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調べ物をしている所に桐生(後編)

 桐生もきょとんとする。滋は自分の危疑を説明すると、桐生は大口を開けて笑い出す。


「これはあくまで保険だよ。それもほとんど気持ちの為だね。抑止力にもなるし。武器が必ずしも暴力だけに繋がるとは限らないんだよ」


「でも、その攻撃の対象はあの二人の幽霊以外にはいないわけでしょ」


「それは考えすぎだよ。そういう状況にもうならないってのは、俺以上にお前のほうがわかっているんじゃないのか? それともまだあの二人のことならあり得ると? まあ、幽霊だから仕方ないといえばそうだけど、そういうことなら信じていないという点で、お前もお前が思い描いている俺と、あまり変わらなくなるぜ。もっとも、俺としてはただ、何があっても戦えるというだけで、これからは交渉にも積極的になれるけどね。それは聞こえようによっては横暴かもしれないけど、力のバランスが取れるので、お前のやり方とはまた違った形で幽霊とも上手く付き合いができると、俺は思う」


「上手く丸め込まれている気もするけど、それで、それはどういうものなの? 油でも塗るの?」


 と、これまた聞いてくれて感謝とばかりに桐生はニヤニヤしながら首を横に振る。


「油とはまた違うんだな。ちょっと裏山のほうに行かないか? どんなものか実際に見せてやるよ」


 大学の裏手にある山の麓に連れてこられて、昼だというのにひと気の少ないその場で風呂敷包みを広げられると、中に大きな水筒と木製の洗面桶が一つずつ、他に二十センチほどの細い竹筒が数本と巾着袋、そして風水術で用いられる八卦鏡が一つ。


「それらは… どこで?」


「だから、基地だよ。うちらの基地でアイテム作っているじいさんがいるの知っているだろ? その人に俺の刀で幽霊も攻撃できないかと相談したら、それが可能な古い道具があるって教えてくれてね。教えてくれたのはいいけど、どこに片付けたか覚えていないときたもんだから、この間はそれを二人でずっと探していたんだよ。やっと見つけたのがこれ」


「それで… どう使うの?」


「とりあえず準備が面倒でね。材料も必要だし。蛇の肝に蛙の心臓、鳥の血に蝙蝠の糞、そんなものを塩や酒、ニンニクなどを加えて長時間煮込んで、その煮汁を今度は夜のうちに、この鏡を使って月光を集めて、その光に晒すんだ。およそ一晩中。そして最後に昼間のうちに今度はその煮汁を鏡で集めた太陽光に晒してやるんだ。太陽光は十分ほど晒せばいいらしいんだけど、それでできた『聖水』を俺の得物にすぅと塗ればいいというわけ。難点としてちょっと臭うけどね」


 水筒の中が所謂聖水で、それを桶に移すと、酸ともカビとも硫黄とも知れない強烈な異臭が鼻を突く。


「ちょっとどころの話じゃないね。鼻が曲がりそうだよ」


「まあね、俺は大分慣れたけど」


「それ、本当に利くの? もう別の悪霊か何かで試したの?」


「いや、まだだよ。まだに決まっているじゃない」


 滋は思う。こんなホラー映画で見たような幽霊や妖怪退治の技法の寄せ集めなど、胡散臭すぎて桐生誠司の案外テキトーな性格ともども信用ならない、と。



続きます

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