その気がないのについ刺激(後編)
「花子さん、うちらの仲間で一人心当たりがありますよ! うちらと同い年だから花子さんからしてみれば年下になりますけど、一応うちらの隊長をしている奴だから、それなりに責任感が… あるかな? いや、ないかもしれないけど、少しは頼りになると思いますよ! 外見も、滋君と違って男くさい顔立ちしてますし、性格だって、いつも皮肉も言いますが男子って感じですよ! そいつを紹介しますよ!」
すると花子も膨らませた禍々しい邪気を少しは引っ込める。
「その男… 格好いい?」
桐生誠司の容姿の具合を聞いてくる。純粋な恋愛をしてきたと思われる彼女でも、意外と面食いのようで… 二人は笑えるものなら笑いたいが、ひとまず無表情を作って、これ淡々と、
「あいつって、格好いい?」
「いやぁ、そういうことは男の僕が考えるようなことじゃないから… 整った顔はしていると思うけど… いや、やっぱり、女性の意見として、弥生さんが感じてることを言ったほうが…」
「女の私の、それも個人的な意見でよければ言わせてもらうけど… あいつが格好いい…? う~ん、う~ん、う~ん… そう?」
少なくとも弥生の好みではない。
「う~ん、う~ん、う~ん…」
滋も唸るばかり。二人がまごまごとしていると、花子の邪気も再び盛り返す。
「と… とりあえず、あいつに電話を掛けてみるね」
すぐに捉まって、この場での詳細を話して、早く来るよう、彼女には珍しく桐生に遜って頼む。だが、返ってくる言葉は、
「いやだ」
「なんでよ! 合流するって話でしょ!」
「そのつもりだけど、そういうことなら今日はやっぱりやめておこうかな」
「な… あんた、そういうのを職務怠慢っていうのよ。話にならない! さっさと来なさいよ!」
実は、まだまだ桐生のほうで用事が済んでいない。真っ当な理由があるから強みは彼にあって、何より面倒を嫌って、さっさと電話を切ってしまう。
「あらまあ」
「あいつっ! ほんっと、役立たず!」
いつもの如き桐生隊の光景。ただ、このときばかりは花子の存在があるから、二人も悠長にしていられない。見れば、コケにされて怒り頂点!
滋は思う。これぞ悪霊だと。
続きます




