雨音のカラオケ初体験
日中の正樹の部屋。学校へ行った彼の部屋からカタカタと物音が聞こえる。
「ふーっ・・・。大分この操作方法にも慣れたのう。」
満足そうにパソコンを操作する麻姫。正樹の部屋に忍び込み、堂々と彼の部屋でパソコンをいじる。
「情報、動画、ゲームと色んな魅力が詰まっておる。これは踏み込んだらなかなか抜け出せぬな。それ故、『おふらいん』で遊ぶのが一番じゃな。」
あえて誘惑に触れない自分の行為を賢いと思い、内心で誇る麻姫。正樹のPCにインストールされているエロゲを黙々と作業する。
「ふふふ・・・。やってみると面白いものじゃのう。」
やっているのはノベルゲーム。アダルト描写が少ないファンタジーもので、ゲーム要素は少なく、時折出てくる選択肢を選ぶだけで進み、バッドエンドはあるが詰まりにくいゲームである。数日前に興味本位でアイコンをクリックした麻姫だが、やってみると、その文章に魅了され、正樹が居ない日中に勝手にパソコンを開きプレイするようになっていた。
「ああ、コーヒー牛乳がうまい。まさに至福の時間じゃ。」
予定もなく邪魔する者もいない。カチカチとマウスをクリックし、文章に目を通しながらお気に入りのコーヒー牛乳でのどを潤す。
『ピンポーン』
「!!」
『ごめんくださーい!!』
「この声は・・・。」
子供の声が部屋まで届き、至福の時間の終わりを告げる。
「・・・雨音か。」
「こんにちはー。」
活発な声の主。ニコニコとドアの前に居た天音を中に入れ、居間へと案内する。
「どうした?遊びに来たのか?」
「うん。おばあちゃんが『ていきれんらく』とか言って出かけるから、麻姫のところに行きなさいって。」
「ああ、定期連絡か。郷への報告じゃな。それにしても、来るなら来るであらかじめ連絡すれば良いのに・・・。婆様も適当じゃのう。」
自分の時間を邪魔され、文句を言う麻姫。その後、適当に会話をして雨音が時間をつぶせるようにと数十冊のマンガを用意する。
「・・・・。」
「・・・・・。」
二人とも漫画に集中し、ダラダラとした時間が潰れる。そんな中、雨音が口を開く。
「ねえ、おねえちゃん。」
「うん?」
気だるそうに反応する麻姫。
「『カラオケ』って言ったことある?」
「カラオケ?ああ、たまに出てくるのう。演奏に合わせて歌うことが出来るとかいう機械じゃろ?」
雨音の読む漫画には主人公と彼女がカラオケに行くシーンがある。きっとそのページを見たのだろう。
「この世界の娯楽に触れておるとたまに出てくるのう。一般的な施設じゃろうが、妾は行ったことが無い。興味あるのか?」
「・・うん。」
「『うん』って、おぬしはこの時代の歌が歌えるのか?」
「歌えない・・けど、行ってみたいなって・・・。」
「ふーむ・・・。ならば妾が教えてやろうか?正樹に言えばカラオケ位、連れてってくれれるじゃろうし。」
「ホント!?」
「うお!?ビックリした。」
余程興味があったのか、嬉しそうに声を弾ませながら麻姫に詰め寄る雨音。
「そんなに行きたかったのか?」
「うん。」
「まあ、正樹が帰ってきたら聞いてみるから待っておれ。雨音の頼みごととなっては断ることが出来まい。」
数時間後。
「ただいま。」
帰宅する正樹。だが、いつものように『おかえり』と言う返事がない。
「出かけてるのか?」
居間に入るといつも以上に散らかっていた。雑誌や単行本が散らばり、メモ帳の裏には子供が書いたであろう落書きの後。コップが2つあることから、来たのはおそらく雨音ちゃんだろう。そして、気持ちよさそうにソファで眠る麻姫。
「ふー・・・。」
溜息を吐き、自室へと向かう正樹。『片づけなきゃ』と気落ちしながらベッドの上に鞄を置き、部屋着に着替えようとするが、そこで違和感に気付く。
「・・俺、パソコン点けて出かけたっけ?」
机の上に置かれたパソコンに電源が入りっぱなしだった。そして、その横に置かれたコーヒー牛乳のパックと飲みかけのグラス。
「もしや・・・。」
十分すぎる証拠を見て、犯人を確信する。
食事中、麻姫から今日の出来事を聞かされる。
「へえ。雨音ちゃんがねえ。」
「うむ。余程行きたいのだろうな。聞いてみると言ったら喜んでおったわ。子供ゆえ、好奇心があるのであろう。まあ、現代の文化に触れたいのは妾も同じじゃが。」
「うーん。じつは、今週の日曜にカラオケに行くことになってるんだよね。」
「なに?」
「カッキーがテストで缶詰め状態だったからさ。久々にカラオケでもってことで。それと成り行きで鳴女さんと中西と名張が来ることになった。」
「中西と名張って子は知らぬのう。」
「中西はカッキーとテストで競った相手だよ。名張はその友達。」
「ふーん。敵と遊ぶとは、変わっておるのう。」
「別に仲が悪いわけじゃないから。第一、誘ったのはカッキー。罰ゲームでトラウマ植えつけたから、その穴埋めさせられることになったとか。」
「?・・言ってる意味が分からぬのじゃが。」
「分からなくていいよ。大した話じゃないし。カラオケか。いいよ、鳴女さんと打ち合わせして、連れて行ってあげる。」
「ホントか?そうと決まれば妾も練習せねばな!」
「え?マキも行くの?」
「そのつもりじゃったが?大丈夫、今から練習すればボロなぞ出ぬわ。」
「まあ、いいけど・・あ、そういえば。」
テレビのリモコンを手に取り、チャンネルを替える。映し出されたのは音楽番組。
「こういう曲は?今はやりのアイドルグループ。」
「何を言ってるか分からん。横文字は苦手じゃ。それにこやつらの魅力は踊りであって歌では無かろう。」
「うーん。歌も魅力だとは思うけど。まあ、合わないなら無理強いはしないな。」
アイドルグループの曲が終わり、次のアーティストが紹介される。出てきたのは二人組で整った顔立ちの男性二人。
「あ、これは?クラスの女子で好きな人も多いよ。」
曲が流れ、それを聞く麻姫。確か、曲のコンセプトは『一途な男性の気持ちを表した曲』だそうだ。
「・・・こんな犯罪宣言の曲のどこが良いのじゃ?」
「犯罪宣言・・・。まあ、そうだよな。この人たちが歌うから、女子が歌詞にうっとりするわけで。」
あながち間違ってはいないと納得する。
「まあ、曲は好きなの見つけなよ。とにかく、話は付けておくから。さて、風呂でも入るかな。」
立ち上がり、食べ終わった食器を片づける正樹。カチャカチャと食器を洗い、風呂の用意をする。食事を終えた麻姫は、再びソファに寝ころがり、チャンネルを適当に替え、くつろぎだす。
「先、風呂入るよ。」
「あーい。」
適当に返事をする麻姫。正樹が風呂場に向かったのを知ると、ゆっくりと起き上がる。
「行ったか・・・。」
ゆっくりと正樹の部屋へと向かう麻姫。そして、PCの電源を点ける。
「正樹は風呂に入ると長いからな。30分は出てこぬ。・・・む?パスワードが変更されておる。」
いつものパスワードで解除できない。だが、麻姫は焦らない。
「ふふふ・・。この程度で焦る妾ではない。妖怪の妖術を侮るな。残留思念に集中すれば、読み取ることなど造作もないわ。たとえ鎧を纏おうとも、心の弱さは守れなグホオオオッッ!!」
「てめえ、何してやがんだ!!」
正樹の手刀が麻姫の腹部を捉え、あまりの衝撃に思わず悶絶する。椅子から転げ落ち、痛がる彼女を無視し、正樹は言葉を続ける。
「やっぱりいじってやがったな。答えろ。余罪を吐け!!」
「い、いや、これはその・・・。」
言い訳を考えるが、それができる状況じゃないと察する麻姫。目が泳いでいたが、観念し、白状する。
「なるほど・・きっかけは金猿を調べた時か。その時にこいつに興味が出たと。」
パソコンをポンとたたき、ひざまずく麻姫に目を向ける。
「やれやれ・・。いいか?こいつには人の心が詰まってるの。つまり、俺の心の中、そのものだ。」
「う・・うむ。何となくじゃが。」
「それを勝手に覗かれると、誰だって怒るだろ?マキだって言ってただろ?『妖術を使う時にプライバシーが・・』とか。」
「す、すまぬ・・。じゃが・・」
「じゃが?」
「その、エロゲの続きが気になって・・・。」
「・・・どれをやった?」
「その、画面の絵。右から4番目の下から3番目。そう、それ。」
「ああ、これか。」
タイトルは『永遠のマルグリット』。正樹もお気に入りの作品で、琴線に触れた作品である。
「まあ、これは確かにいい作品だけど・・・。」
「その作品が終わる間だけでもやらせてはくれぬか?続きが気になってのう・・・。」
「・・・・。」
少しの間、沈黙する正樹。そして・・。
「ふーっ・・。分かったよ。別に使うなって言ってるわけじゃないし。」
「?」
「覗くなって言ってんの。新しくアカウント作るから、俺のは覗かないでくれ。」
「???」
「なんていうかな・・。とりあえずマキの部屋をこの中に用意するから、その中だけで行動してくれって事。要は、俺の部屋を覗かずにパソコンを使えって言ってるの。」
「と言う事は、使っても良いのか?」
「制限はあるけどね。」
「ホントか?」
「ホント。」
顔をほころばしながら正樹に抱きつく。思わぬ行動に正樹が動揺する。
「ありがとう、正樹。愛してる!!」
「・・・なんか、胡散臭い言葉だな。」
嘘くささを感じながら照れる。
次の日、学校。
「なるほど。だから昨日、雨音ちゃんが歌ってたんですか。」
鳴女の話では、お風呂場で嬉しそうに歌っていたらしい。ただ、歌をあまり知らないせいか、どの曲も中途半端に終わるらしい。
「興味があるのは姫様もですか。姫様の事ですから、『別の機会に・・』とはいかないでしょうね。」
「はは・・。雨音ちゃんも心待ちにしていますし、回避はできないでしょうね。」
「ふーっ。仕方ないですね。知り合いとして紹介しましょうか。」
その頃、正樹の家。
「それで、どんな歌を歌えばいいの?」
「ふむ・・そうじゃのう・・。」
腕を組み、悩む麻姫。大見得を切ったものの、自分も人間界の歌は良く知らない。
「うーむ。やはり自分の好きな歌を歌うのが一番じゃろう。カラオケとは歌う場らしいからな。」
「じゃあ、まずは歌を知らないとダメだよね?」
雨音の質問に頷く麻姫。『その通り』と、頷きながら正樹の部屋へと案内する。
「よいか?この箱にはいろんな情報が詰まっておる。」
「へえ・・。」
「曲を知るためじゃ。正樹も許してくれるであろう。」
堂々と昨日の約束を破り、正樹のアカウントでログインする。そして、音楽の収められているフォルダを開ける。
「マキお姉ちゃん、凄い。この時代の道具をもう使いこなしているんだ。」
「む?まあのう。やはり何事においても興味を持つのは大事じゃからな。これくらいの道具、朝飯前じゃ。」
雨音に褒められて気分を良くする麻姫。
「ふーむ。とりあえず一つずつ聞いてみるか。良い物があればそれを練習すればよかろう。くれぐれも内緒でな。本番でみんなに披露するのじゃ、その前に知られては意味がないのでな。」
「うん!!」
・・・そして、日曜日。
「へえ。雨音ちゃんって言うんだ。かわいいね。」
「そうです。下宿先のお孫さんで、カラオケに行きたいって。」
中西と名張に雨音を紹介する鳴女。麻姫は再び正樹のいとこと説明した。
「綺麗な髪してるね。金髪をこんな間近で見たのは初めてかも・・。雨音ちゃんってハーフ?」
雨音の髪に触れ、見とれる名張。腰の位置まで伸びた綺麗な金髪にシルクのような肌触り。うっとりとしながら手で髪をほぐす。
「『はーふ』って何?」
「『両親が日本人か』って事。」
「日本人だよ。」
中西の質問に答える雨音。意外な答えに内心で驚く。
「でも、地毛だよね・・・。」
「あ、あの・・それ以上は聞かないであげてください。」
焦りながら中西に耳打ちする鳴女。
「ちょっと訳ありでして・・。その・・。」
「あ!そういう事?」
(そうか。『今』の両親が日本人で『前』の両親が外国人って事か・・。あんまりこの事については踏み込まない方がよさそうね。)
自分の失言に気付く中西。鳴女の言葉を聞き、導き出した言葉で納得する。
「雨音ちゃん、行きましょうか?カラオケ、楽しみにしていたんでしょ?」
「うん。」
「そういえば、柿野君は?」
さっきから来る気配のないカッキーを気にする名張。現時刻は集合時間から10分過ぎていた。
「あ、あいつ『遅れるから先に入ってて』だって。」
「ええ!!何よそれ。時間くらい守りなさいよ。」
「まあまあ、中西さん。来るとは言っていますから先に行きましょう。」
遅刻の常習であるカッキーを置いてカラオケ店へと向かう。受付を終え、各自部屋に荷物を置いた後、ドリンクバーへと向かう。
「ここって飲み放題なんでしょ?凄い!!」
初めてのドリンクバーに興奮する雨音。
「だからと言って、飲み過ぎはだめですよ。婆様にも言われているでしょ?」
「はーい。」
嬉しそうにオレンジジュースをグラスに注ぐ雨音。
「はは・・。」
(ジュース飲み放題は魅力的だろうな。昔は無かったシステムだろうし。)
無邪気にはしゃぐ雨音から視線を外し、ふと隣を見る。
「こっちもか・・・。」
目を輝かせ、どれを飲もうか悩む麻姫。
「のう正樹、これはどれを飲んでもお金はかからぬのか?」
「定額だからね。お金は変わらないよ。」
「信じられぬのう。ならば飲んだ方が得ではないか。」
「飲みすぎると歌うのがつらくなるぞ。」
再び部屋へと戻る。
「鳴き・・じゃなくて、雛子。この機械で打ち込めば良いのじゃな?」
普段とは違い、『女子高生の高瀬 雛子』として鳴女と接する。
「そうです。文字を打ち込めば探してくれますから。そのあとに、ここを押して・・・。」
「マキちゃんはカラオケにあまり来ないんですか?」
「む?実は初めてでのう。歌を人前で披露した経験も無いのう。」
名張と話しながらカラオケが初めてであることを説明する。そして、名張も『自分もあまり来ないから・・』と経験が少ないことを話す。ジュースを飲みながら、今のところ麻姫と雨音の二人が馴染んでいることにホッとする正樹。その時、正樹の携帯が鳴る。
「あ、カッキーからだ。ちょっとごめん。」
部屋を出る正樹。そして、静かなドリンクバーの方へと向かう。
「む・・。まあ良いか。どれ・・。」
曲を選び終え、番号を飛ばす麻姫。そして、画面に曲目が表示され、室内にギター音が鳴り響く。そして、マイクを手に取り立ち上がる麻姫。
「一曲目は妾じゃ。」
「おう・・そうそう。161号室。早く来いよ。」
電話を切り、カッキーとの会話を終える。『近くまで来ているので、もうすぐ着く』との報告だった。
『ガチャッ』
扉を開け、再び席に戻る正樹。ステージ上でノリの良い音楽と共に気持ちよさそうに歌う麻姫。
「あ、おかえり。誰からの電話?」
隣の名張が声を掛ける。
「カッキーから。もうすぐ来るってさ。」
「そうなんだ。ねえ、この曲知ってる?いい曲だけどアーティストも曲も知らなくてさ。」
「曲?」
そう言われ、麻姫が歌う曲に耳を傾ける。聞いたことのある歌だった。なんだっけ?確かこれは・・・。思い出した瞬間、正樹の顔から血の気が引く。
「ふう・・・。」
歌い終わり、マイクの電源を切る麻姫。そして、みんなから拍手が起こる。
『パチパチパチパチ・・・。』
「ありがとう。ありがとう。」
満足そうに拍手に応え、自分の席に戻ろうとする。
「マキ・・ちょっと。」
「ん?どうした?」
正樹に呼ばれ、部屋の外へと連れ出される。
「てめえ、これエロゲソングじゃねえか!!!なに歌ってやがんだ!!」
「む・・。」
「ていうか、俺のアカウントで開いただろ。使うなって言ったよな!?」
「う・・仕方ないであろう。妾のでは情報が少ない。」
「だからと言ってだな・・・。」
「雨音も気に入っておったぞ。」
「雨音ちゃん?」
その時、再び聞き覚えのある前奏が流れる。『まさか・・・』と思い扉越しに室内を見る。
「あ・・・。」
ステージ上で歌う雨音の姿があった・・。
「じゃろ?雨音も披露するのを楽しみにしておったぞ。良い曲ではないか。何をそんなに気にしておるのじゃ?」
そういうと正樹を押しのけ、室内へと戻る麻姫。正樹もその後に続く。
「おかえり。どうしたの?」
「ん?別に。ちょっと世間話じゃ。」
名張の言葉を適当に流す麻姫。
「あれ?池村君、どうしたの?顔色悪くない?」
「いや、べつに・・・。」
「そう。ねえ、この曲知ってる?雨音ちゃんの歌。歌詞がちょっと色っぽいよね。」
「・・そうだね。」
雨音の歌が終わる。麻姫の真似をし、手を振りながら拍手に応える。緊張から解き放たれたのか嬉しそうに正樹の隣に座る。
「あー楽しかった。」
「気持ちよかった?」
「うん!!」
「そう・・・。」
満足そうな顔を見て複雑な気持ちになる正樹。
「ねえ、正樹お兄ちゃん。一緒に歌おうか?」
「え?」
「あの曲、お兄ちゃんも知ってるんでしょ?だったら一緒に歌おう?」
曲目の書いてある分厚い本を膝の上に乗せ、ペラペラとめくる雨音。真剣に次の曲を探す。
『雨音も披露するのを楽しみにしておったぞ』
麻姫の言ったセリフが思い出される。
(楽しみにしてた・・か。)
「よし、いいよ。何歌う?」
「うーんと・・ちょっと待ってね。」
・・・数分後。
「わりいわりい。」
遅刻のカッキーが現れる。中西と鳴女に『遅い』と突っ込まれ、言い訳をしながらソファに座る。
「ん?これ、エロゲソングじゃねえか。熱っちい歌、歌ってんな。」
ステージ上で雨音と共に歌う正樹を見て、驚くカッキー。
「え?これ、エロゲの歌なの?」
カッキーの一言に中西が驚く。
「そうだよ。いい歌だろ?俺も好きだぜ。」
「へえ・・知らなかった。」
「じゃあ、さっきまで歌ってたやつもそうかな?」
名張が履歴をカッキーに見せる。
「どれ・・ああ、これもそうだな。あと、これも。」
「へえ・・ていうか、カラオケに結構あるんだね。」
「まあな。俺も歌いたくなってきたな。」
そう言いながら歌う曲を選び出す。何があったか知らないが、これだけ大人数でここまでエロゲソングが混じったカラオケは珍しい。
(普段は俺としかカラオケしない正樹がねえ・・。)
「どしたの?嬉しそうに。」
「ん?べつに。」
中西の言葉を聞き、表情を戻すカッキー。
カラオケが終わり、家でくつろぐ正樹と麻姫。
「・・はあ。疲れた。」
「楽しかったのう。一曲歌いだすと止まらぬ。」
「まあ、そのうちにな。」
「雨音も満足そうじゃったぞ。」
「はは・・。」
歌い疲れたのか、その後に行ったファミレスで雨音は眠ってしまった。その後、鳴女におんぶされ、帰路へと就いた。
「それより風呂。先に入るぞ。」
「ん。」
気のない返事をする麻姫。正樹が風呂に入ったのを確認し、ゆっくりと動き出す。正樹の部屋に忍び込み、パソコンを起動する。
「ふふふ・・・油断しおったな。雨音の歌った歌で気に入った曲があったからのう。いまのうちに・・・。む、パスワードが変更されておる。愚か者め、この程度で妾が引くとでも思ったのか?たとえ鎧を纏おうとも、心の弱さは守れなグホオオオッッ!!」
「だから覗くなって言ってんだろぉ!!」




