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美奈子を縛るものとは?(後編)

「いや、それを調べる上でも、とりあえず足を運ばないと…」


「トンネルだっけ? そこに向かうことに反対はしていないんだ。花子さんの件より、それこそ俺たちの仕事っぽいからね。でも、気は抜けないぜ。俺の戦闘者としての勘だけど、戦いの予感がするね」


「それはどういう… まさか、美奈子さんが前の花子さんのように暴走して敵になるって、そう言いたいの?」


 不愉快を露わに滋が聞くも、桐生は目尻を柔和にして、


「まあ、それはあくまで可能性だけどね。断っておきたいのは、もしそうなったとき、俺は彼女を攻撃していいのかってことなんだよ。それで結果的に力技で成仏させても、大丈夫なのかとね」


「そんな、乱暴な。もっと平和的な解決策を考えないと、駄目に決まっているじゃない」


 珍しく声を張って反対するが、相手は動じない。


「いや、お前じゃなくてね。美奈子さん本人に聞いているんだよ。あくまで仮説だけど、もしそうなったとき、攻撃をされてもOKか、それとも、やっぱり美奈子さんだけ行くのやめときます?」


 桐生は、通して緊張感のない顔をする。滋は桐生が何を考えているのかわからなくなる。


「でも、美奈子さんが来ないんじゃ、調べてもあまり意味がないんじゃないの?」


「まあ、そうなんだけどね」


「私なら別にいいですよ。もし本当に私が化け物のようになるんだったら、そのときはやっつけてもらってもOKよ。自分はそういう運命だったんだなって、多分、そう受け入れられると思うから。私が幽霊なんかを二十年もやっている理由がわかるっていうなら、むしろそれは興味のあることだし、それに、ねぇ」


 真剣な面持ちで答えていたと思うと、美奈子も急に陽気な顔をして何か期待を込めて滋を見つめる。そうして目と目が合って、しばらくお互いの胸臆を探り合うと、「いやん」といつものように恥ずかしがる。


 一行、車に乗り込んでN市を出て、真っ直ぐ例のトンネルへと向かう道中、滋は自分で調べた美奈子とトンネルの事故について話を始める。高橋美奈子という名前を挙げて、それが美奈子本人であるか確認を取ろうとする。が、やはり彼女は自分の苗字を覚えていない。その事故についても記憶がはっきりしておらず、それでいて根が明るいのか軽いのか、そんなこともあったような、なかったようなと、とりあえずは思い出そうとしながら、それが叶わないと、凝ることなくあっけらかんとする。


「でも話を総合すると、それ、美奈子さんに間違いないわね」


「私が死んだ理由と、私の『縛り』って、何か関係があるのかしら?」


 もし関係かあるとするなら…


「やっぱり、お父さん?」


 と滋は口走るが、配慮もなければ、UWの二人から感情に乏しい視線を浴びる。美奈子本人は動揺もない。


「滋さんの言うとおりだとしたら、もしかしたら私のお父さんに会えるかもしれないってことよね?」


「え? え? あ、はい、そうなるかもしれませんね。でも、あくまで仮説ですから、また別の要因があるかもしれないので、そう一概には…」


「別の要因って、何よ?」


 弥生は普段と変わらぬ態度で訊ねるが、このときの滋にはどこか刺々しい。


 滋は思う。女子二人に責められているようだ、と。そして同じ男子の桐生にフォローを期待するが… この男はとりあえず知らんぷり。



続きます

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