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雨男、その尾を濡らす  作者: 汐多硫黄
降水確率3% 「雨男と憂鬱な雨の日の魔女審判」
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 降水確率3%「雨男と憂鬱な雨の日の魔女審判」



「では。これより、第一回、左雨五月雨に対する《魔女審判》を執り行います。議長は私、風紀委員長こと、晴模様命が運命的に務めさせて頂きます」

「にしししししっw はいはいは~い、異議無しで~す!」

「? チジョちんパイ?」

 

 ― 断固使用中!!! ―


 黄昏色から闇色に移ろいつつある屋上を後にした三者+青年は、場所を件の風紀委員専用会議室へと移し… 行われるは青年を巡る三者三様の円卓会議。血で血を洗う争いに発展する… かどうかは成り行き次第。

 ああ、青年、どうする? どうする? 青年!? そんな風に椅子に縛られてる場合じゃないぞ!!


「ま、待て待て待て。待てお前さん達! 命、キーテ、それに更科… これは一体全体なんなんだよ!? 俺が何をしたってんだ!!」

「五月雨君あなた… 私の与り知らぬ内に、運命的に面白い事になっているようじゃない。羨ましいわ、随分おモテになられるようで」

「ち、違う! あれは、別に、その。一言で言うと誤解なんだ! 二言で言うと… とにかく誤解なんだって。俺は何も疚しいことはしちゃいない。なぁ、キーテ? あれは、冗談だよなぁ? お前さんお得意のジョークだろ? そうなんだろ? 聞いてアロエリーナ!」

「ヒドイデス、サミー。あれだけハゲシク、ナカでアイシアッタノニ。あ、ちがったデス、アイシアッタナカ、なのニ」

「してないよ!? 俺、一切全くこれっぽっちも先っちょもしてないよ!!?」

「グッド。良い度胸ね。いずれにしても詳しく話を聞く必要があるわ… 更科さんも一先ずそれで言いかしらん?」

「イヒヒヒヒッw あたしは面白ければ何でも良いよぉ?」

「お前さんの立ち位置はなんなんだよ! ってかわざわざ亀甲縛りにする奴があるか! どこで習ったんだよ更科! あーくそ、こうなったら先生、法楽先生だけが頼りなんだ、お願いしますよ…」


 金髪異国少女に迫られた際、青年が屋上にて送信した緊急メール。その三人目の相手である法楽教師。一歩遅れて屋上へと到着した彼女が機転を利かせ、一先ずは場所をこの風紀委員会議室へと移したというのがこれまでの事の次第。


「んぁ? あぁ。面倒だが、一応万が一何かあっちゃいけねーからなぁ。教師として成り行きくらいは見守っていてやるよ。基本、傍観者でいるつもりだがな。しかしよぉ、左雨。先生、確かにあんな事いっちまった手前責任が無ぇ、とは言わないけど。これは幾らなんでも段階すっ飛ばしすぎだよなぁ。いきなりもてもてハーレム状態とか、先生ちょっと嫉妬しちまうぜ」

「煽るな煽るな!この万年日照り教師。それにこれのどこがハーレムなんでスか、こんなの俺にはただの地獄の一丁目にしか見えねーっての」

「上等じゃねーか。それに、一丁目があんなら二丁目もある。それだけ左雨が愛されてるって事さ、この短期間でよくもまぁこんだけ懐柔したもんだ。先生素直に感心しちまったぜ… んで、本命の《晴女》はどいつなのよ? やっぱ晴模様か? それとも天晴れちゃん? 大穴でまさかの更科ってのも悪くねぇな」


「ちょっと待った!」

 まっすぐに手を上げ、そう叫んだのは風紀委員長女史。青年を真ん中の供物台に据えてその周囲を三者で囲むように始まったこの円卓会議。これは初っ端から波乱の幕開けになりそうなのであーる。


「それ、それよ! その《晴女》ってワード。私、運命的にずっと気になってたのよね、聞こうとしていた矢先にあんな事やそんな事があったから、中々聞き出すタイミングが無かったのだけれど。そもそも一体どういう意味なのかしらん? 先生と更科さんはご存知のようですし、私だけ何も知らずにアホ面下げて爆心地状態はご免なのよ。五月雨君、とっとと説明なさい!」

「いや、別に、その。ってか、今か? 今説明する必要ある事か? それは」

「セーサイであるキーテもシリタイデスよ?」

「ちょっと黙っていてくれるかしら転校生さん。五月雨君、確か私達は一蓮托生… そうだったわよね?」

「あの… ハイ」

 

 そう言って塩らしく半笑いでうな垂れる青年。もう目が死んでる青年。 

 でかい図体しているくせに弱っちぃぞ青年、情けないぞ青年! そのいつも通りの平常運転が悲しいぞ、青年。 


 そうして説明責任を果たすべく、口を開こうとする青年… を制するようにして、少女更科がその場で立ち上がる。 


「んー、何だかおもしろ… 可哀想だからあたしがちゃっちゃと説明してあげるよぉ」

「頼むからこれ以上引っ掻き回さんでくれよ、更科」

「まぁまぁ、そう心配しなさんな、さささ君や。えーっとねぇ、ほら、委員長ちゃん。さささ君ってば、ぼっちじゃん?」

「そうね。眼が死んでしまっているものね」 

「さささ君の青春ってば真っ暗じゃん?」

「そうね。心が死んでしまっているものね」

「さささ君の人生ってばお先真っ暗じゃん?」

「そうね。運命的にはもう死んでいるも同然ね」

「だから、そんな土砂降り系男子の心を晴らしてくれる晴女が必要なんだってさぁ」

「成る程。言葉ではなく心で理解出来たわ」

「今ので!? どんだけ訓練された黄金の精神してんだよ」


 良かったな、青年。

 彼女達が皆一様に黄金の精神を持つ奇妙な淑女達で。こうなったらもう決めちゃいなよ。ユー決めちゃいなよ。

 そう、これは、この事態は、捉えようによっては、青年にとって起死回生の人生大逆転を決める最大のチャンスにも成り得るシーンだということに、青年… 早く気が付いてくれ! いつまでも死

んだ魚のような目をしながらうな垂れている場合じゃないぞ!


「不潔ね、五月雨君。まさか五月雨君が体目的で私に近づいてきたなんて、思いもよらなかったわ」

「絶対理解してないよね!? お前さんの確証バイアス酷すぎない!? だいたい命、お前さんの場合はそっちから近づいて来たんだろ! 俺を更生させるとかって」

「ああ… そんなこともあったわね。あなたと私の目的があまりにおあつらえ向きでぴったんこかんかんだったものだから、つい、驚いてしまって」

「え? いや、まぁ。確かに言われてみれば… どうして今まで気が付かなかったんだ俺は。命のキャラがあまりに強烈だったからか?」

 

 そう。そうだぞ、青年。そこが重要なんだぞ青年。

 青年は己を変えてくれる晴女を探していた。少女は青年を更生させるべくその前に現れた。ぶっちゃけもう、最初からピースは揃っていたんだぞ! 灯台下暗しだぞ、青年! 難聴、鈍感、トーヘンボクのバッドステータスなんてそれこそ本物の呪いだ。そんなの今すぐ捨てちまえ、青年!

「今頃気が付くなんて、やはり五月雨君はとんだトーテム野郎ね。運命的に考えて。でもいいわ、寛大なる私が許してあげる。何せ私とあなたは一蓮托生。あなたの呪いを解くことが出来るのは風紀委員長たるこの私だけ。そう約束したものね? ふふっ、理解出来たようでなによりだわ」

「命、お前さん…」

「私はね、五月雨君。あなたの望む晴女になるつもりはない。ましてや雨女なんかでも断じてない。その、ね? 正直言うと、私は… あなたの、あなたにとっての《イイ女》になりたいの!!」

 


 はい。

 キタああああああアアアアアアアアアアアア。

 きた、きました! とうとうやってまいりました、委員長女史のデレ期到来であります!

 さぁ、どうする? どーすんの青年!?

「晴模様、命。そうか… 俺にとっての《晴女》は、こんなに近くに… 俺の晴女は、晴模様みこ」




「イギありデース! ユーギボーイ!!」

 勢い良く立ち上がり、これまたピンと腕を伸ばしそう叫んだのは、異国金髪少女ことキーテ・アロエリーナ・アッパレリアその人だった。



「誰が遊戯ボーイだよ! トゥーン野郎はちょっと黙ってろ! ってかキーテ、今度はお前さん一体何だよ、よーやく俺もハッピーエンドを迎えられそうだってのに」

「サミー、それはちょっとソーローすぎデスヨ。童貞ボーイがヤリがちなバッドチョイスなのデス。このわからんチン!」

「だから何でいつも童貞の発音だけは完璧なんだよ… けど、確かにお前さんには言いたいことが腐るほどあったな。そもそもお前さんが屋上であんな事したり爆弾発言投げつけなきゃこんな事態にはなってねーわけだからな」

 小さく溜息をついた青年は、椅子に縛られたままの体を小刻みに器用にぴょんぴょんと動かしつつ、異国少女の前へと対面する。

 やはり腐っても青年。そう思い通りにエンドロールを迎えられるようなちゃちな人生は歩んでいない。つまりはそういうことなのであーる。

「だったらキーテ。今度はお前さんに説明責任って奴を果たしてもらおうか。お互い、もう後戻りは出来ないんだ。話したくないじゃ済まされなくなっちまったってのは理解しているだろ?」

「おふこーすデスよ。あーあー、ゴホン。キーテは、ニホンからトオイトオイ、シマグニでウマレタ」

「それはもう三回くらい聞いたな。しかも暑い国なんだろ?」

「イエス。とぅーホットなのデスね」

「天晴れちゃん、天晴れちゃん。ちなみに何て国なのさ?」

 少女更科のそんな呼びかけ一度だけコクリと頷いた異国少女は、何故かその場で大きく大きく深呼吸を行い、そして。

「アソコのアナかっぽじってヨクキイテね? キーテのくには………………………… 《キーテ・アロエリーナ・チョットイイニクインダケド・キーテアロエリーナ・シミトシワガフエチャッタ・キーテクレテアーリガト・アロエリーナ・おーこく》なのデスよ、このわからんチンども」

 歌うようにして、実に15秒を使用して発表した長い長い国名。それなんてCM?

「… 気のせいかしら、私、物凄くヨーグルトが食べたくなってきたのだけれど」

「俺はアロエに願いを込めたくなってきた」

「あ~美味しいよね~w」

「つーより、そんな国があること事態生まれて始めて知ったよ、俺は」

「チナミニ、それはせいしきメーショーで、りゃくしょうは《ロリエロ》おーこくデスよ。チズにものってないヨ」

「どこをどう略してんだよ!!!? 如何わしすぎて主要名産品や首都名を聞くのがこえーよ!!」 


 異国金髪少女、改め、遠い島国ロリエロ王国からの使者であるアロエリーナが更に続ける。


「ちなみにシュトのネームは《ケンジャタイム》なのデス」

「手遅れだよ!! もう何もかも手遅れだよその国!! あれだろ? どーせ名産品はマンゴーとかパインだろ? 絶対そうだろ」

「その発言には流石の私もドン引きよ、五月雨君。運命以前に、風紀委員長的に考えて」

「… サーセン」

 ロリエロ王国からの使者は、ゴホンと少しだけ咳払いをし、わざわざ視線を注目させてから宣言する。

「そして、キーテはロリエロおーこくのだいさんおーじょなのデスよ、えっへん!」

「私… 本物の王女様って始めて見たのだけれど。何かしら、このえげつないガッカリ感は。無性に腹が立ってきたわ。五月雨君、一発ぶん殴ってもいいかしら? 運命的に考えて」

「普通にイヤだからな!? ってか、俺もいい加減このテンション維持すんの疲れてきたよ。ずっとキーテのターンかよ… 俺のライフポイントはもうゼロだよ…」


 意気消沈気味のメンバー達を尻目に、件のロリエロ王国からの使者は、今朝の自己紹介時と同様、その場で何故かくるくると回転し、ドヤ顔でポーズを決める。重力に従いぽよんぽよんと揺れる彼女の双丘と、遠心力に従い花開く彼女のスカート。そしてご開帳される黒レースの大胆な下着。周囲に重苦しい空気が流れる。異文化コミュニケーションとは、さしも難しいものなのである。


「一体どこの海溝の次元の裂け目からやって来たんだ、このカイジュウは…」

「コッカラガたいせつなハナシ。いま、ロリエロおーこくは… こうけーしゃがイナイのデス」

「天罰だよ! どう考えても神が与えたもうた順当なる天罰だよ!!」

「ちょっと待ちなさい転校生。あなた今、第三王女って言ったわよね? 少なくともあなたには姉妹が居て、勿論あなた自身も健在。それで後継者が居ないと言うのはどういうことなのかしら? 私、気になりますわ!」

「おいおい食いついちゃったよ。意外な奴が食いついちゃったよ」

 今度はそんな風紀委員長女史の素朴な疑問に対し、一度だけコクリと頷いた第三王女様が、かつかつと会議室の窓に近寄り、ガラリと全開に開ける。

「? どーいうことだよ、もしかして外が何か関係あるのか?」

「イエス。ロリエロおーこくでおういをつぐには… モロチン、あいてもひつようナノデスが…」

「もちろん、な。続けて」

「とあるトクシュな《アメ》をフラセルことがヒツヨーなのデス」



『!!!!!?』

まさかまさか、ここにきてまさかの展開。

 

異国少女が発したその一言の意味することは、とどのつまり…… 《少女は最初から青年に近づくために転校してきた》ということに他ならず。



「まさかお前さん、最初から俺の事を、俺の《雨男》って体質の事を知ってたのか?」

「ソーリー。だまっててゴメンでした、サミー。でも、サミーのチカラはほんものダッタ。キーテ、とってもトッテモうれしかった」

 つまり、屋上での青年殺害未遂首絞め事件の顛末は、彼の《首に何かを巻くと雨が降る》という体質の裏づけをするための行動だったということだったのである。

「ねぇねぇ、天晴れちゃん。天晴れちゃんの国の正体もめちゃくちゃ気になるけどさ、その特殊な雨ってなんなのさ? あたしも気になります!」

「える知っているか? 死神はリンゴしか食べない…… ゴホン。すまん、今のは忘れてくれ。あまりの展開につい我を忘れちまったぜ。で、どーなんだキーテ。確かに俺は雨ならある程度降らせる事が出来るかもしれないけどさ、特殊な雨とやらは難しいかもしれないぜ」

「ロリエロおーこくでのおういケーショーのジョーケンとなる、トクシュなアメ。それをフラセラレレバ、せいしきなオージョになれるのデス。ソシテ、そのアメは《シロいアメ》なのデス」

「え? シモイ雨? …… ゴホン。ふむ、白い雨か。白い飴なら俺の好きなミルキーだが。小説や映画のタイトルにありそうなワードだな。これまでの展開からしたら随分とマシな単語だ」

「しろいアメのせいしきなメーショーは、セイント・インポータント・シャワー。つまり、せいなるジューヨーなしゃわぁ。りゃくして………《セイシ》!!!」



「もう滅べよそんな国!!!!」



「セイシ。不思議な響きね、どこかで聞き覚えがある。何故かドキドキしてくるわ…もっと詳しい話を聞きたいわね」

「どーすんだよ! とうとう風紀委員長殿まで完全に可笑しくなっちゃったよ!!」

 青年のそんな心の叫びを意に介さず、尚も、件の異国の第三王女様は、至って本気で至って真面目な顔で続ける。

「もうヒトツ。コクハクがアリマスデス。サミーがアメオトコたいしつであるよーに、ロリエロおーこくのオウゾクのチスジはみんな… 《ユキオンナたいしつ》なのデス。でも、ギシキにヒツヨーなのはユキじゃない。とってもとってもツメタイ、シロイアメ…」

「おいおいおい。南国に雪なんて降るのかよ。それこそ何の意味も無い体質だな… いや、むしろそれで良いのか。雪女体質なんて俺と同じで百害あって一利なしだもんな」

 ドキドキ魔女審判、キーテ編もいよいよ佳境。果たして、彼女の言う白い雨の正体とは何なのか?

 勘の良い方ならばもう真相に辿り着いてる頃であろう。それでは、ここは一つ代表して風紀委員長女史、回答をどうぞ。

「ちょっと待ちなさい五月雨君。私… 分かっちゃいました。白い雨。冷たい雨。雪女体質。そして雨男。それって、《みぞれ》の事じゃないかしらん?」

「霙。雨と雪が混ざって降る気象現象の、あのみぞれか? おいおい、マジかよ」

「どういう理屈なのかは全く理解できないけれど。ロリエロ王国は地図にも載らぬ小さな島国。王族達の間にはその雪女、或いは雪男体質が脈々と受け継がれ、国外から雨男、或いは雨女気質の女性を儀式の成功の為という形で取り入れ、同時に諸外国の文化、知識、風土、血筋を組み入れることで次世代へと国を独自に発展させていったのね… 深いわ」

「ザッツライト! そんなトキ、キーテはサミーのウワサをキキツケ、ヒッシにニポンゴをベンキョーして、こーやってアイニキタのデス!」


 凄いぞ青年! 青年の体質はついに国境を越えたのだ! 素直に喜んで良いのかは分からないが、取り敢えずおめでとう!


「だからこそ、屋上でのあの結婚宣言かよ。合点がいったぜ… 勿論、はいそうですかってわけには行かないが」

「サミー。サミーはロリエロおーこくのきゅーせーしゅなんデスよ? ロリエロのおーさまになってよ! ロリエロキングになってよ!」

「まず、その卑猥界のチャンピョンみたいな言い草は即刻辞めろ」

「サミーはヒツヨーとされてるニンゲンだよ! サミーはいらない童貞なんかじゃない! ロリエロおーこくみんなの童貞キングだよ! 童貞キングばんざい!!!」

「マジで涙が出てきそうだから童貞キングって言い方だけは是非辞めてくださいお願いします」

「ねぇ、サミー。サミーは… キーテがワイフじゃ… いや? キーテのこと、キライ?」

 目に涙を浮かべ、両手を祈りのポーズのように合わせ、青年の前で上目遣いで跪く。


 あぁ、もう、これ。

 完全に詰み状態という奴なのではないか? だって。いつの時代もどこの国でも、女の涙は最強のカードなのだから。


「きら、い… じゃ無い。嫌いじゃないから安心しろよ、キーテ。ふぅ… ぼっちの筈の俺が一気に数段飛ばしで気が付けば結婚、ってか? しかも国際結婚で、将来は王様。もう晴女どころじゃねーし、これなんてエロゲだよ…」

「サミー! それってツマリ?」

「誰かから必要とされるなんて事、これまであんまり無かったからな。それに、まさか俺のこの呪いの体質が人様の役に立つ日が来るなんて考えても見なかった。だからこそ、俺にとっての晴女は… キーテ・アロエリ」




「ところがどっこい裁判長! 残念ながら異議ありだよん! 振り逃げごめんじゃ済まされないのが現実ってもんだよ、さささ君!」

 小さな体で最大限に主張しながら、少女更科が、終わりかけた魔女審判に再び討議を投げかける。

 

 エンドロールは巻き戻り、舞台は再び円卓会議へと舞い戻る。



 あえて言おう。

 これからが最終局面であると。

 

冒頭に述べた通り。この少女更科にはまだ秘密がある。それも、この物語の根幹たる秘密が。


 先ほどの青年の言葉に例えるならば。

 風紀委員長女史はメインヒロインのA面ルート。

 キーテ・アロエリーナ・アッパレリアは奇想天外なB面ルート。

  

 そして。

 今から繰り広げられるであろうこの更科ルートは… 言わばグランドルート。前二者をクリアしたものだけが進める完結編。全ての謎が解決される言わば解決編。

何事もオールクリアに価値がある。それでは、はりきって行ってみよう。


 いざ、グランドルートへ。

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