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美奈子を通しての会話(前編)

「それで、この人はいま何て叫んだんですか?」


「『お前こそ、何者だ』そういうふうに言ったわ」


「それは、確かなんですか?」


「うん、何がどうと説明はできないけれど、感覚として頭の中で叫び声が言葉として響くの。滋さんたちには響かなかった?」


「いや、僕には…」


 桐生と弥生も首を横に振る。


「やっぱり、そういうのって幽霊同士だからできることなんじゃない?」


「そうだわ! 滋さん、私の肩に触れてみて。その状態のまま、私があの人と会話してみるから、もしかしたら滋さんも私を通してあの人の言っていることがわかるかも」


 信じられない滋だが、一度結界を解いて、言うとおりに美奈子の肩に触れてみる。


「あなたは… あなたは何者なんですか?」


 美奈子がトンネルの化け物に訊ねると、しかしそいつは質問に答える前に何事か滋に向って吠える。


「とりあえず、その手を離せ!」


 美奈子の体を通じて、滋の脳にも直接響いて理解できる。理解できたことに感動して、


「ほ… 本当だ、本当に聞こえた。でも、何だか美奈子さんの声に似ていたような」


「滋さん、それはきっと私を媒介して聞いてるからだと思うわ。私の声も混じっているんだと思う。私には地底から聞こえるような、とても低い声に聞こえるんだから」


「へぇ、そういうものなんですね。美奈子さん、やっぱり幽霊の事、詳しいんですね」


「いや、私も感覚的にそう思うだけで、証拠とか、根拠とかないんだけど…」


「おっと、お前たちだけで盛り上がっているんじゃないよ。あいつの言っていることがわかるんだって? なら、俺にも聞かせてくれよ」


 桐生は、勘違いして滋の肩を掴む。が、これがまた間違ってもおらず、


「だから、さっさとその手を離せって言っているんだよ!」


 美奈子、滋を経由して桐生も聞き取れる。


「おお、聞こえた! 聞こえた! 生意気なことを言ってやがるぞ! でも、何だ、声がオカマみたいだったぞ」


「それは僕を通して僕の声が混じっているだけだよ。それをオカマって… ホント、失礼だよ」


 弥生も真似して遊び心大半で滋の肩に触れる。美奈子を先頭に滋、その背後に桐生と弥生という陣形は無駄に美しい。一見してそこから連携した新しい技が飛び出しそうだ。トンネルの化け物の目にも少なからず徒事に映らない。


「貴様ら、また、何かをしようってつもりか! これ以上何をする! チクショウ! この刀を抜きやがれ!」


 当の本人は怒っているが、UWの面々はこれにも声が聞こえたとはしゃぐ。


「ホント、オカマっぽい。滋君、自分のキャラ作り、ちょっと考えたほうがいいかもよ。このままだと誤解されるわよ」


「そんな、弥生さんまで… でも、そういうのは周りが勝手に作るイメージなんだから、みんながそう思わなければいいわけで…」


「いや、滋、それは違う。イメージなんてものはその本人の問題だ」


 と、ああだ、こうだ。トンネルの化け物にすればシカトされてムカっ腹。



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