表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

妖精の湖シリーズ

妖精の冬

作者: 葵生りん

 ぴし ぴし

 ぴしぴしぴし


 繊細で可憐な音を立てて、氷が張っていく。


 私は仄暗ほのぐらい湖の底から、蜘蛛の巣のように張り巡らされていく白い網を見つめていた。


 寒い。

 とても寒くて、自分の体をぎゅっと抱き寄せる。

 

 魚達がするりと肌を撫でるように泳いでいく。


 昔は、氷が張る感触をこんなに寒いと感じたことはなかった。


 氷が張っても湖底で魚達と一緒に遊んでいたら楽しくて、そんなこと感じたことなかった。


 だけど今はひらひらと舞うように泳ぐ魚達に遊ぼうと誘われても、そんな気分になれない。



 ただ、寒い。



 それは妖精の生を捨てたせい?


 もう妖精でもなければ人でもない。

 世界中にひとりぼっちの異質な存在になった。


 だけど、それでもよかった。


 あの人が約束してくれたから。


 必ずまた会いにくるから待っていてと、言ったから。








 だから待っている。


 春がきて、氷が溶けたら、あの人が会いにきてくれるはず。


 そう信じて、待っている。



 次の春こそは きっと きっと……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全体的に淋しげな部分と、春になればあの人が来てくれるという希望の部分での二面性や「何があったのか」「どんな事があって現状にいたるのか」など、想像力を刺激される作品だと思います。 個人的には…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ