! 子供の未来を、笑顔を守るんだ! 失わせるもんか!! それが保育士だろ!! )
刹那、僕の左手が眩い光を放ち、二宮は加速した。
「あああああああっ! はっぁっ! 」
僕は、何が起こったのかわからなかった。
化け物は、岩を半壊させ、頭がハマり抜けなくなっていた。
「そ、そうだ! 女の子は!? 」
と、理解の追いつかない頭を働かせる。すると、腕の中に温もりがあった。
僕は、すっと、顔を腕の中に向ける。青い髪をした幼い少女が涙を薄らと浮かべ、気を失っていた。
「あぁ、良かった…。助けられた。」
僕は、ホッとして涙が零れてしまう。
しかし、
ズガラガラガラガラッガラガラガラッ!
大きな何かが崩れる音を聞いた二宮は、ハッと我に返る。
「そっか、死んでなかった……。逃げなきゃ、痛ッ! 」
さっきの時とは、うって変わり足が鉛のように動かず、激痛が走った。
「さっきの代償って訳か、本当にカッコつかないなぁ」
目の血走った化け物は、
────ガァァグオグオウグァァグオオオオオオ!!
怒りの咆哮をあげた。
「この子だけでも何とかっ! 」
ぐぐっ、力を足に入れるが動かない。
獣は突進の体勢にすでに入っている。
「動けよ! くっそォッ! 」
ズドンッ化け物が地を蹴った音が聞こえた。
巨体は弾丸のように向かってくる。僕は、女の子をぎゅっと抱きしめた。
「神様! いるなら、僕の命ならくれてやる! この子だけは! 守らせてくれェェェッ! 」
その瞬間、少女が目を開いて呟いた。
「思い出して、さっきの感覚を……きっとあなたなら……」
「さっきの感覚? 」
問い返したが、少女は目を再び閉じてしまった。そっと、少女を草の上に寝かせる。
「さっきの感覚。さっきの感覚……」
僕は、目を閉じる。僕の中に眠る激情を思い出す為に。そして、
「守る。絶対に救ってみせるんだ! 僕は二度と失わない!! 」
左手が熱くたぎり、光輝き始め甲の部分に赤黒い文様が浮かび上がる。そして、右手に大きなラトル、赤ちゃんのよく持っているガラガラが現れた。
「これは……。武器なのかな…?ラトルはこうやって使うものじゃないんだけど……でも…これでっ!はぁあああぁぁぁぁぁぁッ!!」
長さ80cm厚さ30cmのラトルを向かってくる獣に縦に振り切った。
ガラガラガラガラッ!大きな音を立てながら、化け物の頭部に当たり、あの巨体を叩き伏せた。
────グゥゥゥォォォォオオオオォォグ!!
化け物は、絶叫してそのまま動かなくなった。
「はぁ、はぁ……。やった。」
僕は、へたりと座り込んでしまった。
「腰抜けた……。うん。でも、守れたな」
僕は、清々しい気持ちで倒れた獣を見た。
すると、獣が光の粒子になって夕暮れの空へ消えていった。
僕は、その幻想的な光景に目を奪われていた。
しばらくして、
「何を、してるの?お兄さん」
「うぇっ!? 」
突然、声を掛けられて変な声が出てしまった。
「……びっくりした」
「あ……ごめんなさいっ」
少女は、泣きそうになりながら謝る。
(何だか、さっきの戦闘の時とイメージが違う? 気のせいかな)
「あ、ごめんね? 怒った訳じゃないんだ。ただ少し驚いただけで。それでどうしたの? 」
僕は、怖がらせないようにありったけの優しい声で少女にいう。
「う、うん。 その、、じゃなくて世界を救ってほしいの!」
僕は、少女が喋っている間目が赤くなっていたのが気になっていた。
(いま、目が赤くなったけど、なんだろう)
暫くの沈黙を経て、
「うん、いいよ」
「ほんと……に!? 」
少女は、満面の可愛らしい笑みを浮かべた。
「うん。僕の作った二宮10か条にも、『子どもの願いはなるべく断らない! 』っていうのがあるからね。僕のできる範囲で頑張るよ」
少女はその言葉を聞き、今まで我慢していたのか大きな声泣き出してしまった。
「ありゃ、 よしよし大丈夫? 」
僕は、頭を撫でようする。が、
「ひぃっ! 」
少女は、腕で頭を守る体勢に急に入った。まるで、ぶたれると思ったかのように、
「あぁ、ご、ごめんなさい。許してください……許してください……」
少女は口早に許しの言葉を乞う。
「ッ……。これは、虐待された子どもの特徴……」
ギリッ! 歯を強く噛み締めた。
僕はそっと少女を抱きしめた。それから、ゆっくりとした動きで頭を撫でる。
「大丈夫、大丈夫だから。ね? 僕は、怒ってないから……いいこ、いいこ」
「グスッ……うん、うん。あったかいです……」
少女は、落ち着いたのか僕に抱かれたまま眠ってしまった。
「今度は救えるかな……」
きゅーっと、お腹がなる。
「そう言えば、何も食べてなかったな。でも、今からじゃ厳しいなぁ。とりあえず、寝ようかな……いたっ! ふぅ、寝るのも一苦労かも」
僕は、空腹と痛みに耐えながら、近くの木を背にして寝ることにした。
こうして、異世界? での一日目が終了した。
どうも、かたかなきんぐです。
プロローグを最後まで読んでいただきありがとうございます。
プロローグがプロローグじゃないと、友人から突っ込まれましたがプロローグです。はい。
初投稿ということで、色々と設定が曖昧なところがあると思います。ごめんなさい。ぜひ、ご指摘お願いします! これから、ゆっくりと続きを載せていこうと思います。よろしくおねがいしますね!