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対幽霊に答えはない?(前編)

 残照も消えて宵に入っても、弥生も滋も、そして美奈子も花子も、幽霊の存在の意味や定義を論弁するが、宇宙の広さを測るのと等しく答えが見つからない。そのうち疲れてしばしの休憩、四人の会話も次第に世間話や恋の話へと移って和気藹々となる。と、そこに弥生の携帯に桐生から連絡が入る。彼の用事も済んで、これから向かうというが、切る前に経緯、現状を報告。


「私たちも正直どうすれば終わりなのかわからないから困っていて、あんたはどう思う?」


「どう思うって言われても、複雑だね。お前らの話だと今回の幽霊たちは人に危害を加える悪霊ではないみたいだし、やっつけて終わりというわけにはいかないな。『あちら側』の住人なら帰してやればいいけど、いや、そうなると幽霊もあの世に帰してやることが筋なのかな… でもあの世なんて存在するかどうか誰にもわからないんだし、もしなかったら単にやっつけたのと変わらないからな… いやぁ、わかんねぇな」


「頼りないわね。一応は隊長なんだからそういうこと把握しておきなさいよ」


「しょうがないだろ。俺が過去に幽霊と関わったときはどれも悪霊退散で消滅させてしまっていたんだから。しかも、俺、見ていただけだし」


「それって可哀想な話よね。相手の幽霊のことは考えてやらないってことでしょ。何でも力技で解決しようなんて、ちょっと野蛮よ。幽霊に対するUWの方針って、そういうものなの?」


「いや、特にこれといった決まりはないはずだぜ。大きな仕事でもない限り、基本的に対処は現場に任せられているしね。幽霊なんて、まさに個人的な問題だろ。そのエゴで人に迷惑をかけるようなら力技っていう、ただそれだけの話だと思うよ」


「迷惑をかけないなら? いわゆる悪霊じゃないなら?」


「え~と、だから、わからないって…」


「ほんと使えないわね」


「ええい、そんな話は俺にするな。幽霊のことなんて俺がわかるかっていうんだよ。もっと別の詳しい奴にでも聞けばいいだろ」


「詳しい人って誰よ?」


「それくらい自分で考えてくれよ。とにかく俺も今からそっちに向かうから、とりあえず自分たちで考えて行動して、結果を後で報告してくれ。それじゃあな」


 これで通話も切れる。UWに五年いる弥生でも対幽霊の隊員に知り合いはいない。UW以外では一人だけ思い当たる節もあるが、その人物だとどうにも躊躇してしまう。何よりその者の連絡先を知らない。


「あんたの知り合いで誰かいる?」


 桐生とのやり取りを話して滋にも一応助言を請うが、彼は弥生以上にこの業界の知人が少ない。


「あの、ヴァイスさんでしたっけ、あの人なら幽霊についても詳しいと思うんですけど… どうですか?」


「あんた、あの人の電話番号を知っているの?」


「いえ、知りません。弥生さんは知らないんですか」


 一呼吸間があって、


「…知らないわよ」


「でも、誠司は連絡を取り合っているみたいですけど」


「うん、あの人の連絡先を知っているの、あいつだけだから」


「なら、誠司に教えてもらうっていうのはどうですか?」


 弥生はここでも返事が遅れてそのうえ渋る。桐生を媒介にしても連絡を取るとなると胸の裏側がそわそわとしてしまう。


「あんた、誠司から番号を聞いて、その人に電話してみてよ」


「え? 僕がですか? まあ、いいですけど」



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