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頷けば恋の告白(後編)

 里山は直球勝負にでる。頷けば恋の告白、それを躊躇えば自分への嘘。今の花子に迷いはない。選んだものも無論告白の方で… ただ、やはり恥ずかしいものは恥ずかしく、ちょっと遠慮がちに、相手が気付くか気付かない程の、小さな頷きを一つする。それを見逃さなかった里山の顔が俄かに明るくなる。いや、浮かれて逆上せて真っ赤になる。こうなると里山も恥ずかしさに花子を真っ直ぐ見られなくなる。外した視線の先に、はて、人の姿が四つ見える。花子の恋の成就に興奮して身を乗り出してしまっていた滋たちである。彼らもすぐにまた隠れるが、もう遅い。


「うん? そこに誰かいるような、何か見えたような…」


 誰かとわかっていれば、花子は気まずそうに、


「えっと、何かしら… ね? ハハハ」


「ちょっと、確かめてくる」


 逆上せ上がっているから里山も躊躇も警戒もない。茂みに近づいて滋たちを見つけても、取り乱すこともしない。むしろ見つけられた四人の方こそぎこちない。


「いやいや、どうも、どうも」


 諦めて申し訳なさそうに出てくる。弥生と美奈子がそそくさと花子のほうへと近づいて、耳の側で何やら言葉を掛ける。彼女も照れながら何度も頷く。


「神山さん、この人たち… 知り合い?」


「はい…」


 一人はあちこち裂けた薄黒のジーンズに白のTシャツ、スポーツキャップを被って少し長めのバットケースを担いだ若い男。一人は小さな顔、細い体、青のジーンズと黄色のポロシャツとを併せた茶髪の女。一人はまるで女の子のような顔つきだけど、胸があるわけでもなく、薄いベージュ色の綿のパンツに白いシャツを着た一見して男か女かわからない者。最後の一人は白いシャツに緑のスカートを穿いた、まだ小学生くらいの女子。花子の友人としては何の繋がりかとすぐに閃けない連中で、里山はしばし間の抜けた顔をして、四人を忙しなく順々に何往復も目にする。


「里山さん、とりあえず落ち着きなさって。私たちは花子さんの、え~と、何だろう、後見人? いえ、応援人ですから。決して怪しいものではないですよ」


 誰よりも早く里山を気遣って説明をするのは一番の年長者の美奈子である。が、見た目が小学生だから余計に里山を困惑させる。ましてよく見ると花子のように薄っすら透けたようにも見える。怪しくないと言われれば却って怪しくも見える。とはいえ、怯えるでもない里山は、


「もしかして、お寺の方ですか? もしくは霊媒師といった、そういう方面の人たちですか?」


 滋は思う。恋に高揚した人の感覚は、色んな意味で広がっているものだと。



続きます

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